ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

770 / 1724
肉が食いたい。


17話 圧倒的な力

筋力:Cとはどれくらいか?

 

筋力:Iで、障害がある人や、小さな子供並とされる。

 

筋力:Hで女か、非力か。

 

筋力:Gで成人男性並とする。

 

ならば、筋力:Fは?

 

筋力:Fとなると、力自慢の人間から、人間よりも肉体的に優れた獣人の平均ってところだ。

 

筋力:Eで、人間のトップ層。もしくは相当に鍛え込んだ獣人並。

 

では、更に、筋力:Dは?

 

筋力:Dは、虎や熊、獅子などの、特別に強い獣人が、幼い頃から研鑽を積んで、その全盛期に得られるもの。

 

では……、では、今俺が簡単に到達した、筋力:Cとは?

 

「おらよっ!」

 

俺は、森の中の木に、徐ろに裏拳を叩きつける。

 

すると、その木は、ばりばりと音を立てて、倒れた。

 

そう、筋力:Cとは、およそ生物が到達し得ない神域。

 

神話の英雄のように、猛獣を素手で叩き殺すことを可能とする豪腕である。

 

「………………な、は?え?ええ?」

 

困惑するトライを余所に、木がへし折れる音を聞いて、オークが集まってくる。

 

『プギッ、ギッ!』『ブギャー!ギャッ!!!』『ギャギャッ!』

 

「な、何やってんだよ!バレちゃったじゃないか!」

 

「まあ見とけ」

 

俺は、鋼のロングソードを構え、前に出る。

 

『ピギッ?ゲハっ!ゲハハハ!!!』

 

オークは醜い顔を更に醜く歪めて笑う。

 

膂力で遥かに劣る人間風情が、剣を構えて前に立つなどと。

 

オークを倒すには、隠れて毒を盛ったり、遠距離から長弓で射殺したりするのが普通だ。

 

熊並の膂力に、分厚い脂肪と皮、丈夫な骨格を持つオークに、真正面から挑むのは自殺行為。

 

もしも真正面から戦うのであれば、一体につき最低四人ほどで囲んで叩き潰すしかない。

 

それがどうだ、ここには、オークが七体もいる。

 

七体のオークに三人で挑んでいる。

 

自殺行為以外の何物でもない。

 

「ま、まずいよ、逃げよう!」

 

トライは慌ててそう言った。

 

だが、俺は。

 

「まあ見とけって」

 

と、鋼のロングソードを大上段に構えた。

 

そして。

 

「おい、防御してみろ」

 

『プゲッ!ゲハハハ!』

 

「ふむ、何を言っているのかよく分からんな。じゃあ、死ねよ」

 

思い切り、鋼のロングソードを振り下ろした。

 

『ゲ』

 

すると、俺の前に来ていたオークは、断末魔の叫びも上げられずに、縦に真っ二つになった。

 

そう、縦にだ。

 

首を斬り落とすならまだしも、漫画のように縦に真っ二つになることは普通はあり得ない。

 

だが俺は、先程に普通じゃない筋力を手に入れたからな。

 

「………………はえ?」

 

トライが唖然としている。

 

『『『『ギ………………?』』』』

 

オーク達も、目の前の光景を信じられないようだ。

 

その隙を見逃す俺ではない。

 

「レクノア」

 

「『ファイブスペル』『マジックミサイル』」

 

蒼白い魔法の大槍が、空を駆ける。

 

その魔法の大槍は、どれもが、狼狽えるオークの土手っ腹を貫いて、人の頭ほどの風穴をぶち抜いた。

 

しかも、一発ではなく、同時に五発。

 

これが、魔力:Cの力だ。

 

『ピ、ピギッ、ピギーーーッ!!!』

 

一体、一番遠くにいたオークが逃げる。

 

「寄越せ」

 

「えっ、あっ、はい」

 

俺は、トライの持つ槍をひったくり、逃げるオークの背中に投擲する。

 

野球選手の投げるボールの数倍はあろうかと言うスピードで投擲された槍は、オークの背中に突き刺さり、肋骨を破壊し、内臓をぶち撒け、貫通してどこかへ飛んで行った。

 

「ふむ、こんなもんか」

 

 

 

その後は、トライにオークの討伐証である鼻を削ぎ取らせて、傭兵ギルドに提出した。

 

オークは一体金貨一枚。魔石も金貨一枚。平等に分配した。

 

「すっごいよ!旦那はすごい!」

 

「分かった、分かった」

 

「すごい!レクノア嬢もすごい!」

 

「うん、ありがと」

 

帰還してからと言うものの、トライは、延々と俺達を褒め称えていた。

 

正にその態度は、興奮さめやらぬと言ったところ。俺の腕を胸に抱いて、ぴったりとくっつかり、すごいすごいと褒めてくる。

 

「トライ、お前はもう俺の徒党の一員だろ?同じ宿に泊まれよ」

 

「えー?旦那みたいな人が泊まってるような高い宿には泊まれないよ!」

 

「銀貨一枚だぞ?」

 

「それってどれくらいだい?」

 

は?

 

待て待て、どう言うことだ?

 

「ほら、これだよ、これを一枚」

 

銀貨を見せる。

 

「んー?えーと、私が泊まってるところは、銀貨を何枚か取られてるよ?」

 

「……レクノア?」

 

俺はレクノアの方を見る。

 

「えっと、その」

 

「正直に言え」

 

「獣人は大抵、文字も読めないし、計算もほとんどできないから、みんな好き放題にぼったくるみたい……」

 

はー?

 

駄目だなこりゃ。

 

トライの尻を叩き、トライの宿から引き払わせる。

 

そして、俺達が泊まっている宿に、俺の仲介の元、泊まらせる。

 

「いいか、お前は騙されてたんだぞ?」

 

「えー?!そうなのかい?!」

 

「ああ、今日から俺と同じ部屋に泊まれ。お前一人では駄目だ」

 

「分かったよ!」

 

学がないって大変なんだな……。

 

俺も高校はちゃんと出てるけど、教育って大事だなと痛感したわ。

 




ssは定期更新しろー。

せめてメインで書いてる奴は週一でいいから更新しろー。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。