「まず、この山自体が俺の私有地で、魔法生物がそこら辺にいる」
「えっと……?」
「庭に出てみるか。ついてこい」
全員で庭に移動する。
「わあ……!!綺麗な薔薇園ですね!」
『あら、真凛。こんにちわ』
『今日もいい天気ね』
『薔薇達は今日も元気よ』
「いるだろ?」
宙空に指を指す。
「「………………え?」」
圭と美紀が微妙な顔をする。
「な、何がですか?」
「ほら、そこに」
「い、いや、何にもいないじゃないですか!」
『いるわよー』
「おいお前、こいつの耳を引っ張ってやれ」
『はーい』
「……痛い?!な、何かいる?!何かいるよ美紀!!」
「圭?!」
そうだな。
「飲め」
「何ですかこの薬」
「薬だ」
「だから何のですか?!!」
「ここにいる連中が見えるようになる」
「何がいるんですか?!超怖いんですけど?!!」
「まあ飲め」
飲ませる。
「んっぐ!」
『こんにちわー』
「……あ、いる!!!」
「え?何が?!」
美紀にも飲ませる。
『貴女もこんにちわー』
「本当だ、いる!!」
こいつらは妖精、リャナンシーだ。
「真凛、何がいるの?」
「にぃに、見えないよー?」
貴依とるーちゃんにも飲ませる。
「「あ、いる!」」
薔薇園には、リャナンシーを放流してある。
一般人には見えない。
俺の魔力を対価に、うちの薔薇園の管理維持を行う。
「えっ、よ、妖精さん?」
「リャナンシーだ」
「リャナンシー……、アイルランドの妖精ですね。男性の愛と精気を受け取り、代わりに詩の才能と美しい歌声をくれるという……」
「よく知っているな、美紀」
賢いな。満点をくれてやる。
「凄ーい!妖精さんだー!」
るーちゃん大喜び。
「あー、そういうことね。薔薇園があるのは知ってたけど、どう考えても、真凛とシルキーちゃんの二人だけじゃ管理しきれないと思っていたのよ。ここの妖精さんに薔薇園の管理をさせていた訳ねー」
と貴依。
「ふわー、可愛いですねえ」
「でも、リャナンシーに精気を吸われると早死にするって……」
「その程度で俺が死ぬか」
「アッハイ」
「因みに、ここの薔薇を使って作る香水なんてのもある。他にも植物園があり、そこで作った魔法植物の香水も素晴らしい香りだぞ」
「そうなんですか」
「フェアリーテールというメーカーで売っている」
「え?!フェアリーテール?!!あの伝説の?!!」
「知っているのか?」
「知ってるも何も……、フェアリーテールと言えば、ここ十年くらいで世界のトップシェアになった化粧品と衣服、お酒のブランドじゃないですか!」
「多少は売れているみたいだな」
「多少は?!香水は魔法の香り、服はこの世のものとは思えない仕立て、お酒は史上最高と大人気で、ハリウッドスターやセレブなんかに大人気なんですよ!!」
そうなのか?
