ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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地獄編。


旅人地獄巡り

「うぃーっす」

 

「ええと、どなた?」

 

いやー、死んだ死んだ。

 

C4はきついっしょ〜。

 

つーかまた国内に現れやがってあの野郎。

 

財団もてんわやんわだったな。

 

その上連鎖的にあいつとあいつも収容違反、アレとアレもだ。Kクラス世界終焉シナリオだったが……、俺のC4自爆特攻多段攻撃で全オブジェクトを無力化。丸く収まったはず、だ。

 

俺は即死回避使い切っていたんで、しめやかに爆発四散。死んだ。

 

幻想郷で死んだ時は可愛い死神に連れられて、可愛い閻魔様に裁かれたけど、こっちではどうなんだ?

 

と、思ったが。

 

「あの、何か?」

 

「あんたが閻魔様かい?」

 

「うん、そうだよ」

 

「ザッケンナコラー!映姫様を出せぇ!ボイコットだよ馬鹿野郎!!!」

 

「あ、幻想郷んとこの映姫ちゃんの知り合い?遥々こっちの地獄までようこそ〜」

 

「何で美少女じゃないんだ!!」

 

「そ、そんなこと言われても……」

 

「獄卒も美少女に挿げ替えない?」

 

「そんなことしたら地獄じゃなくなっちゃうよね?!むしろ一部の特殊な人が喜んじゃうよ!!」

 

俺がクレーム入れてると、その時。

 

「ふんっ!」

 

「っぶねえ!」

 

頭部を通り過ぎる金棒。

 

「閻魔大王、こいつは亡者です」

 

「ええっ、だって服……」

 

「奪衣婆の目を盗んでどこかから調達したんでしょう」

 

俺の格好?シャツとジーパンだけど?

 

「いや、手持ちのだけど」

 

「どうやって持ち込んだんですか」

 

「普通にソウルに収納してだけども」

 

目の前でソウルの秘術を使ってみせる。

 

「ソウル……、聞いたことのない魔術ですね。少なくとも、魂に作用する魔術など私は知りません。興味深いですが、規則違反です」

 

「まあ固いこと言うなよ。地獄とやらを適当に観光したら帰るから」

 

「何言ってるんですか。死んだんですよ貴方は」

 

「それで?何の問題ですか?どこへ行こうと俺は楽しむだけだよ」

 

「ほお、自分が死んだことを理解した上で問題がないと?随分と肝が座っていますね」

 

「……まあ、とりあえず裁判だね。鬼灯君、資料を」

 

「こちらです」

 

ほーう?

 

俺を裁くか?

 

「胸を張って言えるぜ。俺は何も悪いことしてない!!!」

 

「罪状は殺人、放火、破壊工作、窃盗、賄賂、詐欺、賭博、姦淫などですね」

 

「数え役満じゃないの?!」

 

驚く閻魔。

 

「ですが、困ったことに、善行もしています。国家存亡に関わるレベルの危機なら何十回も救うのを手助けしていますし……、世界の危機にも何度も立ち向かいました。殺人も悪人以外は殺していませんし、貧しいものからは盗んでいません」

 

「そうなの……?うーん、これは難しいなぁ、ちょっと浄玻璃の鏡見てみる?」

 

「そうですね……、判断材料の一つになるでしょう」

 

おっ、浄玻璃の鏡か。

 

亡者の現世での行いを見るやつだ。幻想郷の閻魔、映姫様にも見せられたことがある。

 

「えー、ごほん。それでは、新台真央の裁判を開始する!!!」

 

「俺、弁護士の免許持ってるんだけど、自己弁護ってOKなの?」

 

「無駄ですよ、浄玻璃の鏡とか、そう言う地獄由来のアイテムで何でも分かるんですから」

 

「へえ、地獄ってのは法治国家じゃないのな。後進国かな?」

 

「何とでも言いなさい。大王、浄玻璃の鏡は?」

 

「今出るよ……」

 

映像が流れる。

 

『キラークイーン!!』『がうっ?!』『新台さんッ!!』『俺のことはいい!吉良吉影を止めろォーーー!!!』

 

