「ファーストオーダー……?とりあえずビールで!」
「兄さん、そう言うやつじゃないよこれ!」
ファーストオーダー、冬木市の町外れにポイされた凛太郎と立香。
「ラストオーダーまで後何時間だ?こうなったら俺はとことん飲むぞ!」
「兄さん……」
「いやこれ、アレだろ?所長って女が新人を歓迎してくれてんだろ?」
「そんな訳ないじゃんかー!新歓でマシュが死にかけるなんておかし……、そうだ!マシュ?!!」
「あ、はい」
「………………マシュが痴女に?!!!」
「ちっ、違います!!!」
デミサーヴァント。
その名の通り、半分が超人。
「キカイダーみたいなもんか?」
「ええと、キカイダーとは……?」
「変身したしキューティーハニーとかじゃない?」
「キューティーハニーとは……?」
困惑するマシュに自分が好きな特撮の話をし始める馬鹿二人。
「ええと、つまり……、半分が英霊で……」
「改造人間か」
「キャシャーンだね」
「「たったひとつの命を捨てて、生まれ変わったこの身体!キャシャーンがやらねば誰がやる!!!」」
「デーン!テレーン!」
「ダッ!ダーッダッ!ダーッ!ダーダーダーダーダーッダーッ!!!」
「えぇ……(困惑)」
「タツノコプロはテッカマンなんだよなあ」
「僕は王道を征く……、破裏拳ポリマーですね」
「あ、あの……、先輩方、真面目にやってもらえますか……?」
「あぁ?俺ァ最初っから真面目だよ。大体にしてなんだてめーは、生意気な乳しやがって」
普通にマシュの乳を揉んだ凛太郎。
「ひ、あ……、そ、その、や、やめてください!」
「ケチケチすんなよなー、デケェ乳なんだから揉まなきゃ損だろォ?」
この男はこう言うことを平気でやるタイプだ。
そもそも、ヤクザの下請けやりつつチンピラからカツアゲし、妹に寄生して暮らしているようなスーパーど腐れにセクハラはいけないなどと言う概念はない。
「おお、良い体してんなぁお前。ムチムチじゃんよ」
「ひ、ひぅ……」
「はいはい、そこまで!」
半泣きでされるがままのマシュから、凛太郎を引き剥がす立香。
「セクハラしないの!」
「良いじゃねえか、減るもんじゃあるめぇしよぉ」
「減りますぅー!乙女心が減りますぅー!」
「なぁーにが乙女心じゃボケェ!」
「あ、あの、私は、気にしてませんから……」
健気なマシュはそう言って、少し頬を染めた。
そうやって馬鹿やっている三人と一匹のすぐそばに……。
『カタカタカタ……』
スケルトンが現れた。
「先輩達!退がってください!」
「あ"ぁ"?何じゃワレ……」
『カタカタカターーーッ!!!』
スケルトンの群れは、片手に持った鈍器をめちゃくちゃに振り回しながら突撃してきた!
「やああっ!」
マシュは、先輩達を守るため、盾を使ってスケルトンを薙ぎ倒す。
しかし……。
「あっ!いけない……、先輩達!逃げてくださいっ!」
凶器が、凛太郎に叩きつけられ……。
「お?やんのか?」
「ウワーッ!リアル・ホネ!兄さんガード発動!兄さんを墓地へ!」
「人をモンスターカード扱いとはいい度胸だなテメー!おるぁ!!!」
『カタッ?!!!』
鋼のような拳がスケルトンの頭蓋を砕く。
「なんだよ、そんなに硬くねえじゃねーか。行くぞマシュマロ!」
「えっ?!あっ、えっ、あー、はい!!!」
屍の山。
数十体ものスケルトンが砕かれて、屍の山ができた。
マシュは、立香のガードであまり戦わなかったが、凛太郎は守られる気ゼロで暴れ回った。
「えっと……、凛太郎先輩も、デミサーヴァントなのですか?」
「あぁ?俺は……、仮面ライダーだ」
凛太郎が適当なことを言う。
「何の仮面ライダー?」
立香もそれに乗る。こいつも大概、同罪である。
「王蛇」
「悪役ライダーは、良い……!!!」
兄妹でピシガシグッグッとした後、何事もなかったかのように移動を……、と、その前に。
『良かった!繋がった!』
ドクターロマンの通信である。
「ドクター!」
『うわあああ!!!マシュが痴女に?!!!』
「ち、違います!これはデミサーヴァントになったからで……」
『何だって?!……本当だ、この数値は!』
などと、会話をして。
結局何なのかと言うと。
『じゃあ、ここから二キロ先の霊脈に移動してくれ!健闘を祈る!』
と言うことであった。
「あの……、凛太郎先輩は、どこで魔術を学んだのですか?」
「西成」
「ニシナリ……?それはどこですか?」
「大阪だ」
「オオサカ?」
「オメェ、外人だもんな。流石に知らねえか。日本の西の方にある街だ」
「ニシナリという街は、魔術師が多いのですか?」
「いや、俺は西成で、たまたま、旅の魔術師を拾って飯を奢ったら、そいつから基礎的な魔術を習えたってだけの話だ」
「そうなんですか……。ですが、あの身体強化魔術は素晴らしいですね!」
「え?ありゃ単に殴ってるだけだ」
「え?」
噛み合わない会話。
と、そこに……。
「きゃーーーっ!!!」
女の悲鳴が一つ。
「誰かが襲われています!先輩達!助けに行きましょう!」
「えぇ?ダリィわ。お前が行けよ」
「えぇ……?困っている人がいるんですよ?!」
「知らねー。俺には関係ねー」
「も、もうっ!凛太郎先輩は酷い人です!」
「マシュ、兄さんは良いから、助けに行ってあげて!」
「はいっ、立香先輩!マシュ・キリエライト、吶喊します!!!」
マシュは、悲鳴の響いた方向に駆けてゆく。
ドクターロマンが言うところの特異点……、ここは冬木市という日本のとある霊地近辺。
ここが何故特異点なのか?現代の冬木市とやらで何が起きたのか?
