すんませんでしたー!!!
さて、諸君は、徐々に奇妙な冒険という、少年ジュンプの漫画をご存知だろうか?
あれの第3部では、悪の吸血鬼DUOを追って、主人公達がエジプトに行くんだよ。
だが、エジプトでは、薄汚れた乞食のガキが「バクシーシ」……恵んでくれ、と大量に群がってきて、主人公達が辟易とするシーンがある。
俺は確かに、漫画を読んで、エジプトの情勢や歴史について軽く調べたりした上で、「コミック特有の誇張表現じゃあないのォ〜?」と思っていた。
だが、実際に、こうしてエジプトに行ってみると。
『恵んで!』『日本人、恵んでくれ!』『ペン買わないか?75ギニーだ!』『写真撮ってやる!50ギニーだ!』『恵んで!』『子供がいるんだ、恵んでくれ!』『誰だ?!足を踏んだやつは!』『恵んでくれ!』
「あー……」
コミックもあながち間違っていないことが分かる。
俺は、魔法で斥力を発生させて、群がる物乞いを押し出して、街の中に入る。
ここはカイロ、エジプトの街だ。
さて、まずは芸術品だ、芸術品を見せろ。
俺はカイロの博物館に行く。
もちろん、怪しげな私服警官もバリバリついてきているがスルー。
「うーん?まあ、五割か」
魔道具の割合が。
片っ端から起動させて、データを掻っ攫う。
ほうほう、この形式は古代人の遺跡でよく見るタイプだな。
慌てふためく私服警官を横目に、ラムセス二世のミイラを見に行く。
「ん?」
ミイラを包んでいる布に何か書いてあるな。
ええと……?
『我と妻のネフェルタリを蘇らせよ。さすれば、100デベンのオリハルコンを授けよう』
「……え?マジで?!」
えーと、1デベンは約90グラムだから、9kgくらいのオリハルコンは……、大体、亜人国家での値段は九百億ドグラマ……、九百億ドグラマ?!!!
たかが蘇生で九百億ドグラマ?!!!!
ほぼ欠けてない死体の寿命による死亡の蘇生と若返りなんて、一億ドグラマで十分だ。
ネフェルタリは死体のミイラが二割くらいしかないが、それでも五億ドグラマもあればいける。
死体なしでと言うなら百億ドグラマは覚悟しなきゃならないが、死体ありなら、蘇生に必要なコストはガクンと減る。
流石はファラオだ、気前の良さが違うな……。
じゃあ、折角だし、蘇生するか。
オリハルコンはいくらあっても困らないからな。
「『リザレクション』」
『ん……』
ラムセス二世。身長は俺と同じくらい、年齢は18歳程に調整、赤い髪、赤い瞳、赤銅色の肌。鋭利な見た目の色男だ。
『あ……』
ネフェルタリ王妃。身長は150cm以下、年齢は18歳程に調整、黒の長髪、金色の瞳、赤銅色の肌、優しげな美女だ。
ファラオは、自分を覆う強化ガラスを魔法でぶち破り、出てきた。
そして、すぐ隣のネフェルタリ王妃のいる強化ガラスを吹っ飛ばし、ネフェルタリ王妃と抱き合ってキスをした。
『我が愛しのネフェルタリよ、再び会えるとは、なんと嬉しいことだろうか!』
『ああ、あなた……!』
ふーむ、裸の美男美女が抱き合うシーンとか、売れそうだな。もちろん、モザイク処理してあるが。
ああ、撮影してるぞ。
二、三分抱き合っていた二人をなるべく見ないようにして、跪いて待つ。
そして、偉大なるファラオからのお言葉を賜る。
『面を上げよ』
俺は、古代エジプト語は流石に分からんから、失礼して翻訳魔法を使って話しかける。
「はっ」
『我は、ウセルマアトラー・セテプエンラー……、ラムセス二世である。貴様が我をドゥアトより呼び戻した魔導師か』
ドゥアト、冥界のことだな。
「はい」
『ふむ……?そなたは、我が国の者ではないな?ヒッタイトか?』
「いえ、ここよりもずっと東にある、日本から来ました」
