ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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やる夫スレ面白いなー。

やる夫スレのおすすめとかあったら教えてください。活動報告の方で。


6話 愉快犯

「やあ、こんにちは。貴方がトーマス・クライマーさんですね?」

 

は?

 

「いや、斗升鞍馬ですけど」

 

「はい?あの、トーマス・クライマーさんですよね?」

 

あー?

 

ほーん。

 

この世界では発音の関係で斗升鞍馬がトーマス・クライマーに聞こえるのか。漢字という文化がないのかもな。

 

俺の知り合いに清美って女の人がいたんだけどな、その人、海外で名乗る度に「正気かお前?!」と突っ込まれたそうだ。

 

きよみ、は英語ではkill meに聞こえるらしい。だから、名乗る度に変な目で見られたそうだ。

 

俺も、この世界ではトーマス・クライマーに聞こえてしまうのだろう。

 

よろしい、ならばトーマス・クライマーでいい。

 

そう名乗ってやる。

 

「いかにも、私がトーマス・クライマーですぞ」

 

「ンッフ」「ぷふっ」「ちょっとマスターさん……」

 

トゥエルブサインは笑っているが止めない。

 

「クライマーさん、今回は素晴らしいご活躍だとか」

 

軍人……、ブルーの制服の男。詰襟に樹脂ボタンの上着と同じ材質のズボン。合成繊維っぽいな。

 

胸には銀のプレートに星が三つと小さな勲章がいくつか。

 

ふむ、そこそこ偉いやつ、伝令役にしては上の階級の男だな。

 

顔は二流俳優みたいな中途半端に整った顔に、大人しめのホストのような清潔感とオシャレさを両立された短めの茶髪だ。うーん、西欧系っぽいな。あと眼鏡をかけている。

 

「いえ、大したことありませんよ」

 

「ご謙遜を……。何でも五百三十三隻もの海賊船を掌握したそうではありませんか」

 

「いえ、制圧は一瞬でしたけど回収に一日かかってしまいましてね」

 

「……それはそれは」

 

「人馬宮なら百キロメートル級の小型艦なら、百万隻くらいまでならマルチロックオン可能ですから、ほんの五百くらいなら、眠ってても潰せますよ、ははは」

 

「……はは、それは素晴らしい」

 

うむ、おもむろに十二宮のスペックについて言及したが、もちろん威嚇だ。

 

舐められたくないからな。

 

まあ、多分だが、こいつらには百万隻も戦艦がある訳はないはずだ。

 

お前らの全軍でも叩き潰せるぞ、という軽いアピールをしておく、という話だな。

 

男は一瞬鋭くなった目を再び緩め、愛想よく話しかけてくる。いかにもできる男と言った雰囲気の四角いメガネに反して、とても下手に出ているな。

 

「お察しのことかと存じますが、こちらはサリアン惑星連邦政府直轄のサリアン軍本隊の者です」

 

「おや、サリアン軍の」

 

「自覚はお有りだと思いますが……、クライマーさんのことは本国でも有名になっています」

 

「それはそれは」

 

「そして我々はとある噂を耳にしました」

 

「ほう」

 

「貴方達、クライマーさんとその配下の十二人は全員、サイキッカーだと」

 

ふむ。

 

「事実ですね」

 

お、また目つきが一瞬鋭くなった。

 

「クライマーさんはかなり遠くの星系からいらっしゃった旅行者だそうですから、ご存知ないのかもしれませんが……、この辺りの星系では、サイキッカーは尊ばれるものなのですよ」

 

「それは初耳だ」

 

「そこで相談なのですが……、サイキッカーとしての能力を測定してみませんか?」

 

ふむ……。

 

「何故でしょうかね?」

 

「正直に言えば、保安の為、と言ったところです。サイキッカーと言うのは見えない武器を持っているに等しいですからね、もしもサイキック能力で暗殺などをされたら、防ぐのは大変難しいでしょう」

 

大変難しい、イコール、防げなくはない、と。

 

「ふむ、続けて下さい」

 

「もちろんメリットもあります。サイキッカーとして認められれば、小さな能力であれ、税金の減額などの措置を施させていただきます。サリアンの市民権も比較的簡単に取得できますよ」

 

ほーん。

 

「それは素晴らしいですねえ。では是非、その能力測定をしに行きましょうか」

 

「ありがとうございます。何時頃ならば御都合が合いますでしょうか?」

 

「今からですかね」

 

無茶振りしてみる。

 

「……分かりました。では、こちらのポイントで」

 

ほう、対応できるんだ、スゲー。

 

 

 

「マスター、何故こんなことを?」

 

「偉そうな軍人との交渉、能力測定……。楽しそうだろ?よくある展開だ」

 

「はあ……」

 

「俺が何を考えているか分からねえか、アリエス」

 

「そうですね」

 

「当たり前だ、俺は何にも考えてないからな」

 

「……つまり?」

 

