突然だが、あなたは、能無しのルイズに連れられ王城にやってきた。
シュヴァリエ、の勲章を受け取りに行くらしい。
そんなもの、冒険者を雇って運搬させろよとは思うが、直接顔を出すのが礼儀だとか。
あなたには関係のない話なので、行く気は無かったが、ルイズがどうしてもとしつこくお願いするので、特に予定もないことだし、ついて行ってやった。
王城の警備はスカスカだ。
城のガード達は真剣な顔をしているが、ノースティリスのガードと比べると天と地ほどの差がある。
仮に、あなたの国が攻め込んだとしたら、半刻もしないうちに征服できるだろう。
侵攻側がパルミアなら攻め滅ぼすのに一日と言ったところだろうか。
門の前にいるガードなんてもう目も当てられないくらいに酷い。粗悪な鉄の装備、レベルも低い。多いのは数だけ。
あなたのこの国に対する評価が更に低くなった。
「まあ、ルイズ・フランソワーズ!城下を騒がせていたあの盗賊を討伐してくれたのですね!」
「はい!姫様の為なら、この私、例えどんなに辛い任務でもこなして見せましょう!」
だがまあ、しかし。
姫君は中々に美しい。
「そちらの頼もしい使い魔さんも、ありがとう。これからも私に変わらない忠誠を……」
瞬間、あなたの口は三日月の様に歪んだ。
あなたは神を超えた身であり、王である。
誰かに忠誠を誓うことなどあり得ない。
あなたは尋ねた。
お前の首を城門に括り付ければ、自分がこの国の王になれるのか?と。
「……え?」
「なっ、あ、あんたは……!」
そう言えば、ルイズには勲章をくれるらしいそうじゃないか、自分には何をくれる?何ももらえないならこの国をもらうが、と。
「え、えっと、ここで私を討ったとしても、母上がいますから、国はとれないと思いますよ?」
「姫様!こいつの言葉に答えなくて良いんです!こいつは気が触れているんですから!うげっ」
あなたは、ルイズを蹴り倒し、足蹴にしながら言った。
因みに自分は使い魔ではなく、この淫乱ピンクの御主人様だと。
「へ?あ?えっ?……あ、ああ、ル、ルイズ!使い魔さん、ルイズから足を退けて下さい!」
ふむ。
どうやらこの女は、蝶よ花よと育てられてきたのだろう。
現状を理解できていないな。
立場が分かっていない。
お前はまさか、闇に向かう終焉と呼ばれた冒険者である『あなた』よりも上だと勘違いしていないか?とあなたは呼びかけた。
「それは、どういう……?」
自分は神よりも偉大なものだ。跪け。あなたは宣告した。
「で、でも、私、トリステインの」
まさか、トリステインなどと言う木っ端が、自分と対等であるとでも?あなたは正直に言って格が違う存在だ。あなたは神よりも強く、王である。
「えと、その、分かり、ました」
なんだかよく分からない、と言った様子で、祈る様に跪く姫。
「がっ、ひ、姫様、こんな奴に頭を下げずとも、ごはっ?!!」
「ああっ!ルイズ!!ひ、酷いわ、何でルイズに暴力を?!」
あなたは、ルイズがあなたのペットであるからだと言った。ペットに主人が何をしようとも主人の勝手だと。
「そ、そんな!ペットと言うならば可愛がって差し上げて!」
ふむふむ、一理あるな。
あなたは、蹴り飛ばしたルイズの髪を引っ張り無理矢理立たせると、その唇を奪った。
「んんっ?!」
「ま、まあ!」
そしてルイズを乱暴に抱き寄せ、頭を撫でた。
「ル、ルイズは、使い魔さんを恋人にしたのかしら?で、でも、ルイズには許嫁がいたような」
あなたは、ルイズは自分の所有物であると宣言した。
「まあまあ、ルイズを自分のものだなんて!やっぱり、固い絆で結ばれているのね!使い魔さん、ルイズを大切にしてあげて下さいね!」
「い、や!放し、なさい」
