ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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忙しい。


7話 連邦大尉の証言

私は、マルコ・ルーベスト。

 

サリアン惑星連邦の大尉です。

 

サリアン星系の通商惑星ロドリスに、サリアン軍本隊から出向している者です。

 

軍学校の士官コースをトップクラスの成績で卒業し、未だ小競り合いが続く帝国や同盟の宙域での巡回任務や実戦をこなし、来年には少佐への昇進も決まっている、自分で言うのもなんですが、エリート、キャリア組です。

 

しかし、ここで、私の、いえ、連邦全体の頭を悩ませる、恐ろしい出来事が起きました。

 

後に、『十二宮来航』と呼ばれることになるこの出来事はこの付近の銀河を揺るがす大事件でした……。

 

 

 

宇宙暦1661年4月16日、午前六時。

 

私が、ロドリス周辺のトムソーヤ宙域での巡回任務を終え、ロドリスの基地本部に帰り、寝ていた頃。

 

十二宮と呼ばれる、衛星級の大きさの超弩級艦、それが十二隻もワープアウトしてきたのだ。

 

まず恐ろしいのはその巨大さだ。

 

我々人類の現在の技術では、数十キロメートル級の艦を作ることで精一杯である。

 

正確に言えば、その気になれば百キロメートル級の艦を作ること自体も不可能ではないのだが、維持コストの問題や、単純に的が大きくなることなど、無駄が多くなるが故に、百キロメートルを超える艦は作らないものなのだ。

 

それがどうだ。

 

電子計測器での測定では、十二宮は、最大のもので八千キロメートルを超えるのだ。

 

連邦艦隊旗艦の超弩級戦艦ロサ級でも、全長八十キロメートル。

 

それが、八千キロメートルだと?

 

それも、十二隻?

 

馬鹿な、あり得ない。

 

そしてそれよりも恐ろしいのは、他国の直接的な侵略行為を防ぐ為に存在するワープ妨害の空間湾曲装置を突破して、ロドリスの目と鼻の先にワープアウトしてきたことだ。

 

ロドリスの空間湾曲装置は、首都星サリアンで使われているものと同じです。

 

つまり、それの意味することは、『十二宮はサリアンに直接侵攻が可能』ということ。

 

首都星に直接侵攻可能な衛星級の艦が十二隻現れた。

 

この報せを聞いた私は飛び起きて、即座に基地の中枢へ向かった。

 

 

 

「ホゼア司令!あれは……!」

 

「分かっている、今、保有戦力の八割を出した」

 

しかし、見れば分かる。

 

蟻と象のような差があるのだから。

 

ホゼア司令は絶対に先に手を出すなと厳命しました。

 

正当防衛を主張されては困るのはこちらです。

 

極力、刺激しないように、と。

 

そして。

 

「ッ?!全艦及びロドリス基地、システムダウン!ハッキングされています!」

 

「何だと?!防衛プログラムは?!」

 

「一秒以下で全て突破され、操作を受け付けません!」

 

「なんて事だ……!!」

 

ロドリスは通商惑星であり、経済の要である。防衛システムやネットワークのファイアウォールは完璧であり、基地の掌握など、惑星一つ分の演算機をフル活用しなければ不可能だ。

 

それも、一秒で掌握、他の戦艦を同時にハッキングなど、不可能だ!

 

『あーあー、もしもーし、聞こえてるかな?』

 

トーマス・クライマー率いる十二人の部下。旅行者を名乗っている。

 

旅行者だと?ふざけてる。

 

「ホゼア司令……」

 

「本人達がそう言うならばそうなんだろう。例え、衛星ほどの大きさの艦隊で移動していようとも、それだけでは罰することはできない。サリアンは法治国家だ、法に反していないものを不当に逮捕することはできんよ」

 

「しかし……っ!!」

 

「取り敢えず、入国許可を出そう。警備を強化しろ!」

 

 

 

