静岡で大地震。
まず、ネットに繋がったハンディカメラを用意。
どうやってネットに繋げているかというと、空間魔法で常にうちの有線LANに繋がるゲートを側に出すという力技で解決している。
そして、撮影メイドを呼び出して、緊急生放送開始。
「はーい、レイレイでーす」
手を振る。
『無事かレイレイ』
『生きてた!』
『大丈夫ですか?』
コメントをスルーして言う。
「今、俺は静岡に来ています。津波は邪魔だったんで吹っ飛ばしましたが、建物は倒壊し、インフラやライフラインは完全に停止してます」
街を撮る。
『酷え』
『最悪だ』
『撮ってる場合かよ』
「今回は、ユウチューバーとして、色々とやらせてもらいます。他のユウチューバーも、不謹慎な奴ならここに来て取材をするでしょうし、それなりにまともな奴なら募金したりするんでしょう」
最近は、新しい魔法の開発で、ある程度編集できるようになった。
人や声にモザイク処理をかけるくらいなら簡単だ。
生放送であってもだ。
要は、カメラに向かってくる光と音を歪ませるだけのことだから、容易い。
『レイレイはどうするんだ』
「俺は、被災地の人を撮影するつもりはないです。被災者の声も姿もモザイクをかけます。ですが、募金もしません。クズ共に中抜きされるのがオチだから。では何をやるのか?」
俺は手を叩いて言う。
「まあ、見てて下さいよ。ユウチューバーとして活動しますから」
自衛隊は……、道路が塞がっているから、来るのにはまだ時間がかかりそうだ。
割と優秀だし、数日後には来るだろうな。
それまでに、俺がちょっと動いてみるか。
「えー、まず、災害救助ですが……、やりません。できますけど。でも、それは自衛隊の仕事だし、俺が手を出して、どうして助けられなかったのかとか文句を言われたらやる気ゲージがマイナスになるので」
『そりゃそうだ』
『まあ、一応民間人だしなあ。民間人が災害救助に手出ししたりしちゃいかんわな』
『じゃあ何やんの?』
「取り敢えず、避難所にメイド部隊を派遣しました。メイド部隊が何をやるのかと言うと、こうです」
俺は、避難所の下田市民体育館に入る。
中は、地獄のような熱気が篭るサウナ状態だった。
しかし、体育館の外は直射日光で死ねる。
「『アイスジェネレータ』」
体育館の中空に、氷の太陽を生み出す。
氷の太陽は、注ぎ込んだ魔力の分だけ、冷気を振りまくという魔法だ。
本来はトラップなんかに使う術式だが、こんな風な使い方もある。
「あ……、すげー、涼しい!」
「本当だ!ひんやりする!」
「あー」
避難所の人々が驚いている。
『魔法の有効活用だ』
『凄え』
『気温くらいなら支配できるのか』
「……と、まあ、このように、冷気を振りまく魔法の氷を体育館に設置します。次、メイド部隊、行動開始」
「「「「了解致しました」」」」
メイド部隊が、タオルとミネラルウォーター、そして塩タブレットを配り歩く。
「因みにこのタオルと水とタブレット、魔法で増やしたものなんですけど、食品衛生法的にどうなのかはグレーだと思います。文句言われたら俺は逃げます」
『いや、やっちゃっていいと思う』
『非常事態だしなあ』
『食品衛生法的にOKなものをコピーしたならOKなのでは?』
「あ、それと、外に仮設トイレとシャワールーム、洗面台を用意します」
俺は指パッチンで建物を生やす。
うーん、やっぱり物質創造と無限水源、物質消滅の術式の並列ともなると割と高度で、俺も制御に指を弾くアクションが欲しくなってくるな。
『は?』
『なんやそれ』
『はぁ?』
「えー、これは俺が旅の最中に作った、仮設水場創造魔法、『クリエイト・バスルーム:ヒューマンエディション』です。中を紹介しましょう」
