ぶっちゃけ、形が違うだけでアルファベットなので、文法とかも変わらんらしいし、バリバリ読み書きはできるのだが、習っていないのに急に読めたらやべーやつなので、隣のアイリンの学習ペースに合わせて俺も文字を読めるようになった、ということにしておく。
そして一ヶ月……。
「世界の中央にあるバベルは、偉大なる女神ヒューラの手によって建てられており、一説によると、バベルの最上階に辿り着いたものには、神になれる権利が与えられるとも言われている……」
俺は、本の内容を読み上げた。
「うむうむ、文字の読み書きはもうばっちりじゃな!」
文字の読み書きをマスターしたアイリンに合わせて、俺も覚えたということにした。
これからは毎日、本を読む日々が続く……。
「おべんきょー、あきたよ!あそびにいこう!」
アイリンがなんか言っているが無視して、俺は長老と話す。
「このバベルってのは?」
「天の彼方まで続く塔が、この世界の中央にあるのじゃよ。そこは、ダンジョンと呼ばれる危険な空間になっており、恐ろしいモンスターやトラップがあるのじゃ」
「その代わりに、何か良いものが落ちているとか?」
危険なところなのに人が集まる理由は一つだよな。
何らかの利益があるってこと。
「ふぉっふぉっふぉっ、流石はアレックスじゃの。ダンジョンでは、ダンジョンでしか手に入らない貴重な道具や、価値のある宝石なんかが手に入るのじゃ」
ふーん、へー、はー、ほー。
予定変更、スローライフはやめだ。
バベルの最上階を目指そう。
新世界の神になる。
いや、俺が神になりたいって訳じゃないが、ロクでもない奴が神になったら俺は困るだろ。
そうでなくても、バベルのある中央へ行こう。
ダンジョンが攻略されない限り、地価も高いし、物流も多いだろう。つまりは都会。
俺は、田舎に引きこもっていると駄目になるタイプだ。都会に出よう。
「バベルか……、行ってみたいな」
「……そうじゃな、アレックスの才能は、この小さな村で収まるものではないのう。お主ならば、塔を目指すのも良いかもしれんぞい」
「わたしもー!」
「ふぉっふぉっふぉっ、もちろん、アイリンも確かに天才じゃて」
「やったー!あれく、おとなになったら、いっしょにばべるにいこーね!」
無視する。
そして半年、長老の家の本を読み尽くした。
それにより、魔法の基礎と錬金術の基礎、そして、世界の風土などを覚えた。
おかげさまで、長老の教えもあり、『生活魔法』を覚えられた。
生活魔法は、水を生むクリエイトウォーター、種火を出すティンダー、物を綺麗にするクリーン、物を乾かすドライ、空間を照らすライト、この5種類だ。
魔法とか科学的に考えたらありえないけれど、存在するもんはするんでまあ、納得した。
長老は、俺とアイリンの才能を伸ばしたいと思ったらしく、中央……、つまり、バベルのある街である『エクスシア』から、魔法の本や錬金術の本を取り寄せてくれることになったらしい。
金はあるのかと聞いたが、実は長老は、かつてはバベルに挑んだ経験のある『冒険者』だったそうだ。
魔法がチョットデキルとのこと。
そのため、貯金が結構あるらしく、快く本を買ってくれた。
本が届くまであと一ヶ月くらい、何をして過ごそうか……?
今は三月、俺の誕生日は九月。本が届くのは四月。
さて、どうやって暇を潰すか……。
そうだな、身体を動かそう。
ゴールデンエイジ、だったか?
六歳までに運動神経が八割決まる……、みたいな話があったはずだ。
錬金術師になったとして、バベルに登るのか登らないのか、それはまだ分からないが、いざという時に身体が動かなくては駄目だ。
身を守るための格闘能力は備えておいた方が良いだろう。
それに、錬金術の基礎を学んで、俺はある理想を思いついた。
錬金術。
錬金紋を刻んだ物質、及び、錬金紋を刻んだ物質に触れている物を分解して再構成、合成する技術である。
ならば。
俺の両手に錬金紋を刻み込んで、触れた物を分解消滅させる『戦う錬金術師』なんてものはどうだ?と思ったのだ。
これは、俺が少年時代、両親をぶち殺してから、施設に入っていた時、その施設の中の子供達に大人気だった漫画雑誌、『週刊マンデー』のとある漫画から着想を得た。
前世では、総合格闘技と八卦掌をやっていたから、その要領で自主トレに励むことにした。
まずは走り込みだ。
今は春、少し肌寒いが、たくさん汗をかいても風邪にはならないだろう。むしろ、身体が冷えて良いかもしれない。
「はあ、はあ、はあ……」
「はあ、はあ、はあ……」
後ろからアイリンがついてくるが、気にしない。
ガキの身体じゃあ、走れて三十分、いや、二十分。
限界ギリギリまで走るが、決して限界は超えない。
限界を超えれば、怪我をするからだ。
充分に休憩して、水を飲む。
本当はスポドリにしたいが、隣にストーカーのアイリンがいるので、虚空錬金は使えない。
仕方がないので、クリエイトウォーターで水を出して飲む。
そうしたら次はシャドーと型。
「シィッ!ハアッ!」
「えーい!やー!」
なんか隣でアイリンがバタバタしてるけど無視。
受け身の練習や投擲の練習なども身体に染み付かせておく。
「あはは!ごろごろー!」
なんかよく分からんけど、アイリンは転がってる。
そのあとは、充分にストレッチして身体をほぐす。
アイリンも真似をする。
うわ、やっぱり、ガキだから身体が柔けーな。
よしよし、一日二時間くらいは運動するか。
四歳からは一日三時間くらい……?
加減がわからんが、六歳までにたくさん運動をしておこう。
大鍋ハヤシライスを消費し終えたら、ガーリックライスと照り焼きチキン行きます!
そして俺は献立味噌なる未知の食材(存在を知らなかった)を求めてアマゾンの奥地へ向かった!!