小型艦で入港する、と言っておきながら、百キロメートル級の巨大な艦で降下してきた、自称旅行者達。

 

レアメタルを売却した後に、食事をし、その後に傭兵ギルドへ。

 

背格好も人種も、年齢もバラバラな十三人。トーマス・クライマーは、周りの部下達からマスターと呼称されていることからすぐに分かった。

 

上下関係は厳しくなく、長年の友人のように見える。

 

子供と思われるメンバーも、見た目に反して、幼い印象はあまり受けない。我儘を言ったり、迷子になったりなどの子どもらしい行動は見えず、天真爛漫さがある大人のように思えた。

 

あれで成人している種族なのかもしれない。

 

飲食店においては、それなりに上等な店に行っておきながら、不味い不味いと言い合っていた。

 

なんでも、『宝瓶宮』にある自然プラントならば、いくらでも天然物を口にできるそうだ。

 

確かに、あれだけ大きな艦ならば、内部に大規模な自然プラントを建設することも可能でしょう。

 

本当に十三人だけの団体ならば、自然プラントから天然物を毎日口にできるでしょうね。

 

そして、傭兵ギルドにおいては、はしゃいでいるトーマス・クライマーが傭兵になりたいと志願した。

 

確かに、傭兵家業を題材にした小説は多数存在している。子供ならば、冒険小説のような傭兵になりたいと言って親を困らせるものです。

 

部下と思われる十二人は冷静で大人びて見えますが、トーマス・クライマー本人は、幼稚さが見て取れる。

 

「なぁ、良いだろ、傭兵やりてーんだよ!雰囲気を味わって満足したら終わりにするからさあ!」

 

ふざけている……!

 

良い大人が、傭兵をごっこ遊びだとでも思っているのか?!

 

その上、十三人全員がサイキッカーであることも判明した。

 

サイキッカー……、超進化人類。人類の新たな可能性。事実上の人間の上位種。

 

サイキッカーであれば、どんなに弱い能力であれど、サリアンでの市民権が得られると言うのに……。

 

「市民権?まあ要らないっしょー」

 

天然物が三百億人に供給でき、生産能力をフル活用すれば二千億人を養えるだと?

 

馬鹿な、あり得ない!

 

それに、名誉あるサリアンの市民権が不要だと?!何様のつもりだ!!

 

くっ……、なんて奴らだ!

 

 

 

その後、また一日。休んでいた頃に、報告があった。

 

トムソーヤ宙域の海賊の殲滅……。

 

五百三十三隻の鹵獲。

 

しかも、どれも正確にブリッジを狙い撃ち。

 

これで、少なくとも、トーマス・クライマーは人命を理由があれば簡単に奪う冷酷さがあると証明された。

 

なんてことだ……。

 

つまり、サリアンであっても、邪魔になれば排除してくる可能性があると言うことだ!

 

それを急ぎ本国へ伝えたところ……。

 

『マルコ・ルーベスト大尉。形は問わない。本国の利益になる形で交渉をするように』

 

この私にお鉢が回ってきました。

 

ああ、ああ、畜生!!!!

 

これで私も終わりだ!!!!

 

一歩間違えば国が終わる。もしものことがあれば全て私の責任にして蜥蜴の尻尾切りだ!

 

……できるだけのことはしよう。

 

 

 

私は交渉の結果、人馬宮の武装の機能の一つと、彼らのサイキック能力についての情報を得た。

 

驚いたことに、十三人全員が特S級。

 

最高のサイキッカーだ。

 

必死になって上からの許可を取り、名誉市民の権利を与えることも伝えたが、彼らは首を縦には振らなかった。

 

しかし、サイキック能力の詳細、名前、身長と体重、顔などのデータをまとめて本国に送ったところ、私は二階級特進が決定。

 

何とかなりました、と。

 

 

 

はぁ、それにしても、サリアン名誉市民を断るとは……。

 

一体何を与えればこちら側につかせることができるのだろう?




fgoとモバマス書いてる。

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