ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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なろうに投稿してみようかなー。


20話 とある村の少女

はあ……。

 

県立蘇我高校。

 

私の高校だ。

 

春だから、私は今、ピッカピカの高校一年生って訳。

 

普通なら、恋の予感とか青春やら色々あるはずなのに。

 

それなのに……、この槻賀多村には何もない。

 

槻賀多村、山陰地方、京都の北の方の過疎地域。

 

人も少ない、自然がいっぱい。

 

外から来た人はとても良いところだと褒めるけど、私みたいな若者からすれば、何にもない、つまらない村だ。

 

変わったものといえば……。

 

「玲子ちゃん、心ここに在らずのプロセスですか?人生も何でも、前を向いて歩くセオリーこそが良いのですよ」

 

お隣に住んでいる、変わった喋り方をするおばあちゃんくらいのもの。

 

「凪おばあちゃん……、だって、この村、何にもなくて。凪おばあちゃんはよくわからないのかもしれないけど、都会はもっと凄いんだよ!」

 

「帝都などの都会ですか?昔、何度か、仕事の先輩と帝都に行ったことがありますが、帝都は色々なものがあったプロセスですね」

 

そう、帝都……、東京にはいろんなものがあるはずだ。

 

こんなつまらない過疎地域なんかより、面白そうなものがいっぱい。

 

この村の言い伝えなんて、昔は、槻賀多家が暗殺者だった……、みたいな、荒唐無稽なものばかり。

 

変なわらべ歌とかがあって、嘘か真か、昔ここにあ、あばどん?しぬぁんど?が落ちただとか何だとか、そんな話があるけれど……。

 

基本的には何もない、過疎地域の一つだ。

 

蘇我高校も、この田舎村からバスで一時間先にあるからね。この辺には何もない。

 

こんな村で一生を終えるだなんて嫌だ。

 

今、高校の間にバイトしまくって、お金を貯めて、高校を卒業したら都会に行くんだ。

 

そして、デザインの専門学校に奨学金を借りて通って、将来は世界を股にかけるデザイナーになるの!

 

「良い目標のカテゴリーですね。ですが、辛いことがあれば、いつでもこの村に帰ってくると良いカテゴリーです。私ももう歳ですから、玲子ちゃんがビッグになる頃に生きていられるかどうか……」

 

「凪おばあちゃん、なんだかんだ言ってあと二十年くらい生きるでしょどうせ」

 

「あはははは!ナイスな予測のカテゴリーですね!そうなるように労ってほしいプロセスですよ!」

 

 

 

はー、ほんっとにもう……。

 

不死身の凪おばあちゃんはほっといて、学校行ってバイトして……。

 

そして夜中。

 

「うひゃー、もう12時だ!真っ暗だなあ、お化けとか出ないと良いんだけど……」

 

たまたま、今日はバイトが長引いて、たまたま、バスを一本逃して……、最後のバスに乗って、夜中の12時に村に帰ってきた。

 

「……ん?」

 

あれ?

 

こんな時間に人影?

 

誰かな……?

 

村の人達、お年寄りばっかりだからすぐ寝ちゃうし、街灯もろくにないから、この村の夜は本当に真っ暗……。

 

不審者……、もいないくらいに田舎だし、本当に誰だろう?

 

あ、もしかしたら、村の外から来た人かな?

 

たまに民族学者さんとかが来るらしいから、それかも?

 

「あ、あのー、すいませーん?」

 

「うぉ……」

 

「うぉ?」

 

「うぉまえは、誰だぁ?」

 

「えっと、設楽玲子です。この槻賀多村の者ですが、その、外から来た人ですか?」

 

「うぉまえは、人間だなあ?なあ?!」

 

「えっ、あっ、はい……?」

 

おかしい、ちょっとスマホのライトで照らしてみよう。

 

「うぉまえ、うぉれの、エサになれ!マグネタイト、寄越せえええ!!!!」

 

「は、ひ……?!!」

 

赤い、骸骨?!

 

剣を二本持ってる!!!

 

「がああああーっ!!!」

 

「きゃああああーっ!!!」

 

痛いっ!

 

腕を少し斬られた!

 

血、血が止まらない……!

 

に、逃げなきゃ!何だかよく分からないけど、逃げなきゃ!

 

「うぉまえ!待てえええ!!!うぉれのマグネタイトぉお!!!」

 

「ひっ、はっ、やだ、やだやだ、死にたくない、死んでたまるか……っ!」

 

走れ、走れ!

 

音がする。

 

後ろから音が。

 

金属の音、骨のカラカラとした音。

 

音が聞こえなくなるまで走れ、走れ!

