ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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今日は寒いな。


13話 中央へ

音速家出俺将、中央へと向かう。

 

あのとき……、騎士達は、ふんわりとした俺の特徴のみを聞いて、俺の家に来ていた。黒髪の目つきの悪い子供と聞いて行動していた訳だ。

 

だが、俺があまりにも自信満々に「人違いです」と言い切ったことから、まんまと騙された。まさか、西の首都『アルカディア』への招待を蹴るような奴はおるまいと、そう思っていたのだろう。本物の、村人Aたる少年、アレックス君であれば、こんな光栄な話は断らないはず……、と思っているはずだ。

 

騎士達は、俺の顔を知らなかった。だから、俺は、アレックスじゃない別の誰かだと思われた。人違いですと言ったしな。

 

そうやって、騎士が村中を探し回っている隙に、俺は速攻で離脱した……、という寸法よ。

 

転生者必須アイテム、魔力駆動式スマホに、マップアプリをぶち込んで、それを見ながら移動しているので、道に迷うことはない。

 

スマホの力を過信したな……!

 

なんてことにならないように気をつけたい。

 

にしても、旅は大変である。

 

スマホによると、一ヶ月はこのまま歩きっぱなしとのこと。

 

虚空錬金で食べ物や飲み物は無限に出せるのだが、住居はどうにもならない。

 

いや、虚空錬金に不可能はないので、小屋なんかも建てられる。

 

だが、寝るときに毎回小屋を出していたら、俺の村から歩いて一日おきの距離に常に小屋がある……、なんてことになる。

 

そしたら普通にもう、怪しさ大爆発だろ。

 

空間魔法は、魔力の消費量が多く、小屋ほどの大きさのものはギリギリ入らない。

 

それに、俺の虚空錬金は切り札だ。絶対に他人には見せられない。

 

何もないところから無限に欲するものを出せるってのは、誰もが欲するスキル。

 

特に、八神将に見つかったら一生飼い殺しだ。

 

同じ理由で、大きな生命創造もやっていない。

 

多分、虚空錬金ならば、『人間』すら創り出すことが可能であると思う。

 

だが、人間一人を創り出してバレない訳がない。

 

あの、二百人も人口がいない小さな村で、いきなり知らない人間が現れたら、隠しようがない。

 

もし、家を買うくらいに余裕ができたら、その時は、『ホムンクルス』を作って、俺の身の回りの世話をさせようと思う。

 

とりあえず、バベルでレベルを百まで上げて、金を稼いで家を買うのが目標だ。

 

 

 

大変な旅と言っても、人とは会わないルートを歩っているので気楽なものだ。

 

体力はステータスの高さから保証されている。

 

少なくとも、村でアイリンと狩人をやっていた時は、体重百キロは超えるであろう獲物を背負ったまま、森から村までの悪路を数キロメートル歩っていたのだから、ただ道を歩くだけで疲れ果ててしまうようなことはない。

 

今は春だ。気温も安定していて、少し肌寒いくらいだが、それが運動をする身体を程よく冷やしてれていい塩梅だ。

 

水分補給のスポドリも傍に、春風を身に受けながら歩く。

 

そろそろ昼だな、飯にしようか。

 

空間魔法で椅子とテーブルを出して、熱々の和牛ステーキとガーリックライス、そしてシーザーサラダを出す。スープはオニオンスープで、デザートはソフトクリームだ。

 

「おほー!和牛!ナイフが簡単に通るー!」

 

そしてパクリ。

 

「とろけるっ……!悪魔的っ……!」

 

そこにガーリックライスをかき込む。

 

「あああああ、うんめえ!やっぱり和牛だなー!焼き加減はレアが最高!」

 

若いから脂物が美味くってしゃーない。

 

前世の転生前は四十代だったから、和牛なんて脂っこくて食えなかったんだが、今は十歳だからな。

 

「んまんま」

 

で、皿は廃棄。

 

どうやって廃棄するかと言うと、空間魔法の『ダストボックス』で。

 

ダストボックスはその名の通り、非生物のみを入れられる空間魔法だが、ダストボックスに入れられたものは消滅する。

 

空間魔法レベル五で使えるようになった。

 

空間魔法は、レベル一でアイテムボックス、三でワープ、五でダストボックスだった。

 

魔法の数が少ないみたいだ。

 

そんなことを考えつつ、牧場のプレミアムアイスを再現したものを舐めている俺。

 

そう言えば……、ひょっとしたら、虚空錬金なら、前世の食べ物よりも更に美味い架空の食品とか造れるんじゃないか?と思った。

 

だが、しばし考えてやめておくことにした。

 

もし、あまりにも美味すぎる食べ物を作って、それを食べたとして、それ以外が受け付けない身体になってしまえば……。

 

そう考えると、怖くておいそれとはできない。

 

あまりの美味さに味覚が破壊されました、とかなったら嫌だしな。

 

程々がちょうどいいんだよ。敵は徹底的に追い詰めるが。

 

「晩飯どーすっかなー?うーん、カレーだ!カレー食いたい!カツカレーだ!」

 

そんなことを言いつつも、俺は中央のバベルのある街、エクスシアを目指す……。

 




今日は生姜焼きを漬けました。

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