ああ、大切にするとも。
あなたなりに、だが。
その後、何だかんだで、姫君から任務を押し付けられた。
もちろんあなたは断ったが、ルイズは受けた。
面倒なのでルイズに任せて離脱しようとしたところ、報酬を払うから手伝って欲しいと姫君に依頼された。
その額、三百エキュー。金貨三百枚。
既にあなたは、ロングビル、いや、本名はマチルダだったな、マチルダが売り捌いたノースティリス製の道具で、数十万エキューほどの金を手にしている。
今更そんな小銭で動いてやる必要はないが。
まあ、ぶっちゃけ今のあなたは暇だ。
と言うより、基本的に、冒険者は暇だ。
何者にも縛られない自由な存在と言えば聞こえはいいが、つまりは、自発的に動かなければ何も起こらないことを指す。
今回の依頼は、不貞貴族の検挙であり、あまり面白そうな依頼ではないが、それでも、魔物退治のようなルーチンワークとは違う分まだマシかとあなたは思い、依頼を受けた。
能無しのルイズは、一瞬で手持ちの資金を使い切った。
どうやら、この女は、簡単な算数すらできないらしい。
それとも、金は使ったらなくなるという概念そのものを理解していないように見える。
平たく言えば物凄い馬鹿だ。
あなたは、訓練場に通うなどの、為になることをするならまだしも、貴族感覚で馬鹿な金の使い方をしたルイズは愚かだと思う。
自分で金を稼ぐ能力がないくせに、使うことだけは一丁前。
ゴミクズも良いところだとあなたは吐き捨てた。
「あ、あんた、お金は?」
持っているが、愚かなペットに渡す分はない。金銭管理は自分の仕事だと宣言する。
「な、何様のつもり?!良いから、持っているんなら私に寄越しなさい!!」
あなたは、自分から何かを奪うものは、逆に身ぐるみを剥ぐことにしていると告げる。
「は?えぐっ?!!!」
あなたはルイズの腹を殴り、のたうちまわっているうちに服も持ち物も全てを奪った。
「か、はっ……、じょ、冗談でしょ……?!い、いや、やめてっ!!!」
下着の一枚も残さず服を剥ぎ取り、あなたは任務とやらに戻る。
不貞貴族をなんとかしろとのことだったが、貴族なんて大体皆何かしらはやっている。罪状は後付けで適当に刻めば良いだろう。
そう思って、あなたは歩き出した。
「ま、待って、あやまる、から。こんな、辱め、いや……!」
服を剥がれただけでしおらしくなったルイズが、人々の視線から隠れるように、あなたの外套を引っ張り、恥部を隠そうとした。
あなたの外套は丈夫で、伸びたり破けたりはしないが、許可なく触られるとイライラする。
「かひっ……?!あ、がぁ、あぁ?!」
あなたは、ルイズの首に縄を括り付け、ルイズを引き摺って歩いた。
その途中で出会った貴族を、デルフリンガーで切り刻んだ。
何故デルフリンガーなのかと言うと、斬れない剣の方が拷問には相応しいからだ。
錆びた剣の切れ味は最悪、目の荒いノコギリのように肉をこそぎ落とす。
お前は民を蹴り飛ばした。民を蹴るための足ならば、その足はいらないな。
お前は違法な徴税をした。数も数えられんなら、その目はいらないな。
お前は民を罵倒した。貴族らしい言葉遣いができんなら、その舌はいらないな。
あなたは、姫の許可証を掲げながら、依頼通りに、不貞貴族を処罰していった。
適当に難癖つけて切り刻むだけなので楽だし、楽しい。
もちろん、命まではとらない。
あなたは、自分の慈悲深さに涙が出そうになる。
めそめそと泣いているルイズを無理矢理立たせて、飲食店に入った。
「いらっしゃいま……、せ?え?」
さて、ルイズ。
能無しで、弱い、チンケなゴミ虫であるお前に、働くことの尊さを教えてやろう。
まあ、どの道、ノースティリスのあいつが暴れるだけの話です。