ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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遅れたー!


102話 侍の戦場

ひゅうすとん、の奪還作戦に参加したおいは、夷人の指揮に従って、刀振り回したんじゃ。

 

あやかし共は、まあ、れべる四十くらいはあったじゃろ。

 

獣物のよなあやかしばかりじゃったな。

 

戦のやり方も知らんで、馬鹿正直に突っくんだけの阿呆じゃて。

 

真っ直ぐに突っくんだけじゃなく、えじこつせんとな。

 

そげんにチェストするだけで勝てる程、戦は甘くなか。

 

ちょっ、鉄砲を撃ってびびらすっと、泣っかたではっちくんじゃ。情けんなか。

 

そんなんで、ここらに天幕張って、明日の戦に備えて休むんじゃ。

 

けんども……。

 

「はーい、屑籠屋でーす!冒険者の皆さんの為に、わざわざ日本から出張してきましたー!」

 

………………うむ!

 

……ないごておるんじゃ、羽佐間どん。

 

「羽佐間どん」

 

おいは、羽佐間どんに声をかける。

 

「ん?ああ、《鬼武者》と《夢想神楽》か」

 

おいは、いっちゃん勉強できんが、ここが異国であるこつはうつっとる。

 

ここに来っまで、転移門を潜り、何日か車ん乗っとるんじゃぞ?日本からあめりかは、じょじょん、遠かとこいやんど?

 

「なしてここにおるんじゃ?」

 

「普通に転移して」

 

あー……。

 

「あっでなあ!」

 

「いやいや……、納得できる要素あった?!何が『なるほど!』よ!」

 

ん、相棒の命がなんぞ言うとるが……。

 

「阿呆、羽佐間どんはなんでんしがなっぞ」

 

「……まあ、羽佐間さんがなんでも出来るって言うのは同意するけど。でもやっぱり、驚くのは驚くじゃない!ここ、アメリカのヒューストンよ?!日本から一万キロメートルくらい遠いのよ?!」

 

一万きろめーとる……?

 

「一万きろめーとるてどしこばっかいじゃ?」

 

「どれくらいって言うと……、えーと……」

 

「日本一周が一万二千キロメートルくらいだぞ」

 

と、羽佐間どん。

 

「ほう、そんなんか」

 

日本一周が一万二千きろめーとる。

 

ここは、日本から一万きろめーとる……。

 

つまり……。

 

「ゆ、わからんが、遠かとこじゃの!」

 

「めちゃくちゃ遠いのよーっ!!!」

 

命……。

 

「景光、アンタ本当に分かってんの?!転移魔法ってのはね、移動距離に比例して消費する魔力の量が激増するのよ!」

 

命が言いたいこつ、おいはうつっとる。

 

じゃが……。

 

「羽佐間どんならできるじゃろ」

 

「……本当にその一言で納得できちゃう自分が悔しいッ!!!」

 

 

 

「で、俺が何でここに来たかって?」

 

「うむ」

 

「それはまあ、ほら……。イベントボス前には、薬草やら毒消し草やらを売る謎の商人がいるのが定番だろ?RPG的に考えて」

 

「あーるぴーじぃ……?」

 

なんじゃそりゃ。

 

「すみません羽佐間さん。こいつ、本当に機械とか分かんないんです。スマホはシニア向けで、パソコンやゲーム機なんて触ったこともありません」

 

横から命が口出ししてくる。

 

「えぇ……。本当に現代人なのそれ……?ま、まあいいや。ほら、アレだよ……、物語!小説とか、アニメとかだと、何故か都合がいいタイミングで、都合がいいキャラクターが現れるだろ?」

 

羽佐間どんはそう言うた。

 

物語……。

 

まあ確かに、物語なら、そげなこつもあるかもしれん。

 

黄門様が、なしてか、いっもかっも馬鹿太者と出会うが、ありゃおかしか。

 

そもそも、あげんずんばい馬鹿太者がおったら、お江戸は立ち行かんじゃろ。

 

「俺は今回、お助けキャラとして後方支援しに来たんだよ。暇だから」

 

「い、いや、暇て……。良いんですか、そんなことして?会社とか、天海街の運営とか……」

 

