ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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さみー。


134話 イギリスとドラゴン

「うむ、イギリス国に到着したぞ」

 

『よし、では、首相官邸に向かえ』

 

「うむ、了解だ」

 

我、火吹き山のグルルガンには、飛龍の血が流れておる。

 

故に、翼があり、空を飛ぶことは得意な方だ。

 

連れてきた龍人も、半分は飛龍系であるからして、移動は楽でよいな。

 

とは言え、飛行魔法があるが故に、地龍系も困ることはないがな。

 

我と共に任を受けた異名持ちの二人、残雪のアインズベル、剣牙のジゼルガインの二人は、共に飛龍系である。

 

「ゆくぞ、皆!」

 

「「「「応!」」」」

 

我々は、空を飛び、首相官邸の前に降り立った。

 

 

 

「こんにちは、首相のビリー・ジョンストンです」

 

「うむ、三代目火吹き山、ガリバゼウス・グルルガン・エジャヴ・フレア・レイロードである」

 

「は、はあ……。何とお呼びすれば?」

 

む?

 

「ああ、ガリバゼウスは父祖の名前、グルルガンが我の名前で、エジャヴは氏族の名前、フレアは火龍族を表す記号で、レイロードは姓だ。グルルガンと呼べばよい」

 

「分かりました、ミスターグルルガン。そちらの方は?」

 

「我は、三代目残雪、マンムグンダ・アインズベル・ジャビラ・フローズ・ワイアッヘンだ」

 

「我は、三代目剣牙、ブザーザード・ジゼルガイン・ヤナンナ・アース・リーベルだ」

 

「はあ……、よろしくお願いします」

 

さて……。

 

「それで?学校、なるものを作れば良いのだな?」

 

挨拶もそこそこに、我が訊ねる。

 

「はい、場所については〜……」

 

 

 

よし、説明は充分に聞いた。

 

こんなものだろう。

 

ここに来るまでに、このイギリス国の法律書は全て暗記してきたからな。

 

それに反しなければ何をしても良いはずだ。

 

とは言え、法というものは、公共福祉に反さない限りでの自由を保障するものであるからして、法律書の本文に書いていないから、という名目での非道を行うことは許されぬであろうな。不文律というものがあるはずだ。

 

故に、我々は、イギリス国政府から直属の助言者を借りて、逐次確認を取りながら、校舎の設立、職員の募集、受験要項の作成を行った。

 

大学の設置場所はこちらからの要請で、イギリス国の南西部の森のど真ん中である。

 

この森にはダンジョンが発生していて、危険性から地価が下がっているそうだ。

 

既存の大学に学部を追加、というのは断られた。

 

どうやら、保守的な思考から、歴史の深いイギリス国の大学に、魔法学科などという得体の知れぬ学科を設立するのは、時期尚早と言うものだ、だそうだ。

 

もちろん、それは直接我々に言われた訳ではなく、イギリス国側の態度や、インターネットでの人々の発言から、イギリス国の総意のようなものを我々が斟酌しただけの話だ。

 

これについては、仕方ないと考えている。

 

我々龍人も、多くは保守的な老人であるからして、新しい技術を身に付けるのは躊躇うのでな。

 

だが……、人間など、ほんの百年もしないうちに死ぬ、儚き生き物よ。

 

放っておけばすぐに、魔法の利便性に気づくはずだ。

 

そうなれば、歴史の深い大学にも、魔法学科が追加されるであろうよ。

 

さて……、そして、我々は、今回設立した魔法大学にカレッジ制度を導入する予定である。

 

カレッジ制度とは……、まあ、言ってしまえば、寮制度のようなもの。

 

確か、ハリー……、何とやらと言ったか?魔法の学校を描いた娯楽小説があったと思うのだが、それを想像してもらって結構だ。

 

この世界の人間はそういうものを好むのだと、我々はしっかりと調査してきたのでな。

 

その通り、魔法的な仕掛けを多く含む学寮を設置してやろうと考えたのだ。

 

空間は魔法でいくらでも拡張できるので、使う土地も少なくて済む。

 

それに、政府直属の助言者との協議の結果、森は開拓してよいとのお墨付きをいただいた。

 

更に、学園都市を作る許可まで得られたのは、正しく僥倖であった。

 

