グレモリー家とフェニックス家の婚姻話から始まるレーティングゲーム。
今は、それが始まる深夜零時の数分前と言ったところか。
場所は、リアス達の通う駒王学園に似せた空間。
その異空間の観客席にいるのは、かの魔王サーゼクス、グレモリー家、フェニックス家の現当主など、たかが若手悪魔のレーティングゲームとは思えないほどの錚々たる顔ぶれだ。
そんな中、サーゼクスは隣に控えるグレイフィアに語りかける。
「グレイフィア」
「はい」
「ライザー君の戦績はいかほどのものかな?」
「記録によると、負けるときもあれば、勝つときもある……、平々凡々なものです。しかし……」
「彼自身が戦う姿は、誰も見たことがない。そうだね?」
「……確かに、レーティングゲームに敗北する時は決まって、戦う前にギブアップしています」
「実際の彼の実力は、誰にも分からない……。この意味がわかるかい?」
「……ライザー様は、それほどまでの強さを?」
「ああ。……この戦いで、見させてもらうよ。彼の力の一端をね」
場面は控え室に移る。
気合い十分、と言った様子のリアス・グレモリーチームは皆一様に緊張した表情を見せつつも、「修行の成果を出しきってやる」という気概にあふれていた。
「やるわよ、みんな……!!」
リアスの宣言に応じて、
「ええ!」
朱乃が力強く頷き、
「はい!」
木場が剣を握り答え、
「サポートは任せてください!」
アーシアが元気よく答え、
「全力を尽くします」
小猫が呟き、
「はいっ!部長の為、あの憎き焼き鳥野郎をとっちめてやりますよ!」
そして、イッセーが自身の胸に手を当て、答える。
リアスは、想いに応えてくれる大切な眷属達を見回す。
……皆、真っ直ぐな良い目をしている。ライザーと言う強大な敵を前にしても、怯えてなんかいない。
これなら、勝てる!
行ける、私達なら勝てる!
そう思うことで、自らを奮い立たせる意味もあるが、ただ、純粋に、確信したのだ。
自分たちなら、あのライザー・フェニックスに勝てると。
戦えると。
それが、間違いとも知らずに……。
一方、問題のライザー・フェニックスチームは、と言うと。
「ヌマブラやるでー。メスゴリラは戦いに出て、どうぞ」
「誰がメスゴリラだッ!!」
キレるカーラマイン。
「お前やぞ」
いつも通り、平常運転のライザー・フェニックスと愉快な仲間達である。
「はぁ、全く……。で?潰して良いのか?」
「何が?」
「だから、レーティングゲームだ!相手を潰して良いのかと聞いている!!」
「悲報、ワイ将、レーティングゲームがよく分からない」
ライザー・フェニックスはアホである。
何度かレーティングゲームを経験しているが、どのレーティングゲームも、ユーベルーナの言う通りに動いただけだった。
そして賢明なユーベルーナは政治的理由、お家事情で勝ち負けを操作していたのである!
接待ゲームではわざと負け、勝つべきゲームでは勝利する。それも、わざとらしくならないように調整して。
故に……、
「ユーベルーナ、どうすんの?」
ライザーは、いつも通り指示を仰いだ。
「えぇ?はい、そうですねぇ……、ライザー様はご結婚したくないとのことなので、今回は負けましょう」
「ん、おかのした。よーしお前らー、負けろー!」
「「「「えぇ……(困惑)」」」」
仮にもリーダーがこの態度である。
「あ、でも、あからさまに負けると文句を言われるかもですから、適度に戦いましょう」
「適度に戦えや」
「「「「は、はい」」」」
と、非常に頭の悪い指示を出して、ライザーは、
「よっしゃ、じゃヌマブラやるかぁ!俺イケ使うわ」
「また強キャラを……」
「ライザー様異様にゲーム上手いじゃないですか!手加減して下さいよ!」
「うるせー!ワイが勝ってワイが気持ちよくなりたいんじゃボケー!!」
格ゲーマー特有の理論を押し付けつつ、MiiUの電源を入れた。
『……リアス様の本陣は旧校舎、オカルト研究部。ライザー様の本陣は新校舎、学長室……』
アナウンスが、流れる。
「いよっし、新校舎に入っちまえば俺は最強のクイーン並みに力をプロポーション出来るって訳だ!」
「あらあら、そんな簡単ではありませんわよ?」
などと会話を続けるリアス達を他所に……、
『それでは、レーティングゲームを始めます』
戦いは、始まった。
「部長、作戦は?」
「それ、なんだけど……、あのアホに作戦を立てる頭なんてあるかしら」
「えぇ……」
