ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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チャーシューを自作するとコスパが良く、なによりも、クソ分厚いチャーシューを好きなだけ食える幸せが味わえることに気がついた。


162話 覆面ライダーを作ろう!

えー……。

 

現在、俺は三十九歳。

 

亜人国家の転移から九年が過ぎた。

 

無事に魔法を使ったおもちゃシリーズやゲーム機の類が販売されたところで、新しい仕事が入る……。

 

「はあ、西映さんねえ……」

 

西映プロダクションからの依頼だ。

 

西映プロダクションとは、かなり昔から存在している特撮映画の製作会社だったな。

 

俺の嫁が、覆面ライダーとかいうののファンだから、多少は知っている。

 

とは言え、俺からすれば、役者の演技は荒削りで、ストーリーも子供向け感があるように感じるが。

 

だが、もちろん、良いものを作ろうという意思は感じられる。CG映像が発達したこのご時世に、わざわざ着ぐるみ着て格闘をやるんだから、こだわりってもんがあるんだろう。

 

亜人国家においても、特に演劇を愛する芸術肌な種族には何故か大受けしているそうだ。

 

森人族、所謂エルフのアニエスが夢中になってテレビを見ているのを、毎週日曜の朝に見かける。

 

そんな訳で……。

 

「レイジさん!覆面ライダーですよ!新作のスーツ作成と演出の協力だなんて、なんで光栄なんでしょうか!」

 

アニエスと共に西映の企画室にやってきた。

 

「あ、あの、先生!俺も来て良かったんですか?!」

 

それと、魔法大学の生徒の藤原……、去年の各国の魔法大学の成果発表の時に、覆面ライダーのような強化外骨格を作ってきたオタク君だ。

 

こいつも連れて来た。

 

こいつは、バイト兼実習という扱いで、単位になる実習でありながらもバイト料も結構もらえるというおいしい役割を与えてやった。

 

「そりゃあ、俺は覆面ライダーなんてよく分からんからな。知ってる奴を連れてくるのは当然だろう?」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

それと、うちの社員も数人引き連れて、西映に乗り込んだ。

 

まず、軽く挨拶を済ませて、それから今期の監督に挨拶する。

 

「監督の芝浦雪彦です!よろしくお願いします!」

 

「鎧嶺二です。今回は一応、社長として顔を出しましたが、今後は妻であり社員でもあるこちらのアニエスがうちの社員のまとめ役をするので、何かあればこちらにお願いします」

 

「アニエスです!シバウラ監督、お会いできて光栄です!」

 

こんなもんか。

 

あ、それと……。

 

「それと、こちらは魔法大学の生徒の藤原君です。藤原君はなんでも、覆面ライダーのファンらしく、詳しいそうですよ」

 

「おおっ!君があの藤原君か!」

 

「藤原美津留です!よろしくお願いします!」

 

さて、挨拶も済んだことだし、早速話を進めていくか。

 

「まず、今回のコンセプトは『魔法を科学で制御したライダー』です。テーマは、『社会が変革するに伴う人心の変化』と『それでも失われない人の心』ということ」

 

なるほど……。

 

今まさに、魔法技術で変革を迎えた日本……、その社会の流れに沿った内容な訳だな。

 

「タイトルは……、『覆面ライダーマギウス』です!!!」

 

へえ……。

 

「良いんじゃないですか?マギウスという言葉は、亜人国家の凡超人区分種族に広く浸透している『エストリル語』において、『超越者』を意味しますね」

 

と、俺が言った。

 

「二千二百世紀頃のカリオス圏国家での第三公用語では、マギウスという言葉は『半神』を意味しますね」

 

とアニエス。

 

「す、素晴らしい!その話、本編に出してもよろしいでしょうか?!」

 

「え?良いんじゃないですか?」

 

「ふう……、そしてですね!今回の変身アイテムはこんな感じで……」

 

そうして、差し出された資料には……。

 

「これは……、プラスドライバー?」

 

「はい!基本的に、平成からの仮面ライダーの変身アイテムは、子供が触らせてもらえない道具にしています」

 

なるほどな。

 

