ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ハンバーガー食いてえ。


105話 観戦しながらのティータイム

ダンジョンのモンスターは、「一ヶ月誰も入らないと〜」とか「人が入れば入るほどポイントが溜まり〜」とか、そんな条件も何もなしに増え、ダンジョンから出てくる。

 

ダンジョンのモンスターは『無条件で増殖』し、『無条件でダンジョンの外に出る』……。

 

いや、正確には、ダンジョン内で独自の生態系ができており、それに従って繁殖するから、『間引き』そのものは全く無意味という訳でもない。モンスターの総数が減れば、ダンジョンから出てくるモンスターも減る。

 

だが、仮に間引いても、モンスター自身が外の世界に餌を求めたりすれば、ごく普通に出てくるのだ。

 

では、モンスターがダンジョンから出て行くとどうなるか?

 

前に、強力なモンスターがダンジョンから出ることにより、周辺環境がモンスターから放出される魔力によって変質する……、『流出現象』という話をしたと思う。

 

強いモンスターなら少数出てきただけで『流出現象』は発生するが、弱いモンスターが大量に出てきても、『流出現象』は起きるのだ。

 

『流出現象』……、これは迂遠な言い方だな。

 

英語ではなんて言うか分かるか?

 

『Dungeonize』……、つまりは『ダンジョン化』だ。

 

そう、モンスターが溢れて、周辺環境が変化した地域は、実質的にダンジョンとなる。

 

ダンジョンの中と同じく、不自然な超スピードで動植物が育ち、地球に存在し得ない物質が無限に湧き出す。

 

更に言えば、一度流出現象が起きて変化した土地は、二度と元には戻らない。

 

はて?

 

何かおかしいな?

 

アメリカの見解では、石油の産地であり、石油の精製工場が建ち並ぶヒューストンを奪還したい!とのことだった。

 

しかし、一度流出現象が起きた土地は二度と元には戻らない。

 

うーん、おかしいなあ、どう言うことかなあ?

 

答えは簡単。

 

こう言うことだ。

 

 

 

ヒューストンの中心部に到達。

 

ヒューストンは、アメリカのエネルギー資源を一手に担う最大の石油都市だったのだが、今は……。

 

「こ、これは……!!!」

 

誰かが驚きの声を上げる。

 

それも無理はない。

 

そこら中に、魔石でできた鉱山ができているのだから。

 

水晶のようにキラキラと光る銀世界。

 

足元も、山も、全てが魔石。

 

どういうことか?

 

実は、流出現象には二つのパターンがある。

 

まず、強力な一個体の魔力が流出した場合。

 

この場合、その強力なモンスターの属性や性質によって、周辺環境が変化する。

 

例えば、ファイアドラゴンやフェニックスならば、周辺地域は無理矢理に火山に。

 

フロストドラゴンやフェンリルなら氷河に。

 

そのように、そのモンスターに住み良い環境に作り替えられる訳だ。

 

だが、別のパターン。

 

このヒューストンや、日本の四国中国地方のように、弱いモンスターが大量にダンジョンから出てきての流出現象の場合。

 

その場合は、その流出現象が起きた土地に近しい性質を持つ空間に代替されるのだ。

 

例えば、山岳は活火山に。

 

廃棄物処理場は毒沼に。

 

森林は樹海に。

 

ビル街は迷宮に……。

 

となれば、石油の採掘地であるヒューストンはどうなるか?

 

答えがこれだ。

 

魔石でできた山々の塊。

 

これらはつまり、ヒューストンに埋蔵されていた石油の代替ってことだろう。

 

魔石は一グラムで十円が大凡のレートなのだが、ここには魔石が何メガトンあるのやら……。

 

「灰は灰に、塵は塵に。エネルギー資源はエネルギー資源になるってことよ」

 

「無神論者が創世記から引用するのかい?」

 

「聖書とかラノベみたいなもんでしょ」

 

「オッ、侮辱ゥ〜!」

 

そんな話をしながら、特等席で冒険者の活躍を見物する俺達。

 

魔石の山の天辺で、椅子と机を出して、ティータイムだ。

 

お茶請けはスコーン。

 

クロテッドクリームとベリージャムをたっっっぷりつけて、しっとりめのスコーンをいただく。

 

「美味いんだよなあ……」

 

「クロテッドクリーム、これ完全にデブの味だよね」

 

「このジャム、どこのかしら?」

 

「ダンジョン苺で作ったやつだぞ」

 

「ふむ、美味いわね」

 

「む……、紅茶が……」

 

「紅茶は今は亡きマレーシア産の高級茶葉だぞー」

 

「うむ……」

 

駄弁りながら観戦。

 

「お、ボス出てきたぞ」

 

そう、ボス。

 

ダンジョンから出てきたボスモンスターだ。

 

『ケルベロス』……、レベル70か。

 

「レイドボスじゃん」

 

「いやこれくらいなら何とかなるでしょ。頭に『絶』とか『零式』とか書いてないし」

 

「絆強制オンラインの話はやめろ……!」

 

「そんな貴方に龍の探求10」

 

「グラがショボいからヤダ」

 

「ンモー!わがまま言っちゃってぇ」

 

「やっぱり、ファンタジーはオサレじゃなきゃ許されないんだよな」

 

あのスマイルマークみたいな虚無顔を張り付けたスライムとかが現実世界に湧いたらシュール極まりないだろうが。

 

MMOファンタジーゲームっぽいリアル造詣じゃなきゃ世界観が壊れるんだよ。

 

「まあ、それには同意するわ。子供向けのジャパニメーションみたいなモンスターと命懸けで戦うなんて、ビジュアルが最悪よね。やる気が失せるわ」

 

シーマが、ジャムを舐めてから紅茶を飲んだ。

 

ロシア流の紅茶の飲み方だ。

 

毎回思うけどこれって衛生的にどうなんだ?

 

だが、意見には同意だな。

 

「……そうか?俺は、もう少し可愛らしい見た目でも、良かったと思うぞ」

 

そう言ったのはヴォルフ。

 

こいつは見た目に反してこう言うこと言いやがる。

 

かわいこぶってんじゃねーよゴリラ野郎。

 

さて……、様子はどうかな?

 

……「うおおおおおおお!!!!」

 

おー、頑張ってるなー。

 

偉い偉い。

 

……「チェエストオオオオオオオッ!!!!」

 

おー、ありゃ《鬼武者》か?

 

「うわー、すっごいねアレ。世界一カッコいい童貞みたいになってるじゃん」

 

アーニーが拍手をしながら言った。

 

「多分、そのネタ今時の子には通じねーぞ?」

 

「名作なんだけどなあ……」

 

「ロボアニメ自体がね」

 

「まあそれはあるよね。最近はやっぱり、脳死萌えアニメだよ」

 

「社会人は疲れてるからなあ、燃えアニメは見れんのよな」

 

俺は燃えアニメの方が好きなんだが。

 

「因みに、好きなアニメは?俺はカウボウイビパップ」

 

「僕はバッガーノかな」

 

「甲殻機動隊かしら」

 

「銀河英雄伝記」

 

うーん。

 

「おいやべぇぞ、ここ、厨二病のおっさんしかいない」

 

「かなしいなあ」

 

「最近だとゴウルデンカムイが良かったわね」

 

「変態オリンピックやめろ」

 

「む……。よるキャン、良かったぞ……」

 

「「「えぇ……」」」

 

あれ見てんのかよ、ヴォルフ……。

 

あ、ケルベロス死んだ。

 




書かなければ。

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