さて、三ヶ月の時が過ぎ、宝石類を売った金百億円から税金を引いた五十億円が手に入った。
その間に、嫁達が大体は日本のことについて覚えた。
一部馬鹿っぽい嫁もいるが、ああ見えて全員割とインテリだ。
そろそろ日本に降りても問題ないだろう。
全員を引き連れて、日本観光に行く。
もちろん、全員魔法で変幻させて人間の姿にするのを忘れてはいない。
前回は前知識がなかったから悪い。
今回はちゃんと、お前達は全員ファンタジーの産物、この世界ではあり得ない存在だと教えてある。
教えればしっかり覚えるので、今回は本当に問題ないだろう。
「レイジ君!人がいっぱいいるね!」
「駅前だからな」
ルシアをあしらいながら、携帯ショップへ。
うお、タブレットが一般化してる。
俺の頃はタブレットなんて黎明期だったのに。
俺も買おう。
最新式のタブレット携帯電話を俺名義で十三台購入。
全員に渡して、電話のかけ方を教え、アプリを色々と導入。
俺は俺で、消滅していたツブヤイターのアカウントを復活させ、知り合いをフォローした。
それと表向きに使う物件が欲しい。
十三人以上で暮らせて、寒過ぎず暑過ぎず、都会過ぎず田舎過ぎずの所がいい。
一応、この三ヶ月で免許は取ったんだが、十三人同時に乗れる車となると中型のハイエースになる。
中型免許が必要ってことだ。
中型免許を取るには、普通免許を取ってから二年が経たないと無理みたいだ。
六人乗りのミニバンは買ったが……。
兎に角、戸籍のない女十二人がヤバい。
田舎過ぎず都会過ぎずなところで目立たずにひっそりと……!
「なーに、レイジ?」
レイラがこちらを見つめてくる。
駄目だー!
うちの嫁達は女優なんて目じゃないくらいの美女ばかりだ!
目立つ!
髪の色とかも違うからな。
相当目立つぞこれは……。
かと言って魔法で髪を染めるのは……。
「イヤ!私この色が気に入ってるの!レイジも可愛いっていってくれたじゃん!」
「嫌じゃ。妾の美しい御髪を染めるなどいーやーじゃー!」
「アタシもちょっとやだかな……」
染めてくれない!
まあ、そもそも、顔が西洋系が多いから染めても無意味なのだが。
にしても俺の嫁はいい女ばかりだな。
銀色のショートカットと狼の耳と尻尾に手足。年齢は十六歳で、やんちゃな性格。全身に布と革のベルトを巻いた割とパンクな姿。伝説にも語られる獣人種、稀少かつ最強と言われる銀狼族の長の娘、ルシア。
青い肌に長い紫の髪、黒い羊のような曲がった角に尖った尻尾と蝙蝠の羽、黒い眼球に赤の瞳。二百歳、外見年齢は二十五歳程で、腹黒性悪。アマルガムという柔らかくて丈夫な金属の軽鎧と際どい薄着、護身用の魔剣を二本帯刀。魔人族の第一皇女、テレジア。
長く艶がある黒髪、八本の蛸の足と尖った耳。五百六十歳、外見年齢は十八歳くらいで、無口。黒ゴスっぽいドレスと海獣の骨でできた杖を持つ。弱冠五百六十歳にして、深海にある最も魔法に長けた亜人の国の最高学府にて、史上最高の魔導師の称号を得た蛸人族の大魔導師、オリヴィエ。
燃えるように赤く、癖のある長髪、鋭い牙と爪龍の翼と尻尾、鱗のある手足、そして頭の角。千二百歳、外見年齢は二十五歳程で、苛烈で好戦的。龍革の鎧と身の丈を超える大剣を背負う。戦闘民族龍人族の最強の戦士長、グロリア。
金髪に狐の耳と九本の尻尾。千六百歳、外見年齢は十三歳から二十五歳まで自在に化ける、ワガママな女。紅白の巫女服と日本刀、小太刀を帯刀。稀少な九尾族の巫女にして現人神、カエデ。
空色のショートカット、両腕は猛禽の羽で、脚は猛禽の脚、肌は褐色。年齢は十七歳で、陽気な性格。飾り布を巻いた民族衣装。鳥人族最速と謳われた姫君、レイラ。
水色のスライム、女の姿に擬態している。年齢は二十歳でぼんやりしている。擬態によりメイド服のようなものを着ているように見せかけている。粘水族の中でも、最も擬態が上手く、巨大化もできる、史上最も優れた粘水族の姫、ベータ。
白い髪をポニーテールにした、額に角、下半身が馬の女。年齢は二十歳で、几帳面でしっかり者。白銀に輝くオリハルコンの鎧、魔剣とランス、そして大盾。麗しき角馬族の女王、エリーゼ。
緑の肌、黄緑の緩やかな長髪、腰から生えた蔦のような触腕。年齢は千八百歳で、外見年齢は二十歳程、おしとやかな性格。薄い布のローブを身につけ、ユグドラシルの枝の杖を持つ。月の女神を讃える神殿から、最も多くを知る者、賢者の称号を得た天才、花人族、アウレーリア。
