十六階層では、なんと、洞穴の壁に鉱石が含まれていた。
市川君の解析魔法によると、鉄、銅、鉛、アルミニウムなどのベースメタルがとれるらしい。
だとすれば、ここの壁を軽く破壊して持って帰れば……。
しかし、その度に十六階層まで移動するのは……。
「ああ、五階層ごとにあるセーフエリアまで行ったなら、五階層ごとに転移魔法陣で移動できますよ」
ワープ!そういうのもあるのか!
「ただし、転移できるのは、その階層まで来たことがある人のみですけどね。だから、採掘要員だけをいきなり転移させるとかは無理です」
そうか……。
だが、日本は、鉱物資源の全てを海外輸入に頼りきっている。
もし、日本から金属が産出するとなれば……、その価値は計り知れないぞ。
十六階層は、4kmほどの入り組んだ洞窟だった。以降、十九階層まで同じ環境が続く。
十七階層。
「スケルトンですね。頭蓋骨を砕かない限り、バラバラにしても復活します。因みに、スケルトンの骨は死霊魔法の触媒として優秀です」
そして、ここで休憩。
十八階層。
「ゴーストです。物理攻撃が効かないんで、魔法か魔法銃で攻撃してください。因みに、ゴーストが落とす幽霊石は、召喚魔法や死霊魔法に使われます」
十九階層。
「リビングアーマーですね。頭部のコアを破壊しない限り、延々と襲いかかってきますよ。あ、持ってる武器や鎧はバルカン鉄製なので、そのまま普通に使えると思います」
またも休憩。
そして……。
二十階層。
二十階層は、どうやら、鉱山の麓らしい。
市川君の解析魔法によると、鉱山では、レアメタルとバルカン鉄がとれるらしい。
と、その時。
「来ましたよ、初心者の壁、ゴーレムです。物理にも魔法にも強いんで、とにかくたくさん殴ってください。あと、ゴーレムクラスだと魔石がそこそこ良い値段で売れますよ」
土塊で出来た3mほどの人型。
初心者の壁、ゴーレムだ。
我々の、最大の仮想敵だ。
「行くぞおおお!!!」
「「「「了解っ!!!」」」」
動きは鈍い!
囲んで殴れば……!
しかしこの感触、まるで土嚢を攻撃しているみたいだ。
………………。
クソ、ヴェスタ鋼の武器持ちの一般隊員では火力が足りない!
「全隊退がれ!魔剣持ちが攻撃しろ!」
「「「了解!」」」
私も魔剣を抜く。
「はああああっ!!!」
魔剣に魔力を込めて……、解き放つ!
『ーーーッ!!!』
魔剣持ち分隊長と私の四人攻撃で、どうにかゴーレムを破壊した。
その調子でゴーレムを破壊して回る。
しかし……。
「はあ、はあ、はあ……!」
疲労が……!
魔剣を使い過ぎた!
と、そこに!
『ーーーッ!!!』
「あ、ボスのアイアンゴーレムですね。普通に鉄がとれますよ」
くっ、魔力がもう……!
「……あの、無理そうでしたら僕が処理しますけど?」
「……すまない、頼めるだろうか」
「はい、では……」
市川君が目を閉じる。
「次生火神軻遇突智。時伊弉冉尊、爲軻遇突智、所焦而終矣……!!!来たれ軻遇突智!!!『炎神降臨』!!!」
市川君が右腕を掲げた瞬間に、赤い……、赤過ぎる炎が、市川君の右腕を包む!
「な、何を……?!!」
炎が渦巻き、10mはあろうかという巨大な炎の腕になり……。
「消し飛べ」
市川君が、右腕を振り下ろした!
『ーーーッ!!!』
地面は抉れ、ガラス化し、アイアンゴーレムは蒸発したようだ。
……認識を改めなければならない。
市川君達は、小隊程の戦力などとはとんでもない。
低く見積もっても、一個師団並みの戦力はある。
鋼鉄のゴーレムが一瞬で蒸発するほどの火力……、しかも、右腕だけとは思えない。
全身にあの炎を纏って突っ込んできたら、正直に言って対処法は、ない。
銃弾も、戦車も、戦艦も、もちろん隊員達も、触れられた瞬間に蒸発するだろう。
呪文を唱える最中は、最強の剣士である山岡君がフォローし、傷を負っても海老名君が治してしまう……。
敵に回ったとしたら、悪夢では済まされないぞ……!
「あの、荒巻さん?」
「はっ?!いや、すまない、帰還するぞ!」
「「「「了解!!!」」」」
帰還したら、即座に、自衛隊に魔法教育の徹底を上層部に直訴するぞ……!!
アメリカ映画らしい、面白黒人主人公、陽気なデブ、引っ込み思案なガリ、厳格な上司という完璧な布陣。
ドタバタコメディ感が実に王道。