ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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また自家製チャーシュー作るわ。


164話 ファラオの来日

魔法のゲームやおもちゃがもう本当にドン引きするくらいにバカ売れし、魔法を使った特撮ドラマの撮影も大成功した、亜人国家転移から九年目の晩春。

 

『ニホンの民よ!ファラオの降臨である!』

 

なんか来た。

 

 

 

ファラオ、ラムセス二世。

 

十年くらい前、エジプトの博物館に行った時に、オリハルコンと引き換えに復活してもらったエジプトの古代の王だ。

 

彼は、魔法を扱う超古代文明の『古代人』のひ孫にあたる存在で、人間では俺に次ぐくらいの魔力を持つ大魔導師でもある。

 

俺は、古代人の先祖返りとして、ほぼ古代人と同じ性能を持つ超人である。

 

そして、ファラオも、八分の一程度とは言え、色濃く古代人の血が流れる超人だ。

 

古代人≒俺は、出力的には星と同じくらいであるので、ファラオは八分の一の星だ。まあ少なくとも地球を滅ぼすくらいなら簡単にできる存在。

 

……その辺はどうでもいいか。

 

ファラオくらいのレベルの存在は、亜人国家には数千人はいるし。

 

俺にとっては恐るほどの存在ではないのだが……。

 

この国、魔法の黎明期を迎えたばかりの日本では、それは非常に恐ろしいものだった。

 

それだけでなく、国家の威信やらなにやらにかけて、物凄い護衛やら何やらが用意されている……。

 

ことの発端は、先日の魔法大学の学会発表だ。

 

あれを見たファラオが、最近の最新の魔法研究だと大層気に入って、各国の魔法大学への視察をしたいと言い始めたのだ。

 

流石に、復活してからもう十年くらい経つので、ファラオもしっかりと現代の外交方法を学んでおり、事前にアポを取るくらいはしてくれていた。

 

お陰で、各国は恙無く受け入れの準備を済ませていたのだが……。

 

日本においては、ファラオが、思い付いたかのように天皇陛下と俺に会いたいなどと言ってきたからもう大変だ。

 

俺はまだ良い、強いからな。

 

だが、天皇陛下に会うのは、かなり難しい。

 

ファラオは、クーデターによって政権を勝ち取り、更に言えば現地のイスラム勢力を根絶やしにして勝手に独自宗教(ラーを崇めよ)を強制してきた圧政者ともとれる存在。

 

更に、さっきも言ったが、古代人の血を引く超人であり、日本どころか星一つを滅ぼすくらいはできる、外国人なのだ。

 

それを、日本国の象徴である天皇陛下に会わせるのは、流石に危険ではないか?と。

 

そんな話になっている。

 

さりとて。

 

魔法先進国の一つで、更に言えば日本に匹敵、いや、超えるほどに魔法が一般化されたエジプト。

 

バカみたいな経済成長を続け、今年はついに世界のGDPランキングで十位になったエジプト。

 

日本人である俺に蘇生された義理から、対日友好度が非常に高く、貿易量も増やしてくれているエジプト。

 

その王であるファラオに、「なんか危ないからダメです」とは言えないと言うのもある。

 

結局、いつものように、国会なるところでクソくだらない謎々揚げ足取り合戦バトル会議で数ヶ月かけてぐだぐだ時間を浪費した結果、洒落にならないほどの厳重な警備をしつつ少しだけ会ってもらう、という無難な着地点になったそうだ。

 

つまりいつもの日本である。

 

 

 

『フハハハハ!我は、ウセルマアトラー・セテプエンラー!ラムセス二世である!』

 

燃え盛るような赤い髪、太陽のような金色の瞳、エジプト人らしい赤銅色の肌、そして太陽を模した刺青がいくつか。

 

それらを、イタリア産の高級なブラックスーツに包み、オリハルコンの襟巻きと一体化した白いマントと、オリハルコンのアクセサリーと杖で装飾する。

 

意味不明な格好だが、安心してほしい。

 

エジプトではこれが正装だ。

 

ファラオは、マスコミを引き連れながら、日本各地を練り歩いて観光を楽しんだ後、天皇陛下に挨拶をした。

 

『お初にお目にかかる、ニホンの王よ。我はラムセス二世。エジプトの王である』

 

天皇陛下は、柔らかな表情でファラオに挨拶を返す。

 

また、ファラオに、日本での観光を楽しんでいただけて幸いだと一言。

 

ファラオ側も……。

 

『こちらこそ、この国の文化を見せてもらい、色々と参考になった』

 

と礼を返した。

 

その後も、二、三適当な話をして、会談は恙無く終わった……。

 

 

 

……が、しかし。

 

そこで、気が緩んでいたのかもしれない。

 

天皇陛下との会談を済ませたファラオは、北海道にある魔法大学へと赴き、そこでこの俺……、鎧嶺二と会談した。

 

そして、グラウンドに出て、魔法の試射をしていると……。

 

『神は偉大なりぃぃぃっ!!!!』

 

「「は?」」

 

いきなりダッシュで現れたバカが、自爆テロしてきやがった。

 

もちろん、素の耐久力でも、防御魔法なしで耐え切れる程度の衝撃ではあるのだが……。

 

まあ……、大問題だよね。

 

メンツ的な意味でボロボロ。

 

一国の主にテロを許すとか……。

 

幸い、ファラオは、「なんか知らんけどアホが爆発した」くらいにしか思っていないし、そもそもイスラム勢力から目の敵にされているファラオには定期的にテロ部隊が襲いかかってくるので全然気にしていないみたいだな。

 

だが、国賓がテロに巻き込まれる事態は、日本の国威を大いに下げた。

 

今時国威がどうとかってのは時代遅れかもしれないが、これで、日本がどんなに頑張って警備しても、テロ組織が本気出せば無力だと証明されてしまった形になる。

 

実際の話、俺が調べてすぐ分かったのだが、今回のテロ組織はかなり強かった。

 

欧州の最新式ライフルの横流し品に、サプレッサーをつけて消音。

 

合図と同時に護衛警官を狙撃。

 

更に、新型武器で武装した兵員が三十人も素早く雪崩れ込み、一斉に護衛警官を射殺……、魔法が多少使えようとも、流石にまだ銃器に敵うラインではない。

 

そして、皆殺しにされた護衛警官を足蹴にしつつ、俺とファラオに高性能爆弾で自爆攻撃、と。

 

まあ普通に考えて、こんなことをやられてテロを防げる組織はそう多くない。

 

ましてや、平和ボケした日本ではとてもとても……。

 

 

 

話をまとめよう。

 

テロ組織の名称は、『地球解放戦線』だ。

 

その名の通り、魔法から地球を解放するための組織。

 

イスラム勢力を中心に、魔石発電の影響でどんどん需要が減っているアラブ系国家がスポンサーになり発生。

 

その後、反亜人国家であるアジア、アフリカ、南米辺りが連合を組み、一大勢力になりました、と。

 

なんで知ってるのかって?

 

魔法でちょいとやりゃ分かる。

 

なんで止めないのかって?

 

類似組織がぽこじゃか沸いてるからなあ。

 

馬鹿が一箇所にまとまって監視しやすくなってくれるなら、それに越したことなくないか?

 

そもそも俺は全てを引退していて、あとはダラダラ生活することにしか興味ないし……。

 

鬱陶しくなったらまとめて消し飛ばせば良いんだし、しばらく待とうと思ってな。

 

まあ、そういうことだ。

 




いつになったらメイドロボが実装されるんだ!!!!おかしいだろこの世界!!!!

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