流れるような金髪と白く美しい肌、長い耳を持つ碧眼の美女。年齢は二千歳、見た目は十八歳程、優しげな性格。狩人のような革のブーツとベルト、露出が少なめの革のコートと短いマントに弓とナイフを持つ。森人族として狩の技、精霊を操る魔法に最も長ける族長の娘、アニエス。
赤い髪を二つに縛っていて、小さい身長、その割には強靭な筋肉、そして少し尖った耳と空色の瞳。年齢は五百歳だが、鉱人族故に十歳ほどの少女にしか見えない。頑固な性格をしている。丈夫な布の作業服にブーツ、革のベルトに工具、背中に大槌。鉱人族の若きホープにして、技術者として最高の称号デミゴッドを鉱人族評議会から授かった天才技師、エスメラルダ。
銀色の髪を片目が隠れるように伸ばし、6つの銀の複眼を持ち、黒色の蜘蛛の下半身、そして手甲のような腕に鋭い爪。年齢は八百歳だが、見た目は二十代前半くらい。飄々としている。胸を隠す飾り布と、腰にも飾り布、そして大鎌。虫人の中でも最も恐れられる蜘人族の女帝にして、死神そのものと名高いイルル。
うーん、有能。
こんな連中がいても怪しまれない物件……。
あるか?
うーん、裏のコネとかあれば、不法滞在外国人が住んでもバレない土地とか分かると思うんだけど……。
あ!
そうだ!
電話をかける。
「もしもし、熱海猛か?鎧嶺二だ」
『ああ、嶺二か。俺だ、どうした?』
俺の友達(?)の弁護士、熱海猛に電話をかけた。
「説明したとは思うが、俺の嫁は現状、不法滞在外国人だ。十二人の不法滞在外国人が一緒に住める物件とかあるか?金は……、十億まで出せる」
『それなら簡単だ、いくらでもあると思うぞ』
おお、流石は弁護士だ。
『俺の知り合いにそういうのに詳しい弁護士がいる。そうだな、三日後、俺の事務所に来てもらえるか?』
「おう。……にしても、不法滞在外国人に強い弁護士って何だよ」
『ああ、ちょっとアングラな人さ。普段はヤクザの顧問弁護士やってるらしい。その分、口も硬いし、裏方向に詳しい』
ほー、そんな奴がいるのか。
ドラマみたいだな。
「分かった、依頼料はどれくらいだ?」
『そうだな……、取り敢えず相談料に十万くらいでいいと思うぞ』
「そんなもんなのか?」
『裏の世界じゃがめつい奴は目をつけられやすい、ってことだろ』
「成る程な」
そして三日後。
「久留間啓介や、よろしゅうたのんますわ、鎧はん」
「よろしくお願いします、久留間さん」
握手を交わす。
うさんくせえな。
「あ、今、ワイの事胡散臭ぁと思いやせんでしたか?」
「はい」
「ははは!正直な人やな!……まあ、胡散臭いのは確かやね。でも、ワイは金さえキッチリ出してくれれば、キッチリ秘密も守りやすし、余計な詮索もしませんわ」
ふーん。
魔法で読心する。
『面白いお人やな……、若いのに堂々としとるわ。デカイ秘密抱えてそうやが……、こういう男は怒らすと一番ヤバいタイプや。我が身も大事、契約も大事。この人の秘密は詮索し過ぎたりバラしたりしたらアカンで〜!』
ふむ、合格かね?
「それで、うちはちょっと、表には出せない外国人が十二人いてね。どこか安全に暮らせて、かつ、それなりに交通面などが悪くない物件とかないですかね?」
「そうでっか、そうでっか!そういう物件探しはワイの専門ですんで!いやあ、多いんですよ、『人見知りの人』は!『自営業』の方とかがよく使いますね!」
人見知りの人は不法滞在外国人、自営業はヤクザ、のことだな。
「うちの人見知りさん達は全員俺の嫁でね。お上にごちゃごちゃ言われると困るんだよなー」
「分かってます分かってます!そういう人向けの物件、リストアップ済みですから、奥様方と見てってください!」
「ありがとうございます」
嫁達を呼んで物件を選ばせる。
「いやー、綺麗どころが一杯で羨ましいわ!」
「ははは、ありがとうございます」
そして、物件が決まる。
「レイジ、ここがいい!」
15LLLDDDKK、田舎の元民宿、デカイ風呂アリ……。
「うん、良いんじゃないか?」
「お決まりでっか?」
「ここで頼めますか?」
「ああー、ここですか!いや、お目が高い!お値段は張りますが元は高級民宿でしてね!」
決まり、と。
まあ、名前は覚えられなくても、種族で覚えて貰えば支障はなさそう。
今作は異世界スマホリスペクトです。