ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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朝起きれなーい。


21話 少女の覚悟

「玲子ちゃん、答えは決まったプロセスですか?」

 

「うん、私は……」

 

………………

 

…………

 

……

 

私は、嫌だった。

 

進んで戦うのは嫌だ。誰だって、痛いのは嫌いだ。

 

でも、悪魔とか言うふざけた奴らに、何もできずに食べられるのは、もっと嫌だ!

 

だから、私を、正義のデビルサマナーにしてください!

 

私は、凪おばあちゃんにそう頼んだ。

 

すると、凪おばあちゃんは、「何てヤングなカテゴリーなのかしらね」と短く笑った後に、それなら、私が訓練をすると言い……。

 

私はこの三年間、凪おばあちゃんの下で猛特訓した。

 

バイトもやめた。そんな暇はないから。その代わりに、凪おばあちゃんの伝手で、ヤタガラスの簡単な調査依頼をやっている。

 

まあ、コンビニバイトよりは稼げるから……。

 

そして……。

 

 

 

「行くのですか?」

 

「うん……。槻賀多村は、凪師匠が守ってくれるし、私は、都会に出て、都会で頑張ってみる。デビルサマナーとして……」

 

「辛かったら、いつでも戻ってきて良いプロセスですよ……」

 

「うん!師匠、行ってきます!」

 

 

 

バスに乗り、電車に揺られて、生まれて初めて新幹線に乗り、七時間くらい。

 

師匠の好きだった、ライドウって言う伝説のデビルサマナーは、金色の龍に乗って移動したらしいけれど、私は新幹線に乗り移動した。

 

いつか私も、ドラゴンに乗れるくらいのデビルサマナーになってみせる!

 

そんな決意も新たに、東京に来たんだけど……。

 

「ひ、ひぃ、人がいっぱい……!」

 

人の量、そして匂い。

 

頭がくらくらする。

 

人で酔う。

 

「都会に住むなら慣れないと……。あ、そうだ、ヤタガラスの石神稲荷神社に行かなきゃ……」

 

 

 

石神町……。

 

東京でも下町の方にある、小さな町だ。

 

だけどここに、ヤタガラスの人員が常駐する神社があるらしい。

 

「ここか……」

 

正直、ちょっとボロいけど……。

 

あ、巫女さんがいる。

 

話しかけてみよう。

 

「あ、あのっ!」

 

「はい?」

 

「私、設楽玲子って言います!新米のデビルサマナーです!」

 

「……ちょっとこちらへ」

 

「はい!」

 

神社の中に案内された。

 

「……私は、ヤタガラス東京支部の宗方薫です」

 

宗方さんは、私と同じくらいの年頃の、狐っぽい雰囲気の美女だった。

 

すらりとした身体と、狐のような目、優しげな雰囲気の女の人だ。

 

でも、なんだか、ちょっと怒ってる?

 

「あのですね、デビルサマナーは、秘匿されるべきものです。あまり、人前で大っぴらにデビルサマナーですなどと言ってはなりません」

 

「あっ、そ、そうなんですか……、すみません……」

 

「とは言え、新米さんだと言うのなら、まあ……、これから気をつけてくださいね?」

 

「はい……」

 

「ええと、それで……、どこから来ましたか?」

 

「京都の北の方の、槻賀多村からです」

 

「槻賀多村……?」

 

「はい、そこで、凪って名前の師匠から、デビルサマナーの稽古をしてもらって、一人前になったから、都会に来てみました」

 

「なっ?!!まさか、十八代目ゲイリンの新しい弟子とは……。分かりました、それで、帝都には何をしに?」

 

「えっと、槻賀多村は凪師匠が守ってくれるんで、私は、どこか別のところを守れたらなーって思いまして。折角なら、都会に行ってみたいと思って、東京に来ました」

 

少し頭を抱えるようなそぶりを見せる宗方さん。

 

「まずですね……、東京近辺には、今代の、十七代目ライドウが守護しています」

 

「えっと……、となると、私は要らない子……?」

 

「いえ、力を正しく使えるデビルサマナーならば、何人いても良いのです。しかし問題は……、我々、ヤタガラスには、貴女に報酬を渡すほどの余裕がないのです」

 

「あー……」

 

そう言えば、師匠も、ヤタガラスにはお金がないって言ってたなあ。

 

「……どうしましょう?」

 

「どうしましょうって……、はぁ。貴女は運が良いですね」

 

「はい?」

 

「丁度、去年の今頃でしょうか、デビルサマナー業界に、DDSnetという組織ができました……」

 

宗方さんの話によると、DDSnetは、最近できたデビルサマナーを援助する組織らしい。

 

異界アイテムの販売、オークション、オークションへの出品の補助、異界の情報提供、デビルサマナーの派遣の取りまとめ……。

 

DDSnetの力を借りれば、フリーのデビルサマナーもちゃんと活動できるらしい。

 

逆に、DDSnetの誕生以前は、安い賃金で働かされたり、逆にデビルサマナーがズルしたり、偽りの依頼で騙されて殺されたりとか、そう言うのが横行していたらしい。

 

その状況に待ったをかけたのが、DDSnetだったと言う訳だそうだ。

 

最初の頃はみんな警戒していたけど、この一年で業界からの信頼を着々と積んで、今や、DDSnetはデビルサマナー業界になくてはならない存在になっているみたいだ。

 

「とりあえず、今日はここに泊まっていきなさい」

 

と、宗方さん。

 

「ありがとうございます!」

 

そんなこんなで、しばらくはこの石神稲荷神社を拠点として、働くことになった……。

 




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