前回の炊き出し動画について、世界各国から様々なコメントが来ていた。
『助けられるのに何故助けなかったんだろう』
『助けられるなら助けろっておかしいだろ』
『We are forced to choose how to interact with Superman in reality.』
『He is not a superman. There is no obligation to save everything.』
『十分に頑張ったと思う』
『自衛隊に救助活動を任せたのは正解だった』
『あり得ない、助けられるなら助けなきゃならないだろ』
『跡部政権の傀儡だ!!!跡部腐敗政治の点数稼ぎ!!!』
『人助けして文句言われるとかかわいそう(小並感)』
まあ、賛否両論あるな。
ネットの書き込みなんて、便所の落書きのようなものだ。
俺は全く気にしていない。
確かに、SNSは新しいメディアなのだろうが、人間はこれを使いこなせるほどに成熟していないんだよな。
ネットリテラシーが育っていない。
平気でデマをぶちまける奴もいるし、信頼できるとは言い難い。
だが、オールドメディアのような、行き過ぎた偏向報道などはすぐに指摘される。精査されていない情報の海であるという印象だ。
これからの人間は、この情報の海から、真実を探せるかが重要になると思っている。
はー……。
二十万年も何やってたんだ、人類。
基本的に、あっちの亜人は、種族にもよるが、十万年でそれなりに洗礼された形の国家になってたんだがなあ。
例えば、獣の国ベスティエは、ローマンコンクリートのような石材と、木造の街並みで、識字率もほぼ百パーセント、義務教育は六年間で、国民の学力も地球の先進国並に高い。
コンクリートと鉄筋の、ビルとローマ建築が融合したかのような建物が多く、魔法投射式立体映像の掲示板の前で先物取引をする獣人の姿をよく見る。
スマホみたいに小型の魔導書を持っててな、それで魔法決済をしてるんだよ。
だから、基本的にキャッシュレスだぞ。
VRゲームも実用レベルだし、単純労働は全部ゴーレムがやってる。
あと生命に関する魔法もあるから、金を積めば少なくとも数万年は生きていられるし、不慮の事故で死んでも生き返れる。
ガンとか遺伝子に関する病気も根本的に治療できるし、欲しい臓器だけをクローニングして移植とかも余裕。
移動には、排泄を制限したり、寿命を延ばしたり、速度を上げたりと、調整された人工生命であるホムンクルスの動物が活躍している。
モンスターのペットを飼って、マイカーならぬマイ馬車を持って、4LDKくらいの家に住むのが一般的な家庭で、海外旅行や、観劇、定期的なスポーツを楽しんでいる。
獣人は基本的に、面子より誠実さを優先する傾向の民族だから、下らない理由の争い事はないのだが、利益のぶつかり合いなどになると裁判をする。
裁判の他にも決闘制度もあるから、殴り合いで決着をつけたりもする。
意見の食い違いで喧嘩も良くするが、人格攻撃はしない。
年金制度はないが、少額のベーシックインカムがある。
人気の職業は兵隊や武闘家。
少年少女は皆、四年に一度の大武道大会に出て優勝することを夢見て、武術を身につける。
量子コンピュータのようなものが実用化されていて、宇宙開発もやった。
犯罪率も低く、死刑は一応あるが、数百年間執行されていない。
基本的に、重い罰は亜人国領域からの追放だ。
亜人国領域から追放された亜人が、切羽詰まって人間国家に襲いかかる盗賊になり、それがヘイトを買っているのかもな。
そう言う落ちぶれた少数の獣人を殺せたからって、獣人の正規軍や戦士にも勝てると思い込んだ人間がちょっかいを出してきて、獣人はあまり殺害とかしたくないからとボコるだけで返す、と。
全くもって……。
なあ……。
亜人国家は複数の国の連合で、技術レベルはどこの国も大体同じ。
人口は本来なら増えるもんなんだろうけど、魔王との戦いでめちゃくちゃ死んだからなー。
つまりアレだ、亜人国家では、政府の決定は全て公開されて、SNSで共有されるんだよ。
そこら辺の中学生でも、自国の予算の大まかな使い道を理解しているくらいだと思って欲しい。
まあ、何万年も昔は、亜人も氏族の違いで殺し合ったそうだが、今はもう大人しい。
平和に暮らしている人外国家に対して、人間の進歩のなさには辟易する。
ここ二、三千年で急速に進歩したのは確かに認めるが、それまでマジで何やってたんだ?