中に入る。
「ここは洗面台ですね。水を作る魔法でいくらでも水が出せます。中に加熱する魔法もあるのでお湯も出ます。あとは普通に鏡。ここを開くと無限に歯ブラシと歯磨き粉とマグカップ、カミソリと髭剃り石鹸、化粧水が出てきます」
『軽々しく無限って単語が出てくるけど、無限に物が出てくるって普通にやべーんだよなあ』
『排水とかゴミは?』
「排水は、物質を消滅させる魔法がかかった下水管に送り込まれて、完全に消滅します。ここの小さいゴミ箱も、物質を完全に消滅させる術式がかかっていますね。ああ、生命体は消滅しないように調節してあるので安全です」
『え、あの、その、核廃棄物とかも消せますか?』
「余裕ですが?」
『やべえよ、やべえよ……』
「えー、こちらも同じく、水とお湯が出るシャワーのユニットバスですね。シャンプーとリンス、ボディーソープは無限に出ます。申し訳程度の洗顔クリームもあります。あとトイレ。トイレはおむつと生理用品が無限に出ます。タンポンとナプキン。うちの嫁はみんなタンポン派です」
『サラッと下ネタ』
『急な下ネタやめろや』
「因みに化粧品関係はイルルが作った奴なので、俺は詳しくは知りません。でもなんか良いやつらしいですよ?ああ、それと、人が出て行けば、清掃の魔法が発動して綺麗に保たれます。こんなもんですかね」
と、軽く紹介を終えて。
次に行こうか。
メイド部隊はタオルと水とタブレットを配り終わったらしいので、仕事の追加。
避難民五百人程に対して、メイド部隊は五十人ほど呼んである。
「避難民の治療だ、行け」
「「「「了解致しました」」」」
このメイド部隊はメイド補給部隊から引っ張ってきた。
回復魔法はそれなりに使える。
熱中症で倒れた人や、落ちてきた家財などにぶつかって血を流している人、もうめんどくさいからなんか障害や持病がある人まで、片っ端から治していく。
健康なら医者が要らないと言う理論だ。
喜びの声を上げる避難民達をスルーして、次の作業。
「魔法式の電熱コンロと鍋、シンク、ウォーターサーバーを設置します。哺乳瓶と粉ミルク、洗剤とスポンジ、それにマグカップとティーパック一式を置いておきます」
「あ、あの、これは、使っても良いんですか?赤ちゃんがミルクを飲みたいみたいで……」
「ええ、どうぞ?」
このように、赤ん坊への対処も忘れない。
『魔法最高!』
『良いぞもっとやれ』
『多分本人は再生数のことしか考えてないんだろうけど、避難民からすればありがたいんだよなあ』
「それと魔法式バッテリーを配ります。まあ、携帯の充電でもすれば良いんじゃないですか?充電器も一通り持ってきました」
魔法式バッテリーの配布。
「最後に炊き出しをします」
メイド補給部隊は炊き出しもできる。
魔法で増やした日本の食材を、縮尺がバグってる巨大な調理器具で一斉に調理して、おにぎりと、だし巻き卵、鳥の唐揚げ、温野菜の簡単な弁当を配布。
無限にハウゲンダッツのバニラ、チョコ、ストロベリー、抹茶、クッキーアンドクリームが生成される冷凍庫も設置。
「美味しい!」
「ありがとうございます!」
「凄い……」
人々の感謝の声をスルーして、最後に。
「布団とタオルケットも配ります」
色々と必要そうなものを配る。
「因みにこれ、静岡の全域で、嫁とメイドと協力してやってます」
全ての避難所で同じことをやってます。
「さて、どうでしたか?これが俺の再生数稼ぎです」
『素晴らしい!』
『魔法使いにしかできない支援……、イエスだね!』
『こーれは勲章の一つでももらわんといけませんねえ』
さて、こんな感じで、自衛隊が到着するまで、子供に魔法を教えたりして暇を潰した。
もう十月なのに暑いなー。