 

「助けてっ!誰か助けて!!!」

 

大人を起こさなきゃ!

 

誰か、大人の人に来てもらわなきゃ……!

 

「おや……」

 

「あ……?」

 

「凪おばあちゃん……?」

 

は?え?

 

何で凪おばあちゃんが?

 

しかも、このご時世に刀を帯びて夜中に?

 

「まさか、ボケが……?」

 

「失礼なガールね……。私は生涯現役のプロセスですよ」

 

それと、小さな妖精さん。

 

「凪ー、この子、誰ー?」

 

「そうねえ……、玲子ちゃん、こんな時間にどうして……」

 

と、凪おばあちゃんが口を開いた時。

 

「うぉお?!おおお?!マグネタイト、増えたあ!!!マグネタイト、寄越せぇ!!!!」

 

「あら……?」

 

「ッ!!!凪おばあちゃん、危ないっ!!!」

 

赤い骸骨が襲いかかって……!!

 

もう駄目だ!と思って目を閉じる。

 

そして数秒……。

 

「がぎゃ……っ?!!」

 

「え……?」

 

緑色の光が迸ったと思ったら、赤い骸骨が縦に真っ二つに割れた……?!

 

そこには、刀を振り抜いた姿の凪おばあちゃんが。

 

「な、ぎ、おばあ、ちゃん……?」

 

「玲子ちゃん、夜中に出歩くのは危険なプロセスですよ」

 

「い、今の骸骨は……?」

 

「っ?!」

 

驚いた表情を見せる凪おばあちゃん。

 

「玲子ちゃん、貴女は、悪魔と出会ってしまったプロセスですね……」

 

「あ、くま……?」

 

 

 

凪おばあちゃんの家に呼ばれて治療を受けた私。

 

「『ディア』」

 

妖精さんが魔法らしき手段で、切り裂かれた私の腕の傷を塞いだ。

 

「す、凄い、跡も残ってない」

 

「傷が浅かったからねー」

 

自分の周りをふわふわ飛んでる妖精さん。

 

か、かわいい!

 

「さて……、玲子ちゃん。少々長い話になりますが、聞いてもらえますか?」

 

「は、はい」

 

凪おばあちゃんの話が始まる……。

 

「結論からお話しします。玲子ちゃんが出会ったアレは、悪魔と呼ばれる存在で……」

 

………………

 

…………

 

……

 

「なるほど……」

 

世界中に遥か昔から存在している『悪魔』と、それを扱うガイアーズやメシアンのような裏社会。

 

私達一般人が知らないだけで、この世界の裏側では、常に、人の世を脅かす悪魔や、それを悪用する悪党がいて、それと戦う正義のデビルサマナーがいる。

 

凪おばあちゃんも、昔は、日本政府直属の正義のデビルサマナーだったらしい。

 

今は、数年前の政権交代の際に、正義のデビルサマナー組織であるヤタガラスの予算が、事業仕分けで完全にカットされ……。

 

前政権のせいで、正義のデビルサマナーは大打撃を受けてしまい、今の日本の霊的な防備は非常に薄い状態にあるらしい。

 

やっぱり、人間って生き物は何かとお金が必要なんだなあ……。霞を食べて生きていける訳じゃないもんね。

 

だから、今、ヤタガラスを始めとする、正義のデビルサマナー組織は大幅に弱体化してるんだって。

 

ヤタガラスって言うのは、古来から日本を霊的に守ってきた秘密の国防組織だって。

 

凪おばあちゃんも、昔はヤタガラスで戦っていたんだってさ。

 

うーん……。

 

これさ、漫画とかであるあるな展開だけど……。

 

「私、巻き込まれちゃった、の?」

 

「そう言うセオリーですね」

 

「に、日常生活には戻れないのかな?」

 

「別に、全てを忘れて日常生活に戻っても良いセオリーですけれど……、また、次に悪魔に襲われた時に、今回のように助けられるかは分からないプロセスですよ?」

 

「……つまり?」

 

「セルフを鍛えるプロセスを希望するならば、また今度、答えを出してから来なさい。今日のところはお家に帰るべきですよ。明日一日、しっかり考えなさい」

 

「うん、分かった……」

 

何も見なかったことにして、日常に戻る。しかし、また襲われるかもしれないと怯えなきゃならない。

 

もしくは。

 

辛く厳しいけれど……、戦う力を身につけるか。

 

どちらかを選ばなきゃいけない。

 




なろうへの移動……、めんどくさいけどやってみたい感はある。

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