『ニホン……、知らぬ国だ。まあ良い、大義であった。早速、褒美を与える』
おお、空間魔法を使えるのか。
オリハルコン9kg、確かにもらったぞ。
契約完了だ。
『それで……、今は我が死してから、何十年経った?』
ふむ……、契約は終わったが、まあ、めちゃくちゃ余分に対価をもらってるしな。
暫くは付き合ってみるか。
一週間くらい。
「ファラオよ、言い難いのですが、今は御身が身罷った時から三千二百年の時が過ぎております」
『何と……』
ラムセス二世は驚いている。
まあ、普通の反応だな。
『では、もう一つ教えてくれぬか。……エジプトは、いつまで残っていた?』
ほう。
凄えな、この人は。
永遠に続く国などないと理解した上で、いつまでエジプトが続いていたのか聞いてるのか。
「御身が身罷られてから、およそ九百年ほどは。それから、二千三百年程他国に支配され、七十年ほど前に主権を取り戻しました」
『ふむ……、成る程。では、今のファラオに会いたいのだが』
「今はファラオという文化が残っておりません。元首は大統領と呼ばれる政治家で、今のエジプトにおきましては、軍事政権の独裁でございますな」
ラムセス二世は、顎に手をやり考え込む。
『三千二百年も過ぎると、世界はまるきり変わるものだな。魔導師よ、対価は支払う。だから、我らに、今の世の中というものを教えてはくれぬか?』
ふむ。
「ええ、構いませんよ。少なくとも十日程はこのエジプトに滞在する予定でしたから、教えられることは全てお教え致します。それと、対価については、既に大量のオリハルコンをいただきましたので、暫くは御身に尽くさせていただきたいと思います」
『ふはは、無欲な奴だな!では、早速街に出るぞ、案内せよ』
「はっ」
まあ、わりかし良さそうな人だし、ちょっとくらい仕えても良いかなー。
「その前に、お召し物をご用意致します」
『む、そうだな』
ヒエログリフは読み書きできるので、ヒエログリフで服の着方を紙に書いて、服と共に渡す。
ファラオには黒のジャケットを、王妃には黒のワンピースを。
『ふむ、今の服装とは洗礼されているのだな。恐らくは、他の国の文化の影響だろうな』
流石はファラオ、聡明だ。
そして、ファラオと王妃が着替え終わり、博物館の外に出ると。
『『『『止まれ!!!!』』』』
軍隊の到着だ。
『む……、どう言うことだ、魔導師よ』
「恐れながら、ファラオにご説明しますと、今のエジプトには魔法が失伝しているのでございます。偉大なるファラオの復活を理解し得ない兵士達が、武器をこちらに向けているのです」
『何とも無知蒙昧なことか!』
ファラオは、怒りを露わにした。
そして、魔法を唱える。
『「我が言葉を翻訳せよ!」』
うっわ!金言魔法だ!凄えな、めちゃくちゃ使いづらいのに!
金言魔法ってのは、呪文や魔法陣を使わずに、思考と言葉で魔法を制御する、最も原始魔法に近い魔法だ。
極めて高い集中力がなければ扱えない。
めちゃくちゃ難しい魔法だ。まあ、俺も使えるけど、制御が難しいから使おうとは思わない。
そして、翻訳魔法を使ったファラオは、軍隊に呼びかける。
『我は、ウセルマアトラー・セテプエンラー……、ラムセス二世である!!!この魔導師により、妻と共にドゥアトより呼び戻されしファラオである!』
ぽかんとする軍隊。
『「控えよ!」』
全員が、金言魔法により、跪かせられた。
『行くぞ、今のエジプトを見て回る』
「はっ、仰せのままに」
ストック
メガテン:10
人外転生:4
核崩壊世界超能力もの:8
スペースオペラ:5
ダンジョンポストアポカリプス:5
帰還勇者:15くらい
クラフターファンタジー転生:4