ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ひー。


39話 民宿開業

結局、半年程アメリカで映画の撮影を手伝った。

 

数千万ドルのギャラをもらって、俳優達と打ち上げのパーティーをしてから、日本へ帰る。

 

まあ、ちょこちょこ転移魔法でデモンズネストに帰って嫁とイチャイチャしていたので、寂しくはない。

 

土井中村に帰る。

 

土井中村は今、冬だった。

 

ゴウンゴウンと音を立てて動く除雪車と、除雪車の死角部分や屋根の上で雪かきをする住人達。

 

「おんや!嶺二さんでねか!アメリカから帰ってきたんかい!」

 

「おお!お帰り、嶺二さん!」

 

「嶺二さん、久し振りだねえ!」

 

「ははは、ありがとうございます」

 

歓迎してくれる住民達に挨拶して、俺は帰宅する。

 

結局、元民宿のデカい家は、メイドが管理維持しているが、まるで使っていない。

 

一応、内装は異世界風にしてあるし、部屋は綺麗にしてある。

 

だが、嫁は、20部屋くらいあるから好きな部屋を使って良いと言ってあるのだが、誰一人として使っていない。

 

まあ、デモンズネストにもっと広い私室があるから、当然っちゃ当然なんだが。

 

よし、なら、いっそのこと民宿をやるか!

 

ちょうど、さっき、村の青年団に相談されたのだが、この村には宿泊施設がないそうなのだ。

 

たまに、純粋に村の観光にやってきたり、やむを得ない事情があり、この村に滞在しなきゃならなくなったりする人がいる。

 

そんな人は今まで、農家の年寄りの広い家に泊めていたそうだ。

 

だが、防犯の問題などもあり、そう言ったことは控えたいらしい。

 

何故そんな話をされたのかと言うと、最近、物見遊山的にこの村を訪れる人が増えたからだ。

 

「じゃあ、俺が民宿を開きますよ」

 

「ええ?!良いんですか、嶺二さん?!」

 

「無理しないで良いのよ?」

 

周囲の人々はそう言ったが、俺は暇だし、料理は、食品衛生法の講習受けて、あとはバイト扱いの嫁とメイドにやらせれば良いし。

 

そうだ、折角だから、地元の猟師さんから熊や鹿などのジビエ肉を買い取り、地元の農家から野菜を買い、地元の漁師から魚を買い、美味しい料理を出すことをウリにしよう。

 

冬の年末の間は準備期間にして、年明けから営業開始だ。

 

うんうん、ユウチューバーはやっぱり、表向きの仕事が欲しいよな。

 

専業ユウチューバーは社会的な立場が悪い。

 

時代が進めばどうなるかはわからないが、今はまだ山師扱いだ。

 

どうせメイドが働いてくれるし、俺は責任者として存在するだけで良いだろう。

 

 

 

さて、民宿を開く前に、もう一つ問題が。

 

土井中村の子供があまりにも強くなり過ぎたと話題になっているのだ。

 

なんか知らんが、世界記録を大幅に更新したらしい。

 

さて、ここで単純な計算をしてみようか。

 

高校生の百メートル走は、大体、陸上部で12秒程。

 

つまりは、秒速8.33メートル程。

 

身体能力が1.5倍になるとしたら、単純に、速度も1.5倍で秒速12.5メートル。

 

身体能力だからな?1.5倍の体力、筋力、スピード、知覚、知能だ。

 

百メートルを秒速12.5メートルで走れるとすると、タイムは8秒。

 

因みに、世界記録は9.5秒。

 

まあ、つまり、そういうことだ。

 

土井中村の高校生が通っている、土井中村から電車で二時間の地点にある渡海町の県立山陽高校には、連日マスコミが現れ、センセーショナルにこのことを報道した。

 

確かに、なんの変哲も無い田舎の高校生がこれ程の記録を出すことは異常だ。

 

それに、記録が伸びたのは陸上競技だけではない。

 

チーム戦的な要素がある野球やサッカーなどは流石に優勝とまではいかなかったらしいが、極めて優秀な成績を残した。

 

個人競技の空手、レスリング、剣道、柔道、弓道などと言った競技では、インターハイで優勝を果たしたらしい。

 

特に、格闘技系は、まるで格闘漫画のような動きをする高校生が、強豪校を叩きのめしているのだ。

 

純粋に、高校生と言えども、身体能力が1.5〜3倍程に増えているとなると、まともな人間じゃまず敵わない。

 

例えば空手部は、最早ニンジャを殺す赤いアレみたいなムーブメントを決めたと、俺が魔力操作を教えた空手部の高校生は嬉しそうに伝えてきた。

 

通常、空手は、後ろ回し蹴りのような、威力が高いが扱いが難しく隙が大きい大技は控えるものだが、身体能力が爆上げされている土井中村の高校生は、カンフー映画のような魅せ技を難なく使いこなし、相手高校の心と骨をたたき折ったとのこと。

 

それにより、真偽はさておき、土井中村には何か秘密があるに違いないと声高に叫ばれ、過疎地域の土井中村に、多くの人が訪れるようになった。

 

土井中村の人々は、特に排他的と言う訳でもないが、観光地でもないのに、連日、知らない人々が村に集まるのは不安だったし、中には、村人にちょっかいを出してくるクズもいた。

 

土井中村としては、商店街や飲食店が儲かるので嬉しくはある。

 

しかし、宿泊施設がない土井中村に来られても困ると言うこともある。

 

複雑な思いを抱えている土井中村だが、それでも、俺が来てから生活はより良いものになったそうだ。

 

追い出される心配はなさそうだ。

 

 

 

取り敢えず、民宿に必要な資格は取れた。

 

年も明けたことだし、民宿を開こう。

 

名前は……、まあ、勇者で良いだろ。

 

自己主張マシマシだ。

 

さーて、ネットに公開して、と。

 

うわ、三秒で一ヶ月分の予約埋まった。

 

ちゃんと警告文読んだか?

 

俺は、面倒ごとを避けるために、警告文を用意した。

 

一つ、悪しき下心がある人は門前払いする

 

二つ、責任者は俺だが、実務は全部バイト

 

三つ、周辺地域に迷惑をかけたら追い出す

 

普通なら、何を上から目線なとか、お客様は神様だろう、とか言われそうだ。

 

だが、本来、客と店にどちらが偉いかなどと言う格差はない。

 

店には客を断る権利があるし、客には店を選ばない権利がある。

 

それに、始めから営利目的でやる訳じゃないしな。

 

有り余る金の使い道を模索しているだけだ。

 

明日から、数十人ずつ、土井中村にやってくるそうだ。

 

楽しみではないが、オープンの日くらいは顔を出そうか。




プロット作成した。

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