趣味で売ってるからな、売り上げとかは知らん。俺の管轄外だ。
「詳しく知りたいなら責任者に会うか?」
「え、フェアリーテールの責任者にですか?!」
「ああ、あいつは暇してるぞ」
「あ、会ってみたいです!」
『あら、真凛さん、お友達?』
「俺のハーレムメンバー(予定)だ」
『あらあら、おいたは駄目よ〜?』
「人じゃないん、です、ね」
「ん、ああ、ドリアードのエウリュディケだ」
「は、はあ」
『因みに、恋人はいませんよ〜』
「ドリアードはギリシア神話の木の精霊、エウリュディケはオルペウスの妻ですね?」
「ほう、美紀、お前は賢いな。褒めてやる」
「あう……、ま、真凛先輩、いきなり女の子の頭を撫でるのはセクハラですよ?」
「気にするな」
「気にします!!」
「えっと、エウリュディケさん?貴女が、フェアリーテールの責任者なんですか?」
『ええ、そうよ〜。私が全体の指揮を執って、アルケニーが服飾を、フェアリー達が香水や化粧品を、サテュロスがお酒を、アンデッド達が会計をしているの〜』
「なんですかそのマジカル経営陣?!!」
「面白いだろ?」
あいつらは人外であるが故に、人外のセンスで物を作る。
ファッションについては詳しくはないが、素人目に見ても、人間の作るものとは違う、人外の美しさがあるものを作るのだ。
次はほら、研究室でも見せるか。
「るーちゃん、ここは研究室だよ。危ないものもあるから勝手に触っちゃ駄目だよ?」
「はーい!」
「まあ、本当に触ったらヤバイものは封印してあるからな。最高にヤバいものでは、扱いを間違えれば日本列島が吹き飛ぶくらいのものがあるぞ。気をつけろよお前ら」
「「えぇ……」」
「真凛これ何ー?」
「うわわわわ!貴依先輩!!なんで貴女は危ないって言われた矢先にそんなこと!」
「え?最終的に、危なくっても真凛がなんとかしてくれる感じでしょどうせ。何をビビってるの?」
「いや……、それは、そうかもしれませんけど」
「安心しろ、消し炭になっても生き返らせてやる」
「ね?」
「ね?じゃありませんよ……」
貴依は俺を信頼してくれているな。
「因みにそれはヨハネのペンと言うマジックアイテムだ」
「へー、何ができるの?」
「握ってから紙と一緒に空に投げてみろ」
「えいっ」
紙と、ヨハネのペンが空中に停滞する。
「うわ、浮いてる」
『うわ、浮いてる』
貴依の言葉を記録する。
「ああ、ボイスレコーダーみたいなものなのね」
『ああ、ボイスレコーダーみたいなものなのね』
「使い終わったらペンを握れ」
「はーい、っと」
ペンを握って、机の上に置く貴依。
「本はー、英語の本ばっかりね」
「英語は語彙数が多くて魔法に適しているからな」
「へー」
「ほら見ろ圭、この鎧、生きているんだぞ。アイゼンリッター、ウェイクアップ」
『………………』
敬礼する空洞の鎧。
「うわ、彷徨う鎧だ!!」
「ほら見ろ美紀、あの絵、生きているぞ。よう、絵画伯爵ガンドール」
『む、客人であるか?貴依殿以外は初めて見る顔であるな』
「きゃああ!絵が喋った!!!」
「ほら、るーちゃん、ペガサスが背中に乗せてくれるって」
『ヒヒーン!!』
「わーい!ありがとうお馬さん!」
「貴依、裏山の天辺を見てみろ」
『ガアアアオオオオオ!!!!』
「何あれ、ドラゴン?」
「裏山のボス、ドラゴン王のゼファーだ。因みに、あれは欠伸だからビビらなくていいぞ」
………………
…………
……
「どうだった?」
「あの、すっごく楽しかったです!」
「夢みたいでした……!」
「凄ーい!真凛にぃにのお家って面白いねー!」
「いや……、とんでもないわね」
最高だろ?
本気出して作ったからな。
館と裏山は最高の出来だと自負している。
褒められて嬉しい。
それから、一二週間。
「……ところで、真凛先輩」
「何だ、美紀」
「あの……、まだ街に生き残っている人とか、いると思います」
「それが?」
「……真凛先輩なら、助けられるんじゃないですか?」
「人間にそんな価値があるとは思えないが」
「そんなっ……!」
俺は、遠見の魔法をかけたタブレットを美紀に見せる。
『食料だ、食料をよこせ!』
『へ、へへ、どうせ死ぬなら、その前に一人くらいレイプしてやる……!』
『ガキが、俺の囮になれよ!』
『死ねっ、ジジイが!ひゃはは、こんな世の中になったんだ、殺人だって合法だろ!』
『ね、ねえ、ヤらせてあげるからさ、助けてよ、ねえ!』
「ひっ……?!」
足の引っ張り合い、パニックで殺し合い、レイプ。
最悪の状況、人間の汚さ。
「これでも、救えと?」
美紀は、何とも言えない顔をして、涙を流した。
……ん?
『めぐねえ!!』
『恵飛須沢さんっ!!!皆んなを連れて逃げてっ!!!』
ふむ。
これは救おうか。
んー、他にも新しく書きたいのが何本かあるしぃ。