『ククク……、ウロボロスウイルスの力は誰にも止められん』『ごぺっ』『ウェスカー!!おい、大丈夫か旅人!』『生きてるよ、とっととこのグラサンを潰して、一杯やろうぜ!!』

 

『クソ爬虫類が逃げたぞ!!』『エージェント・シンダイが一人で食い止めている!早く応援を!!』『◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!!』『ぐああああっ!腕取れたっ?!おおおおおあ!!!』

 

「うーん、何て言うか……」

 

「噛ませ犬ですね」

 

ああんひどぅい。

 

「ちょっと気にしてるんだから言うなよ」

 

「戦う、と言うより、囮になったり盾になったりが殆どですね」

 

「これは素晴らしいことだよ鬼灯君。他人を守れるのは良いことだ」

 

「ですが……」

 

映像が出る。

 

『その女は誰なの?!』『アンタこそ誰よ!!』『おおっとダーブルブッキーン』『真央は私のよ!!』『何よこの泥棒猫!!!』

 

『いやー、風俗はやっぱこの辺っすよねえ、黒須組長!!』『分かってんじゃねえか新台よぉ!!』『あん❤︎シャチョさんステキね❤︎』

 

『ルパン逃げるぞ!!』『分かってらあ次元!!』『拙者が道を拓く!!』『俺は逃げるよルパン!』『テメエ真央この野郎!あらららら?逃げ足速ーい?!!』

 

往年の俺のクズムーブが上映される。

 

「まあ多少はね?」

 

と、半笑い。

 

「洒落にならないくらい悪行してますね」

 

「うーん、減刑したいところだけど、これ、どう考えても大焦熱地獄までは落ちるんだよねぇ」

 

「確かに阿羅漢(聖者)の殺害はしていませんが、童女や尼僧と性行為に及んだり(犯持戒人)、殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見と一通りはやっていますからね」

 

「そこら辺はほら、俺の頑張りに免じて無罪放免ってことで」

 

「あと本人に罪の意識が全くないのも問題ですね」

 

「いや?人殺しは後悔したりしてるよ?」

 

「犯持戒人については?」

 

「最高に気持ち良かった」

 

「大王、無間地獄に落としましょう」

 

えっ、酷くない?

 

「うーん、何度も地球を救ったし、今回も世界の崩壊を止めての殉死だったから……、焦熱地獄辺りが妥当じゃないかな?」

 

「ブーブー、無罪放免にしろー」

 

「ふんっ!!」

 

「おっと危ない」

 

すぐ殴るんだからんもう。

 

「いやあにしてもさ」

 

「何でしょうか」

 

「紙媒体使ってんのは失敗なんじゃねえの?」

 

「何を……、!!、大王!資料を!!」

 

「え?え?」

 

『ウォータ』

 

「あああー!!資料が水浸しにぃ!これじゃ読めないよ!!」

 

「それじゃ、またね!」

 

『加速』『ヘイスト』『タイムアルターダブルアクセル』

 

「消えた……!!すぐに指名手配を!!」

 

 

 

 

 

「へえ、あの世ってこんな感じなのか」

 

あの世の街を歩く。

 

全体的に古い町並みだが、テレビや雑誌はあるみたいだ。

 

下町みてえだな。

 

取り敢えず金がいるなー。

 

取り敢えず裏路地の方に入っていって〜ぇと。

 

「おい、なんだ兄ちゃん」

 

「こんなところに迷い込むとは運がねえなあ?」

 

「金出せや」

 

はい発見。

 

「いやあ、ちょっと今金がなくってさ」

 

「ああん?なら身ぐるみ剥いでやるよ」

 

「ああ、いや、そうじゃないよね」

 

「何だってんだあ?」

 

「俺が奪う側なんだよ」

 

「ああ?何言って……」

 

 

 

「「「ぎゃあああああ!!!」」」

 

 

 

「ちっ、しけてやがるな。これっぽっちか。ならこれを賭場で増やすか。丁」

 

「グサンの丁!」

 

「半」

 

「イチニの半!」

 

「丁」

 

「サンゾロの丁!」

 

