ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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今日はシチューを作りました。


8話 慣らし運転

「これは……、黒鎧か」

 

「黒だと何か問題が?」

 

「いや……、黒騎士というものがいてだな」

 

「ああー、ええと、主人を持たない騎士は、金がないから錆止めの為に鎧を黒く塗るんだったか?安心しろ、黒いのは錆止めじゃなくって、もともとそういう金属だからだ」

 

「なるほど……」

 

シルヴィアに軍服とサバイバルアーマーを着せた。

 

「ふむ……、この精巧な蛇腹構造は、いつだったかに見た、ワノクニのものに似ているな」

 

「ワノクニ?」

 

「ああ、遠いところにある島国だそうだ。そこでは、サムライと呼ばれる騎士がいるらしい」

 

「あっはい」

 

そう来るか。

 

まあ、ワノクニについては置いておこう。

 

「で、着心地は?」

 

「充分だ。そもそも私は指揮官だからな、重厚な鎧は不要だ」

 

「しかし、モンスターを退治して冒険者になるんだろう?重厚な鎧は本当に不要なのか?」

 

「それこそ不要だ。ゴブリンやスケルトン相手ならまだしも、人間よりも力が強いオーガなどを相手にした時、薄っぺらな鉄板の鎧など重りにしかならんからな」

 

「なるほど、機動性を重視しているのか」

 

「ああ、そうだ。その点、この鎧は着心地がよく、胸や肩、股間を守れている。防御力は充分だ」

 

理解した。

 

シルヴィアは、言外に、フルプレートメイルは時代遅れだと言っている訳だな。

 

先進的な考えができる訳か……。

 

次は武器だ。

 

銃は、右腕のレーザーブラスターで良いとして……、剣か。

 

レーザーブレードは……、扱い慣れていないと危ない。

 

単分子カッターは見えにくい。

 

やはりここは、高周波ブレードで決まりだな!

 

ニュークリアデターランスの世界観では、日本はいち早く核融合技術を実用化し、石油を作り出すナノマシンも作り出した。もちろん、変換効率はかなり悪いのだが、石油を作れるようになったのは、資源が枯れたあの世界ではまさに救いの手だった。

 

だが、それを独り占めしようとする共産圏が攻めてきて……、日本は地理的に、戦争の最前線に立たされることになった。

 

そんな日本帝国軍が、近接戦闘用の兵装として作り出したのが、高周波ブレードであった。

 

日本刀をベースにしながらも、反りが少ない片刃の剣で、長さは両手でも片手でも扱いやすい。

 

峰に握りこぶし二つ分ほどのエネルギー発生装置と高周波発生装置が取り付けられており、恐ろしく良く切れる。

 

高周波は、連続して六時間発せられるが、チャージにも六時間が必要だ。

 

専用の鞘には充電装置が取り付けられており、継戦能力も高い。

 

バニラでは、最強の近接武器の一つだった。

 

今回は、DLCの『Seven SAMURAI IKUSA』にて追加されたユニーク武器、『MIKAZUKI EDGE』を渡そうと思う。

 

ミカヅキエッジは、天下五剣の三日月宗近をモデルとした高周波ブレードで、日本帝国軍大佐のNPC、アラヒデ・キリヤが所持している。

 

Ω鯖ではユニーク武器も本物と寸分の狂いもないコピー品がマーケットに流れているので、問題はない。問題だらけだが。

 

ミカヅキエッジは、DLC最高の剣と名高い。

 

連続稼働時間は十二時間、充電に四時間、高周波を発生させずともトップクラスの切れ味を誇り、丈夫で扱いやすい。

 

見た目は、月のように蒼白い刀身で、刃の部分が青く、鍔に黒い高周波発生装置、グリップは黒い強化ラバー。

 

「これは……、カタナか」

 

「近いね」

 

「私もサーベルを使っていた。叩きつける剣よりは斬る剣の方が扱いやすい。しかし、ここの飾りは何なのだ?」

 

「それは、高周波発生装置とバッテリーだよ」

 

「何のことだか分からんな」

 

 

 

外に出て適当にターゲット人形を配置する。

 

「良いか?それは、高周波ブレードだ。銘はミカヅキエッジ」

 

「銘があるとなると、名剣なのだろうか?」

 

「かなりの名品だと言っておこう」

 

「そうか……」

 

軽く左腕だけで素振りするシルヴィア。

 

「ほう……!見た目に反してかなり軽いな。この、変な飾りが鍔にある癖に、重心が寄っていない。バランスが良くて扱いやすい」

 

そして、巻藁を斬りつける。

 

「切れ味もいい。斬っても歪まず、伸びないな」

 

「じゃあ、次はあの岩を斬ってみろ」

 

「馬鹿言うな、岩など斬れるか」

 

「斬れる」

 

「どうやって?」

 

それは高周波ブレードだからな。

 

「まず、鍔の出っ張りの黒い部分にある、黒い丸を押してみろ」

 

「こうか?」

 

「そして、二秒待つ」

 

「おお、刀身が青く光ったぞ」

 

「この時、刀身には決して触れちゃ駄目だ」

 

「何故だ?」

 

「指を落としたいなら構わないが」

 

「何だと?これは魔剣なのか?」

 

「魔剣の定義が知らないから何とも言えないが、特殊な効果がある。さあ、その状態で刃を岩に当ててみろ」

 

すると、岩の、刃に接触した部分は液状化した。

 

「な、何だこれは……?」

 

「その剣は、光っている時に刀身に触れたものは、液体にしてしまう性質がある。連続で十二時間まで光っている状態を維持できるが、そのあとは四時間鞘に納めなければならない」

 

「なるほど……、見事な魔剣だ」

 

そこら辺に出した鉄塊や岩をスパスパ斬るシルヴィア。

 

「次は右眼と右腕の説明をしよう。『コンバットオープン』と言ってみてくれ」

 

「『コンバットオープン』……?!何だこれは!!」

 

視界にエネルギーゲージやターゲットサイトが出てきていることに困惑しているようだ。

 

「消したい時には『シャットダウン』と言ってみてくれ」

 

「『シャッドダウン』……、消えた」

 

もう一度、照準システムを起動させる。

 

「良いか、右腕は向こうに向けろ、手のひらは開け」

 

「こうか?」

 

「そして、腕の先にあるあの岩を破壊すると右腕に念じてみろ」

 

「何だそれは?」

 

「良いからやれ」

 

「むう……、んん?何だこれは?右腕が熱い」

 

「その熱を伸ばすような感覚だ」

 

「こうか……、おおっ?!」

 

右掌にある射出口から、赤いレーザーが飛び出た。

 

レーザーが命中した岩は赤熱して、直径三センチほどの穴が空いていた。

 

「右腕は熱線が出る銃に改造させてもらった」

 

「何だこれは……、凄まじいな」

 

「右端の棒があるな?それは、熱線を放てる時間を示している。熱線を放てば放つほどその棒は縮み、なくなると暫しの間熱線は放てない。時間経過で回復する」

 

「なるほど」

 

「そして、視界にある丸は照準の代わりに使える」

 

「狙撃もできるのか」

 

こうして、暫くの間、シルヴィアの訓練をした。




久しぶりに野菜を食べた気がする……。

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