「あの馬鹿のことだから、本陣でうだうだ……、そうね、仲良く対戦ゲームでもやってるんじゃないかしら」
フン、と鼻を鳴らしながら言うリアス。大正解である。
「いやぁ、流石にそこまで馬鹿ではないでしょう……?」
イッセーが意見具申するが……、
「いいえ、ライザーはそこまでの馬鹿よ。その上、こっちを舐めきっている……。くっ、本当にイライラするわ、あいつ……!」
歯軋りをしながら、先日のライザーの煽りを思い出すリアス。
……『イメクラ嬢やんけ!!!』
「だぁれがイメクラ嬢よおおおおお!!!」
「部長落ち着いて!」
イッセーがリアスを抑える。
「え、ええと、そう、取り敢えずセンター……、体育館から攻めたらどうかしら?」
「はぁ、はぁ……、ちょっと取り乱したわ……。ごめんね、皆んな。ええと、そうね朱乃。貴方の言う通りだわ。取り敢えず体育館から攻めましょう」
大体の方針を定めるリアス。
「朱乃の言った通り、センターを先取することは重要よ。かと言って、校庭を真っ直ぐに突っ切るのは流石に無謀……」
リアスは顎に手を当てて考える。
「朱乃、裕斗、小猫。まあ、ないと思うけど、森にトラップを仕掛けてきて頂戴」
「「「はい」」」
「アーシアは私と本陣で待機」
「はい!」
「え?えーと、俺は?」
「イッセーは、ここ」
リアスは、優しく微笑み、自らの膝を指す。
「う、お、おおお!それってつまり、膝枕ですかぁ?!」
鼻息荒くリアスの膝に飛び込むイッセーと、それを嫉妬の目で見るアーシア。……こちらも、少々、緊張感に欠けていた。
一方その頃、ライザー・フェニックスは……。
「死ねや!オラオラ!死ねやー!!」
「あっ、ライザー様強い!異様に強い!このゲームやり込んでる!!」
リアス・グレモリーの予想通り、眷属と仲良く対戦ゲームをしていた……。
「あの、ライザー様?ゲームをするのは結構ですが、もうレーティングゲームが始まって……」
「ユーベルーナ、今話しかけんなや」
「あ、はい」
「「もーやだー!!」」
その時、画面内のマルオとレイージが吹き飛ぶ。
「ライザー様強過ぎ!」
「手加減してよ〜!」
「嫌や、ワイは勝ちたくて格ゲーマーやっとるんじゃ、加減なんぞするかボケ」
「「むー!むー!!」」
「じゃかあしい!!!」
「「大人気なーい!!!」」
文句を言うのは白い道着のイルと赤い道着のネル。双子の姉妹だ。
「はいはい、ライザー様!ゲームはおしまいにして下さい!これ、魔王様も見ていらっしゃるんですからね!」
「魔王がなんぼのもんじゃい」
「問題発言?!」
ライザーのあんまりにもあんまりな発言にショックを受けたユーベルーナは、一つ咳払いをした後、地図を開いて言葉を続ける。
「良いですかライザー様?皆んなも、よく聞いて」
「何やねんもう」
「何かしら、ユーベルーナ」
「作戦?」
「ええ、聞くわ」
と、ライザーとその眷属達は眼前の地図に目を向け、話を聞く。
「いい?先ずは斥候……、森に偵察に行って貰うわ。多分、トラップを仕掛けたりして人数不足を補おうとするんじゃないかしら?ここにはシュリヤーと、マリオン、ビュレントにお願いするわ」
「「「はーい」」」
名指しされた三人は手を挙げる。
「多分、あっちの騎士辺りと鉢合わせると思うから、適当に戦ったらリタイアしてね。……それで、次はセンター。この、中央の体育館。定石通り攻めてくると思うんだけど」
「「あー、はいはい、私達が行くよー」」
イルとネルが元気よく挙手。
「いやいや、お前らおらんかったら誰がヌマブラやるんや」
「「ライザー様強いからもう嫌!!」」
「じゃあ、そうね、イルとネル、雪蘭とミラに行って貰いましょうか」
「私?良いわよ」
「適当に遊んでくれば良いんでしょ?」
こちらには、中国拳法使いの雪蘭、大鎌使いのミラが割り当てられた。
「残りは、体育館組と森組がリタイアした後適当に出てね」
「ユーベルーナどうするんだ?」
カーラマインが尋ねる。
「遊撃……、するフリして、その辺ふらふら飛んでるわ」
「俺は?」
ライザーが尋ねる。
「ライザー様は余計なことせずに座ってて下さい」
「任せろ」
「さあ、作戦は決まったわ!後は動くのみ!行くわよ皆んな!」
「「「「おー!!!」」」」
「あ、負ける予定やしそんなに気合い入れへんといて」
「「「「……お〜」」」」
戦いが、始まった……。
ライザーの眷属の数が多過ぎて、一人一人の描写が適当になりがちなのをどうにかしたい。