マシュには、いや、『当事者』たるドクターロマン以外には誰も分からないが……。
少なくともマシュは、ここがどこであれ、自分がなんであれ、自身の善性に従って行動する。
「ターゲット発見!」
「いやあああっ!こ、来ないでぇっ!!!」
叫ぶのは……、カルデアの所長、オルガマリーその人。
だがマシュは、それを確認する前に、オルガマリーの前で剣を振り上げるスケルトンにドロップキックをキメていた。
デミ・サーヴァントと化したマシュの身体能力は凄まじく、先ほど凛太郎がほざいていた『仮面ライダー』もかくや、と言った威力の蹴りだ。
ちょっとした魔術師でも対処可能な程度の低級な死霊であるスケルトン如きが、仮面ライダーの蹴りを喰らえばどうなるか?
『ガカッ』
即ちそれは、爆砕!の一言である。
壁に思い切り叩きつけられたガラス細工のように爆ぜたスケルトン。
「ひ、ひいっ!な、なんなのよーーーっ?!!」
その爆音に腰を抜かしてひっくり返るオルガマリー。
かわいそう。
粉砕された骨の欠片にまみれ、半泣きで倒れている彼女を……。
「ああっ?!オ、オルガマリー所長?!大丈夫ですか?!」
マシュが介抱する。
「う、うーん……。マ、マシュ・キリエライトが痴女に?!!!」
「痴女じゃないですっ!!!」
さて、オルガマリーが回収された。
プライドの高く、無能を嫌うオルガマリーは、当然のようにキレ散らかした。
「なんで!よりにもよって!残ったのがあんた達なのよーーーっ!!!」
「す、すみません……」
マシュがしゅんとして謝る。
「あっ、その、あなたは良いのよ。私が言っているのはこいつ!こいつよ!」
オルガマリーの怒りの矛先は当然、凛太郎である。
当たり前の話で、自分のスピーチに、台車に乗せられながら遅刻して、挙げ句、セッタ片手に煙吹かしつつ現れたカス野郎を、クソ真面目なオルガマリーが嫌わない訳がなかった。
残念ながら当然である。
しかし、この凛太郎。
当然ながら、言われっぱなしではない。
オルガマリーの指を掴むと、ひん曲げた。
「ア"ーーーッ?!!!痛ったい痛い痛い痛い?!!!」
「よくわかんねえけどよお……、俺は俺よりチョーシくれてる奴が大っ嫌いなんだよ」
「ちょっやめ、離して?!」
「舐めてんじゃねえぞクソアマぁ!!!」
「ひぃっ!」
因みに、ここで描写しておくと。
オルガマリーは、身長162cmで体重53kgの、海外の平均的な女性だ。
一方で。
藤丸凛太郎。
この男は。
身長190cmにして、体重88kgで。
体脂肪は10%という、かなりガチめな大男だった。
彼女の知る男性と言えば、父たるマリスビリー、ドクターロマン、もみあげジャングル大帝(レフ)くらいのもの。
そんな彼らは、どちらかと言えば華奢な、ひょろ長い男だった。悪く言えば青瓢箪とも言えてしまう。
そこに。
バストが胸筋で100cmはありそうな筋肉ダルマの大男に。
『ドラゴンボールの人ですか?』みたいな体型のバキバキ直角腹筋男に。
デートアライブみたいな溌剌青年CVではなく、某グレートティーチャーのようなチンピラそのもののCVで。
その低く恐ろしげな声で、大声で怒鳴られたら、どうなるか?
「ひ、ひいっ!う、うわあああああん!!!」
結果は、火を見るよりも明らかだった。
「ピーピー泣いてんじゃねぇぞこのシャバ僧が!何とか言わんかいワレぇ!!!」
「ひいいっ!やだぁ、こいつやだぁ!!!怖いぃ!!!」
「ああっ!危険ですから離れないで下さい!所長?!所長ーーーッ?!!」
もうマジでこれ以上は考えてません。
初期鯖誰にするかも思い浮かばない……。
誰か助けて!
あ、所長はしにます。