「日本にズームアップ!はい、と言う訳でね、次の議題に移ります!」
《亜人魔法技術》
「亜人の魔法技術についてです!こちらにも、専門家の先生をお呼びしています。日本AI総研の室伏慶太さん」
「はい」
《日本AI総研 室伏慶太》
「室伏さん、亜人のAI技術はどうですか?」
「松山さん、2045年問題という言葉はご存知ですか?」
「いやー、知らないですね?その頃には僕、生きてるか分からないんで」
笑い声が上がる。
「2045年問題とは、簡単に言えば、2045年までに人間を超えるAIができるかもしれないという説です」
「えっ、てことは……」
「はい、つまり、少なくとも、亜人国家の技術は20年以上先を行ってる訳ですね。ここで恐ろしいのは、その完成度です。このVTRをご覧ください」
VTRが流れる。
内容は、アメリカ、ボストンにある、世界最高峰のロボット研究所のロボットの様子だ。
「凄いですね!」
松山は嘆息する。
「一方で、こちらが、亜人国家が作ってきたリビングドールのプロモーションムービーです」
VTRが流れる。
VTRの内容は、人間サイズの球体関節人形であるリビングドールが、フリフリのドレスを着て、人狼族の男性と優雅にダンスを踊るものだった。
「これは……」
松山は声が出なかった。
アメリカの最新ロボットよりも滑らかに、繊細に動き、表情すら変える。
年頃の少女となんら変わりのない美しい人形に、松山は目を奪われた。
「……とまあ、技術力が段違いなんですよね。アメリカの最新ロボットよりもスムーズに動く人形ですよ?動力といい、アクチュエータといい、もう訳が分かりません」
VTRを見て度肝を抜かれた一同。
と、そこに。
「えー……、今回は特別に、番組の撮影のために、リビングドールを借りてきたそうです!」
と梅田。
「「「「ええー!」」」」
驚くゲスト達。
「実際に見せてもらいましょう!どうぞ!」
「こんにちはー!」
「「「「おおー!!!」」」」
会場の一同は、美しい球体人形少女に驚きの声を上げる。
日本の48人くらいいる量産型アイドルとは比べ物にならない、西洋系の、「人形のように美しい」少女。
「クロイツ型リビングドール女性タイプの78号でーす!」
「す、凄え……」
ゲスト達が、リビングドールのあまりの完成度に若干引いていた。
「実は人間の特殊メイクなんじゃないですか?」
と松山は言った。
「松山さん、握手しましょう?」
「え?ああ、はい……、うわ、あったかいし柔らかい!やっぱり人間?」
「えい」
カショッ。
という軽い音と共に、リビングドールの肘から先が取れた。
「うわあああああああ?!!!!」
松山は悲鳴を上げて、リビングドールの腕を落とした。
「ああっ、酷いです!私の腕、落とさないでください!」
リビングドールは、腕の断面をカメラに見せ、接着した。
「頭も取れますよ、ほら!」
カポッ。
頭を取ったリビングドール。
「おおぉ……、本当だ……」
ゲスト達はドン引きだ。
「えー、それだけでなく、リビングドールはチューリングテストをするまでもなく、知的な存在だと分かります」
と室伏。
チューリングテストとは、AIが知的かどうかを判断するテストである。
「じゃあ折角ですから、みなさん、78号さんに質問とかしてみてください」
梅田が言った。
それにより、ゲストが次々に質問する。
「お名前は?」
「まだありません。購入された方につけてもらう予定です」
「特技は?」
「紅茶を淹れるのが得意ですよ!」
「趣味は?」
「購入してくれたマスターのお役に立つことですが……、今はまだマスターがいないので、この世界について勉強することが趣味ですね」
聞かれた質問に対してスラスラと答えていく78号。
78号はそのまま、簡単な機能の説明や、買取に必要な金額やホームページアドレスを紹介した。
「……と言う訳で、妊娠機能もあります!」
「それは最早、人身売買では?」
「次の議題はこちら!」
《ファーストエイジ》
「ファーストエイジの子供達についてです!」
梅田が言った。
「ファーストエイジって何ですか?」
松山が尋ねる。
「ファーストエイジとは、日本の魔法使いの最初の世代のことですね」
梅田が答える。
「勇者である鎧氏が、『何となく暇つぶしで』近所の子供達に魔法を教えて回りました。その子供達が数年間修行して、今や、鎧氏が言うには、一端の魔法使いになっているそうです!」
と、梅田が続けて答えた。
「「「「おー!!」」」」
ゲストから驚きの声が上がる。
「ってことは、若手のホープですね!」
「今日は、そんな土井中村改めあかつき街にレポーターが行っていますから、VTRを見ていきましょう!」
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「どうも!レポーターの大河原です!現在はあかつき大学附属高校に来ていまーす!」
「「「「イェーイ!!!」」」」
「生徒さん達は元気いっぱいですね!君、名前は?」
「市川春人です」
「市川くん、少しインタビューしても良いかな?」
「構いませんよ」
「では……、ファーストエイジのみんなは、いつ頃から魔法の勉強を?」
「五年前からですね」
「一日どれくらい魔法の勉強をするのかな?」
「学校での魔法の勉強と、部活での魔法の練習、自習とあって、合計して六時間程ですかね」
「六時間!長いですね!」
「プロのスポーツ選手だって、一日の、起きている時間の少なくとも半分はスポーツの練習に費やすはずでしょう。生半可な覚悟ではプロになれませんから」
「プロも何も、ファーストエイジのみんなは既にプロなんじゃないかな?既に、鎧氏からお墨付きをもらっているらしいけど……?」
「はぁ……、お墨付きと言うのは、『最低限、魔導師と名乗れるレベル』でしかありません。嶺二師匠や、その奥さん達と比べたら、俺達なんて足元にも及んでませんよ」
「またまた、謙遜が過ぎますね!」
「……『魔導師は、物理法則を超えられて始めてスタートラインだ』。師匠の言葉です」
「はあ……?」
「ちょっと火を出したとか、ちょっと水を出したとか……、そんなのでは、魔導師として認められません。物理法則と言う枷を破ってこそ、始めて魔導師の入り口に入れるんですよ」
「はあ……」
「……まあ、とにかく、俺と師匠とでは、蟻と巨人程に格が違う、とだけ」
「な、なるほどー!謙虚な姿勢ですね!こちらからは以上です!」
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その後も、VTRは、あかつき大学附属高校の授業や部活の様子を放送した。
「いやー!凄いですね!」
松山が言った。
「こんな教育がされてるんだな!」
「魔法使いが日本に現れてどうなるのか、楽しみですね!」
ゲスト達が言った。
魔法バブル。
魔法使いの存在。
今はまだ、一部の知的階級の高等技術である。
しかし、いずれ、あらゆる人々に魔法の力かもたらされたら?
必ずいるはずだ。
魔法を悪用するクズが。
そんな『魔法犯罪』に対して、世界はどのようにして対抗していくのか。
……「見ものだな」
鋼の勇者が呟いた。
なろうのランキング入り作品巡回してるんだけど、あまりにもつまらなくて吐血したわ。