「す、すげえぞあの兄ちゃん、一人勝ちだ……!」

 

「これ以上はこっちが潰れちまう!ここらで勘弁してくれ!」

 

こんなもんか。

 

さてさて路銀は十分。

 

あとは……。

 

「飯」

 

道行くテレビを見る限りでは和食が基本っぽい。

 

ふらっと飲食店に立ち寄ったがほぼ日本だな。珍味は期待できそうにない。

 

ならば。

 

「女の子か」

 

花割亭狐御前。

 

いかがわしい店だ。

 

うーん、俺のセンサーがビンビンに反応している。

 

ここには美人がいる。

 

金は十分。

 

「行くカァー!」

 

値段を見るとォ?オオーオ、ぼったくりぃ!そうこなくっちゃなぁ!!

 

ん?

 

「オーナーは……、妲己?オッ、人肉ハンバーグか?」

 

「どちらかというと蛇肉の方が好きよ?」

 

おおっ、すんげえ美人。

 

「良いね、君は指名できるのかな、妲己ちゃん?」

 

「ふふ、私は高いわよ?」

 

「今日は懐が潤っていてね、多少は無理できるのさ」

 

「あら、お金を稼げる男の人は大好きよ」

 

上等だァ……。

 

 

 

黄色いオーブを片手で玩びながら妲己ちゃんとお話しする。

 

「へえ、白面のやつ死んだのね」

 

「ああ。ってか妲己ちゃんも九尾狐でしょ?別個体なの?幻想郷にもいたけど」

 

「別個体よ。別個体って言い方なんか嫌ねえ」

 

「いや最後の暴れっぷりとか凄えの何のって。獣の槍の使い手ととら……、ああ、長飛丸が何とかしたんだけど」

 

「あら、あの槍まだあるのね。それに、長飛丸?懐かしいわー。貴方、巻き込まれたのによく死ななかったわね」

 

「端っこの方でわちゃわちゃしてただけだしね。ほら、写真とか撮ってたのよ」

 

「うわぁ、凄いのねえ、白面の」

 

「あとはほら、こっちとか」

 

「ああ、紫……。あの子、自分の世界作って引き籠ってるらしいけど、よく会えたわね」

 

「これとか」

 

「ブッダとキリストじゃない?!え、何、あの人達今現世にいるの?!」

 

と、ぼったくりキャバクラで可愛い妲己ちゃんとお話。

 

たーのしー!

 

美人といるとあれだな、癒されるな!

 

 

 

と、楽しい時間が過ぎた頃。

 

「ここにいましたか」

 

「おっ、よう鬼いさん。俺の罪状は?」

 

「焦熱地獄です」

 

「はっはっは!だってよ!聞いたかい妲己ちゃん」

 

「あら、貴方亡者だったの?」

 

妲己ちゃんがこちらを見ながら言う。

 

「そうなのよ、ごめんねー。はい、これお勘定」

 

「まあ、お金くれるなら何でも良いわ」

 

「じゃあ、俺は行くから。バイバイ妲己ちゃん、また来るよ」

 

「ええ、またお金を落としにいらっしゃい」

 

「おや、大人しく捕まる気になりましたか」

 

ん?

 

何言ってんの?

 

「ああ、ところであんた、名前は?」

 

「……閻魔庁の第一補佐官、鬼灯ですが」

 

「そうかい、それじゃ鬼灯サマよう」

 

イエローオーブを見せつける。

 

「これ、なーんだ」

 

そして砕く。

 

「!!、それは!」

 

俺の姿が消えていく。

 

「じゃ、俺は現世に帰るよ。地獄巡り楽しかったぜ、鬼灯サマよ」

 

「……貴方、死んだら覚えてなさい。確実に地獄に落とします」

 

「それもどうかな?」

 

俺は、蓬莱の薬を見せつける。

 

「……蓬莱の薬まで。成る程、死ぬつもりはない、と」

 

「そー言うこと。じゃ、またいつか遊びに来るよ」

 

 

 

こうして俺は、地獄巡りを終わらせ、現世に舞い戻った。

 

いやあ、楽しいね。

 




死ぬときゃ死ぬ。

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