筋力:Cとはどれくらいか?
筋力:Iで、障害がある人や、小さな子供並とされる。
筋力:Hで女か、非力か。
筋力:Gで成人男性並とする。
ならば、筋力:Fは?
筋力:Fとなると、力自慢の人間から、人間よりも肉体的に優れた獣人の平均ってところだ。
筋力:Eで、人間のトップ層。もしくは相当に鍛え込んだ獣人並。
では、更に、筋力:Dは?
筋力:Dは、虎や熊、獅子などの、特別に強い獣人が、幼い頃から研鑽を積んで、その全盛期に得られるもの。
では……、では、今俺が簡単に到達した、筋力:Cとは?
「おらよっ!」
俺は、森の中の木に、徐ろに裏拳を叩きつける。
すると、その木は、ばりばりと音を立てて、倒れた。
そう、筋力:Cとは、およそ生物が到達し得ない神域。
神話の英雄のように、猛獣を素手で叩き殺すことを可能とする豪腕である。
「………………な、は?え?ええ?」
困惑するトライを余所に、木がへし折れる音を聞いて、オークが集まってくる。
『プギッ、ギッ!』『ブギャー!ギャッ!!!』『ギャギャッ!』
「な、何やってんだよ!バレちゃったじゃないか!」
「まあ見とけ」
俺は、鋼のロングソードを構え、前に出る。
『ピギッ?ゲハっ!ゲハハハ!!!』
オークは醜い顔を更に醜く歪めて笑う。
膂力で遥かに劣る人間風情が、剣を構えて前に立つなどと。
オークを倒すには、隠れて毒を盛ったり、遠距離から長弓で射殺したりするのが普通だ。
熊並の膂力に、分厚い脂肪と皮、丈夫な骨格を持つオークに、真正面から挑むのは自殺行為。
もしも真正面から戦うのであれば、一体につき最低四人ほどで囲んで叩き潰すしかない。
それがどうだ、ここには、オークが七体もいる。
七体のオークに三人で挑んでいる。
自殺行為以外の何物でもない。
「ま、まずいよ、逃げよう!」
トライは慌ててそう言った。
だが、俺は。
「まあ見とけって」
と、鋼のロングソードを大上段に構えた。
そして。
「おい、防御してみろ」
『プゲッ!ゲハハハ!』
「ふむ、何を言っているのかよく分からんな。じゃあ、死ねよ」
思い切り、鋼のロングソードを振り下ろした。
『ゲ』
すると、俺の前に来ていたオークは、断末魔の叫びも上げられずに、縦に真っ二つになった。
そう、縦にだ。
首を斬り落とすならまだしも、漫画のように縦に真っ二つになることは普通はあり得ない。
だが俺は、先程に普通じゃない筋力を手に入れたからな。
「………………はえ?」
トライが唖然としている。
『『『『ギ………………?』』』』
オーク達も、目の前の光景を信じられないようだ。
その隙を見逃す俺ではない。
「レクノア」
「『ファイブスペル』『マジックミサイル』」
蒼白い魔法の大槍が、空を駆ける。
その魔法の大槍は、どれもが、狼狽えるオークの土手っ腹を貫いて、人の頭ほどの風穴をぶち抜いた。
しかも、一発ではなく、同時に五発。
これが、魔力:Cの力だ。
『ピ、ピギッ、ピギーーーッ!!!』
一体、一番遠くにいたオークが逃げる。
「寄越せ」
「えっ、あっ、はい」
俺は、トライの持つ槍をひったくり、逃げるオークの背中に投擲する。
野球選手の投げるボールの数倍はあろうかと言うスピードで投擲された槍は、オークの背中に突き刺さり、肋骨を破壊し、内臓をぶち撒け、貫通してどこかへ飛んで行った。
「ふむ、こんなもんか」
その後は、トライにオークの討伐証である鼻を削ぎ取らせて、傭兵ギルドに提出した。
オークは一体金貨一枚。魔石も金貨一枚。平等に分配した。
「すっごいよ!旦那はすごい!」
「分かった、分かった」
「すごい!レクノア嬢もすごい!」
「うん、ありがと」
帰還してからと言うものの、トライは、延々と俺達を褒め称えていた。
正にその態度は、興奮さめやらぬと言ったところ。俺の腕を胸に抱いて、ぴったりとくっつかり、すごいすごいと褒めてくる。
「トライ、お前はもう俺の徒党の一員だろ?同じ宿に泊まれよ」
「えー?旦那みたいな人が泊まってるような高い宿には泊まれないよ!」
「銀貨一枚だぞ?」
「それってどれくらいだい?」
は?
待て待て、どう言うことだ?
「ほら、これだよ、これを一枚」
銀貨を見せる。
「んー?えーと、私が泊まってるところは、銀貨を何枚か取られてるよ?」
「……レクノア?」
俺はレクノアの方を見る。
「えっと、その」
「正直に言え」
「獣人は大抵、文字も読めないし、計算もほとんどできないから、みんな好き放題にぼったくるみたい……」
はー?
駄目だなこりゃ。
トライの尻を叩き、トライの宿から引き払わせる。
そして、俺達が泊まっている宿に、俺の仲介の元、泊まらせる。
「いいか、お前は騙されてたんだぞ?」
「えー?!そうなのかい?!」
「ああ、今日から俺と同じ部屋に泊まれ。お前一人では駄目だ」
「分かったよ!」
学がないって大変なんだな……。
俺も高校はちゃんと出てるけど、教育って大事だなと痛感したわ。
ssは定期更新しろー。
せめてメインで書いてる奴は週一でいいから更新しろー。