命が訊ねる。

 

「おっ、社会人エアプか?大切なのはトップじゃなくって運営機関だぞ。国だって、総理大臣が居なくなっても、官僚機関が無事なら、次の総理大臣が選ばれて再び動き出すだろ?それと一緒よ」

 

「は、はあ……」

 

「俺は既に、俺の会社を、俺が居なくても運営できるように調整してある。でなければ、喫茶店の店長なんていう道楽みたいな仕事はやらんよ」

 

「あ、道楽だったんですねアレ」

 

なんの話かまこち分からんのう。

 

「つまりなんじゃ?」

 

「羽佐間さんは暇だから遊びに来たんだって」

 

「ははは!相変わらずだの、羽佐間どん!肝ん太か!」

 

遊びに来た?

 

剛毅じゃな!

 

戦場に遊びに来れるとは、どひこ強えんじゃ?

 

羽佐間どんは、自分が死んなんて、いっちゃん思うとらん。

 

かった、羽佐間どんがいっすん本気を出せば、ここにおるあやかしなんぞ、鎧袖一触で蹴散らすじゃろな。

 

本来なら、こげなけすったよなこつすっ奴は打ったくられるんじゃがの、羽佐間どんは別じゃ。

 

羽佐間どんは強え。

 

強えから、横暴も堪えられとる。

 

「まあ、そんな訳で『屑籠屋』として出張しに来たんだよ」

 

ちょこっ目を離すと、羽佐間どんの前には、ずらりと出店が並んどった。

 

ぽーしょん……、水薬やら飲み物やらの自動販売機に、飲食ができる机や椅子。

 

羽佐間どんは、焜炉の前で串焼き肉を焼き始め、学校給食のような大鍋がいくつも並ぶ。

 

米の匂いが漂う大型の炊飯器と、平積みされた焼き立ての麵麭が麦の香りを風に乗せる。

 

他にも、武器弾薬やらが並べられ、本格的に商売をやる気でいるのが分かる。

 

「「「「まいどどうも!冒険者ギルドです!」」」」

 

冒険者組合から出向して来たらしい、亜人の職員共があやかしの死骸を運ぶ。

 

「カゲミツ・ヘシキリさん!こちら、モンスター素材の査定結果になります!お納めください!」

 

「ん、おお」

 

そう言ってくるえるふの良か稚子に、新日本円の札束とみすりる貨幣の入った革袋を押しつけられる。

 

ひぃ、ふぅ、みぃ……、五百万円ってとこかの。

 

まあ、最前線でいっちにっ戦こうての額とすれば妥当じゃろ。

 

「冒険者の皆さーん!屑籠屋の食事は美味しいですよーっ!米軍のレーションとかぶっちゃけ不味いですよーっ!」

 

「れいしょん?」

 

「レーションってのは、あれだ……、兵糧のことだよ」

 

ああ、あっでなあ。

 

兵糧か。

 

ようは知らんが、牛酪臭い麵麭やら、缶詰やらだそうじゃの。

 

極論、食れば何でん良か。

 

ぢゃっどん、美味に越したこつはなか。

 

美味えもん食れば、元気が出る。

 

戦意も滾る。

 

おいどんは、飯の良し悪しで戦意がなくなるような、柔な鍛え方はしちょらん。

 

が、周りの、普通の冒険者は違うじゃろ。

 

羽佐間どんは、人ぉばけすっがうめ。

 

ばけすっがうめ奴は、逆に、褒むっもうめぞ。

 

人を動かすんが得意なんじゃろうな。

 

おまけに商才もある。

 

算盤弾きがうめ奴は好かんが、羽佐間どんは、無知な人間を騙かすような真似はせん。

 

羽佐間どんは、銭が欲しい訳じゃないからのう。

 

ありゃ、あまい子じゃて。

 

てんごをすっのが楽しいんじゃろ。

 

根っかい、全部、『おふざけ』じゃて。

 

まあ、人様い迷惑をかけんしの。

 

かえっちゃ、皆、助かっとる。

 

さあて、折角じゃ。

 

何か買わんな。

 




死にてえなあ……。

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