俺の記憶だと、USBメモリやICカードのようなもので変身しているライダーがいた気がする。

 

子供には触らせたくないものを変身アイテムにして、それらを子供に触らせておいて、触らせたくない本物を隠しておこうってことか。

 

全国の親は大変だな……。

 

「もちろん、企画段階なのでまだ本決まりではないのですが……、どうでしょうか?率直な意見をもらえると助かります」

 

ふむ。

 

「まず、魔法の発動体とは、基本的にどんな形をしていても『杖』と呼ばれます。初心者であればあるほど、原始的な形状と素材が推奨されるので、これほど複雑な素材の杖を使って変身するこのライダーは修行を積んでいることになりますね」

 

「ははあ、そうなんですか?何故か聞いても?」

 

「『杖』とは、知的生命体が初めて握った木枝のことを指しており、知恵あるものの始まりを意味しています。森人族なんかでは、大人から子供に渡される一番最初の品物は、服でもおしゃぶりでもなく『杖』なんですよ」

 

あ、これはマジ。

 

アニエスも親から杖をもらったそうだ。流石に覚えていないらしいが。

 

「『杖』は知恵の象徴、と」

 

「魔法においては、物の持つ意味を抽出して使うのが常ですからね。ここから、様々な魔法の種類によって、発動体が分岐します」

 

「例えば、『斬る』魔法なら『刃物』が杖になったりですか?」

 

「そんな感じです。特に『剣』は、多くの魔法戦士に好まれますね。『斬る』他にも、『軍隊』『刺突』『勇気』『正義』などの意味もありますから」

 

ドイツの魔法大学の首席にヨアヒムとかいう奴がいて、あいつは発動体として剣を持ち、アイアンゴーレムの軍勢を作っていたが、あれは『軍隊』という意味を抽出した結果だろう。

 

「では、『工具』ではどんな魔法使いになると予測されますか?」

 

ううむ、そうだな……。

 

「『破壊』『修復』『建設』『調整』『加工』……、辺りですかね」

 

「『修復』は良いですねえ!覆面ライダーらしい、優しい能力だ」

 

 

 

まあ、そんな感じで一通り設定については聞いた。

 

・工具で変身、武器も工具

・魔法の力を科学力で制御する

・社会が変わっても人の心は変わらないということを前面に押し出す

・舞台は近未来の地球の日本、主人公は魔法大学の生徒(魔法大学が全国にあるくらい魔法が普及した世界という設定)

・敵は意志を持ったAIが生み出した機械兵団、人に寄生する機械の変身アイテムがあり、それにより一般市民が変身して敵に

 

なるほどねえ……。

 

「その……、それで、亜人の方にも出演していただきたいのですが……」

 

ふむ?

 

「このストーリーでは、未来の話ですから、亜人の方も多く登場して欲しいんですよ」

 

なるほどな。

 

「良いんじゃないですか?とりあえず、亜人国家の芸能事務所に紹介状を書くので、適当なところと契約してください」

 

「ありがとうございます!」

 

それで……。

 

「変身システムの方ですが……」

 

「はい!今回は、なるべくCGを使わずに、魔法による演出を多用したいと思っていまして」

 

「じゃあ、とりあえず今日中にスーツ作っちゃうんで、アクターさん呼んでもらえます?」

 

「きょ、今日中にですか?!」

 

「ああ、材料は持って来たし、作るのは一瞬なんですよ」

 

「その、料金の方は……」

 

「契約金に含まれてます。ああ、亜人国家ではジャンク品レベルの材料ばかりなんで、あまり金はかかってませんからご安心ください」

 

「助かります……」

 

「ですが、あくまでも亜人国家にとってはジャンク品であって、人間の国家からすれば貴重品ですからね。今回、安く請け負ったのは、妻の言葉があったからこそ。勘違いはなさらないように」

 

「は、はい、肝に銘じます」

 

「もちろん、撮影の際に壊れたとか、撮影で壊さなきゃならなくなったとかなら盛大に壊してくださって構いませんし、修復の方もさせていただきますから、そこはお気になさらず」

 

「はい!」

 

さて……、こんなもんか。

 




既存作も頑張って書きます!

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