そもそも、何故、亜人がこれ程までに早く進化したのかは、亜人の学者達の間でも常に議論されているが、基本的には三つの理由があるとされている。
一つ、動物ではなくモンスターから進化したから。
猿よりも高度な知能を持つモンスターは、その上で更に、生まれつき魔法が使える生き物だ。
魔力は万物に宿り、魔法が使える非人間的存在は全てモンスターと定義される、のだが……、そんなモンスターから進化した亜人達も、生まれつき魔力が扱える。
人間は、動物から進化したので、生まれつき魔力は扱えない。
その辺りが、魔法文明の進歩に大きな差ができる原因なのだろうとされている。
また、モンスターから進化したという点はあらゆる点でプラスに働いた。
身体能力の高さや知能の高さもそうだが、特筆するのは魔法の力があることともう一つ、食性が違うことだ。
基本的に、亜人は雑食なのだが、身体の仕組みは人間とは全く違う。
肉食系獣人種ならば、寄生虫のいる、臭みのある獣やモンスターの生肉や内臓であっても問題なく消化して栄養を補給できる。
草食系獣人種ならば、草食動物のように、その辺の植物から栄養を得られる。
吸血族なら血液を吸ってれば問題ないし、屍人族なら腐った死肉でも食える。
機械族なら油分なら何でも、妖精族なら数グラムの花の蜜で生きていけるし、淫魔族なら精液、龍人族や粘水族なんかはまさに語弊なく、何でも食べられる。
生命を維持することが簡単で、その上、一部の亜人は人間より長生きする。
二つ、分業が早い段階からできていたこと。
人類は、農作を始めたことにより、分業が進んだ。
それまでの、狩猟採取によるサバイバルの時代が終わり、専業農家、専業の兵士など、役割を分け合うことで、協力することを覚え、その日暮らしから未来を考えた生活ができるようになった。
しかし、亜人達は、そんな人間よりもずっと早い段階で、役割を分担して協力して生活していた。
何故なら、亜人は、あまりにも差がある種族だからだ。それぞれの種族の違いから、お互いに足りない部分を補い合い、進化をした。
肉食系獣人種は、発達した嗅覚と、しなやかな筋肉を持つ狩人だ。
ケンタウロスなど、草食系獣人種は、力が強く、体力がある、物資運搬の要だ。
鳥人種は、比較的安全な空を飛べるから、軽い物の運搬や情報の伝達をした。
鉱人、機械種は、極めて器用で、工業的な発展を促した。
森人種は魔法の発展に貢献したし、文化や思想も進歩させた。
魚人種もまた、魔法の発展を促したし、更に海中の様々な物資を、陸上の種族と交換して、亜人全体を豊かにした。
このように、分業が当たり前だった亜人達は、人間よりもずっと早く、協力して弱点を補い合うことの大切さを学んでいたんだ。
因みに、人間の国は、王国、帝国、共和国を中心に様々な国が大小数十国は存在するが、言語はバラバラ。
しかし、亜人達は何万年も前からずっと、統一された言語を話す。
とにかく、協調的に生きるという選択肢を選んだのが早かった。
三つ、多文化に寛容であること。
これは二つ目の理由に近いかもしれない。
亜人は、とにかく多種多様。全く違う種族同士が共同体として生きている。
だから、他種族に対して極めて寛容だ。
人間は、肌の色が違うくらいで弾圧して殺し合うが、亜人は、下半身が馬でも、腕が羽でも、目が八つあろうと、全部、「まあそんなもんか」で済ませる。
また、亜人には、チェンジリングと言って、両親の種族とは全く関係のない種族が生まれてくる現象や、奇形などの誕生もあるのだが、これも、「まあそんなもんか」で済まされてしまう。
亜人は、能力による区別はあっても、人種による差別はないのだ。
屍人族が死肉を食らっていても、淫魔族が取っ替え引っ替えセックスしていても、虫人族が共食いしても、全部、「まあそんなもんか」だ。
その、差別をしないという性質は、進歩という面では有効に働く場面が多い。
例えば、ダンジョンというものがある。
ダンジョンは、中にモンスターが住んでいる異次元空間で、資源の宝庫だ。
しかし、人間の国家は、モンスターがいるというだけで、排斥の対象となり、破壊される。
対して亜人は、「資源があるなら有効に使おう」と、ダンジョンを生かさず殺さず維持して、無限に資源を搾り取っている。
また、人間の国家は、モンスター=殺す、だが、亜人は、モンスターを養殖したり、観賞用にしてみたりと、とにかくなんでも有効活用する。
亜人はとにかく、タブーといったものが少なく、とりあえずやってみるという姿勢でいる。
……まあ、差別をしないんで、人間にも亜人社会並の成熟を求めて、余計なことを言ったりするところはあるんだが。
亜人からすれば、どうして差別をして、同族で争い合うのか全くわからないそうだ。
人間は、亜人を、悍ましいモンスターもどきと考えている。
すれ違うなー。
と、まあ、このように、亜人は概ね、この世界の人間よりも成熟している。
未来に生きる亜人と共に戦ってきた記憶を持つ俺からすると、人間が醜く争う姿が見ていられないんだよな……。
メガテン、やる気はないけどストーリーは好きなので動画勢です。