「だから、何も考えてないんだって」

 

「あちらは明らかに私達を取り込みたい様子でしたが」

 

「分かってるよ?」

 

「では、何故?」

 

「俺みたいな何にも考えてない奴に、お偉いさん達が必死に媚びて右往左往するのが面白いからだよ。ふざけてるのさ、俺は」

 

「はあ……。マスターが満足であれば構いませんが」

 

「まあ、お前達に見限られたら、俺はさぱっと死ぬからさ」

 

「そんなことを仰らないで下さい。私達は永遠にマスターに仕えますよ」

 

そうかい。

 

 

 

さあ、早速能力測定とやらをやっていこうか。

 

「クライマーさんはサイコキネシスとのことなので、測定器に圧力をかけて下さい」

 

「これ?」

 

「はい」

 

俺は一瞬で五千トン程の圧力をかけて、計器を圧縮した。

 

「きゃあああ!!!」

 

爆発する測定器の数々。

 

「で、では次はこちらの鉄球を手を触れずに操作して、最も速く的に当てて下さい」

 

「ほい」

 

音速を軽く超えた鉄球は大気摩擦で溶けてしまった。

 

「きゃああああ!!!!」

 

音速を超えたときの爆音が響き、速度測定器がエラーを吐く。

 

「で、では、手を触れずにものを持ち上げ……」

 

「ほい」

 

俺は窓の外にある倉庫を持ち上げた。

 

「は、ははははは……」

 

 

 

ふむ。

 

『測定不能、特S級サイキッカーと暫定的に認定』

 

トゥエルブサインが帰ってくる。

 

「どうだった?」

 

「「「「特S級でした」」」」

 

ほーん。

 

「やるじゃん」

 

よし、じゃあ。

 

「帰るッかぁー!!!」

 

 

 

帰ろうとしたところ、さっきの軍人に捕まった。

 

「何ですかね?帰りたいんですけど」

 

「いえ、特S級とのことですので、お話が」

 

「まあ、聞きましょう」

 

俺は若干嫌そうに答える。

 

「特S級となると、千二百年前のアウグスト帝国建国の皇帝、『ゴットバルド』と、八百年前の伝説のバウンティハンター、『ゼロス』、そして四百年前の連邦の軍人、『クダナート』のみです。連邦は今回の新たな特S級サイキッカーを厚遇するべく、市民権の無料取得と、市民税の免除を……」

 

「あっ、良いです」

 

思いっきり苦い顔をする軍人。

 

ああー、気持ち良い。

 

俺はNOと言える日本人。いや、むしろ、相手が嫌がる選択肢を積極的に選んでくスタイル。

 

「市民権とかいらないです」

 

「……特S級サイキッカーとなりますと、軍部において佐官に任命され、給金は特別手当を含んで年十万リッチで」

 

「軍人になんかなりません」

 

「では、サリアン惑星連邦名誉市民への登録を」

 

「辞退しまぁす」

 

苦虫をまとめて数匹噛み潰したみたいな顔をする軍人。

 

楽しいねぇ。

 

「……ですが、名誉市民への登録は実に難しいことでして、この機会を逃すと」

 

「結構です。それじゃ」

 

帰る!

 

 

 

「ははははは!見たかよアリエス!あのエリートそうな軍人の顔!」

 

「はあ……」

 

「楽しいなー、真面目な人をおちょくるのは楽しいなー!」

 

「いつか痛い目を見ますよ?」

 

「上等だよそんなもん上等だよ。人をおちょくるのが大好きなんだ俺は」

 

就職活動でも圧迫面接に敢えて行ってめちゃくちゃ難しい質問を返しまくったり、会社も上司や取引先をおちょくってたらクビになった。笑える。

 

でもなー、俺は他人を、いや、お高くとまったムカつく奴をおちょくるのが大好きなんだ。

 

「この調子でどんどん遊んで、この世界を楽しんで、美女ハーレム作るぞ!」

 

「まあ、私達はマスターに従うだけですよ」

 

 




さて、今回の主人公のコンセプトは、『愉快犯』です。

今までの主人公のコンセプトはこんな感じ。

旅人:自分のことを一般通過旅人だと思い込んだ精神異常者

触手:触手フェチの変態博士

傭兵:破壊衝動と性欲食欲、人間の原始的な欲求に従って生きる魔王

真凛:超越者。神の視点から人間を見下ろす者

アイマス:最高のデザイナー、芸術の化身、教科書に名前が出る

ストリートファイター:偏屈喧嘩師

全知全能:快楽主義&利己主義の現実改変者が好き勝手やる

技師:その星一番の知能を持つ最高の天才、一般的な超越的存在の視点

ポストアポカリプス:超利己主義の天才経営者

みたいな感じです。

今回のスペースオペラは、『愉快犯、世界という名のちゃぶ台をひっくり返さないように注意しながら揺らしまくって遊ぶ男』と言えるでしょう。

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