我々の持ち寄りで街を作り、行政の支配権はそちら持ち、イギリス国人の雇用を最大限に尊重すると約束をすると、二つ返事で開拓の許可を出したわ。

 

但し、何かしらの不都合があれば、かなりの違約金を請求されるようだがな。

 

今でこそ、魔法バブルによる好景気であるが、されど、数年前までは酷い不景気で、イギリス国人の雇用は不安定であった。今でも、働き口は少ないと聞く。少しでも雇用を増やせるならば……、とのことだ。

 

さあ、まずは、森の面積そのものを空間魔法によっておよそ十倍ほどに増やそうぞ。

 

そして、適切な植林と伐採により土地を確保し、そこに様々な建物を建設する。

 

今回、都市計画には、鉱人族の権威であり、ベスティエ王城を設計した建築士である『ガラゴロ・ガンテン』氏を招聘した。

 

龍人族の魔法学科教師の他にも、労働用ホムンクルスやゴーレム、その他亜人の労働者を呼び集め……。

 

多数の学生向け飲食店、遊技場や図書館、体育館にスポーツフィールド、プール、音楽施設などを用意した。その他、郵便局や、行政施設もだ。

 

マジックアイテム屋なども設置する。

 

その他、森に危険性の少ないモンスターや、亜人国家の植物などを放つ。

 

当然、モンスターや植物は絶対に領域外に出さないことを約束してある。

 

そして、学生寮。

 

学生寮は、学生か本校の職員であれば、無期限に滞在してよいと定めた。

 

家賃は当然に無料だ。

 

家賃とはそもそも、利益のためと、設備維持のために徴収するものだが、我々は利益など求めていないし、設備維持も魔法によって簡単に保守点検できるからして、家賃というものを徴収する意味がないのだ。

 

更に、格安のアパートメントや小さめの家をいくつか。ここには、職員や、街で働く人々に住んでもらうこととする。アパートメントは流石に、家賃を払ってもらおう。家も買い取ってもらおう。我々が優遇するのは魔法の学徒のみだ。とは言え、家賃はそこまで高額にするつもりはない。

 

ダンジョンは整備して、学生のダンジョン攻略を課外授業としてもよいかもしれない。

 

まあ、それは追々にな。

 

では、早速、大学を始めていこうではないか。

 

 

 

私は、学園長として演説をした。

 

その後は普通に、寮の組み分けや施設紹介などをする。

 

その時に、「残念だが、喋る帽子が組分けをしてくれる訳ではないぞ」と言ってやると、子供達は皆笑っていた。

 

やはり、娯楽文化も教養の一つとして読んでおくべきだな。我々も、頭を柔らかくせねばなるまい。偏見の目で見てはいかん。

 

組み分けは、四つの学寮に、それぞれ得意な魔法系統ごとにより異なる色に変色するマジックアイテムのカードで組を分ける。

 

そして、寮を案内する。

 

談話室、大食堂、そして部屋。

 

真っ白な新品のダブルベッドに大型の学習机、本棚と、コンセントに照明。それとトイレにシャワー。クローゼットもある。

 

洗濯のための魔導具は、別室にコインランドリー形式で置いてある。

 

また、寮内には、二十四時間開店している売店を設置した。

 

 

 

授業。

 

授業は、なんてことはない基礎科目だ。

 

だがしかし、相当な急ぎで行う。

 

亜人国家の義務教育である六年をたった四年のカリキュラムに圧縮し、その上で研究も行ってもらう。

 

ついて来れないものは当然のように留年措置を取らせてもらう。

 

逆に、才能があるものは、これまた当然のようにカリキュラムを早める。

 

才能があるものというのは、人間にも多くいるものだ。

 

「フェリックス君、課題はできたかね?」

 

「はい、こちらに」

 

「ふむ……、良いだろう。次は、君さえ良ければ実戦的な実習をしようと思うのだが?」

 

「やります、先生」

 

「よろしい。では、ついてくるが良い」

 

と、まあ。

 

このようにして、生徒を育てている。

 

四年後、か。

 

その頃には、この世界の人間にしてはかなりの魔導師が何人かは世に出せるはずだ。

 

 




あー?

まあそうっすね、次話で帰還勇者の書き溜めは終わります。

次の次から大賢者ポストアポカリプスいきます。

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