「我々、クラッシャー隊は、エルガン・ローディック氏の指示を受け、次元獣や機械獣、ヘテロダインなど、様々な地球の危機に対して立ち向かっていく特殊部隊である」
「zzz……」
「……新台君、聞いているかな?」
「んあ?あー?聞いてるよ?クラッシャー隊は、エルガン・ローディック氏の指示を受け、次元獣や機械獣、ヘテロダインなど、様々な地球の危機に対して立ち向かっていく特殊部隊なんだろ?」
「……ふむ、聞いているなら構わない」
「旅人さん、寝ながら話を聞くとは、器用な真似をするな……」
「悪いな、赤木。俺達はサラリーマンで、正義の味方じゃないんだよ」
お、なんだか知らんが、ダイガードチーム解散の危機だ。
大変そうだね。
でも、この手の話は外野が手出しして解決する話じゃないだろうから、そっちはそっちで頑張ってね。
そうしている内に、クロウは、一回の出撃で200G貰うって契約をした。
「じゃあ、俺もそんなもんで良いよ。ぶっちゃけ、タダで働かされるのは腹が立つからってだけで、金がもらえるなら普通に働くし」
「分かった。よろしく頼む。しかし……、これでは、すぐに動けるのは、さやかさん、クロウ君、そして新台君だけか……。仕方がない、竹尾ゼネラルカンパニーへ依頼を出して、手伝ってもらおう」
「竹尾ゼネラルカンパニー?」
「宇宙の何でも屋だ」
その後は、赤木が離脱しようとするメンバーを説得したが、断られていたりした。
俺達に与えられた命令は、待機。
何かあるまで待っておこうって話だ。
クラッシャー隊に元からいたメンバーの人達は、宇宙で探索だかなんだか、別の仕事をしているらしい。それと合流するから、その人達が帰ってくるのを待つ訳だ。
甲児君は、部屋に篭って色々と思い詰めている。まあ、唯一の身内が亡くなって、色々と思うところがあるんだろう。そっとしておいてやることにした。
なので、俺は、クロウと赤木君と一緒に食事をすることに。
「すいませーん、厨房借りて良いですか?」
「はーい!どうぞー!」
職員さんに許可を取り、パパッとオムライスを作った。
「「……美味いっ!」」
クロウと赤木君は喜んでいる。
「旅人さん、料理上手なんすね!プロ並みですよ!」
一応、俺は、年齢的には赤木君より年上だと言うと、赤木君はなんか後輩っぽい口調になっていた。
「いやいや、赤木君もこれくらい出来なきゃモテないよー?」
「い、いや、モテるとか何だとかそういうのはまだ良いですよ〜!まだ若いんだし、相手なんて探せばどこかには……」
「そうやってまだ大丈夫!なんて思っている内に、三十代四十代と過ぎていき……」
「ぎゃーっ!怖い話はやめてくださいよー!」
「クロウはそういう、浮いた話とかないのか?」
「いやいや……、俺はそういうのは良いぜ。女は苦手だ」
俺と赤木君は一歩引いた。
「違うわ!ホモじゃねえよ!……そういう旅人さんはどうなんだ?」
「俺?俺はまあ、前の世界では二百人くらいの嫁さんがいたな。逃げたけど」
「「二百人?!!」」
「そうだよ。まあ、何というかこう、人間ではないんだけど」
「って言うと、宇宙人か?聞いた話によると、宇宙には巨人がいるだとかなんだとか」
「いや、うちの嫁はもっとオカルト系。その前の嫁は確か中学卒業したばっかりのちっちゃい子で、その前は妖怪の女の子で、その前はアマゾネスのお姉さんで、その前は本屋の看板娘で、その前は」
「「待て待て待て待て!!!」」
「え?何?」
「冗談だよな?」
「マジだって」
「えっ……、百人斬りって奴ですか?」
「覚えてる限りだと一万二千六百人は超えてるね」
「「す、すげぇ……」」
「ところで、旅人さんよ。お前、ソレスタルビーイングの紫のガンダムに狙われてたけど、心当たりはあるか?」
食後のコーヒーを飲むクロウが俺に訊ねた。
「ん?あー、えっとね、ちょっと頭の中を覗いたらバレちゃってさ」
俺も、食後のウォッカを飲みながら答えた。
「……頭の中を、覗く?」
「まあ、魔法みたいなもんかな」
「はあ、なるほど……。世の中には『ニュータイプ』みたいな存在もいる訳だし、おかしくはない、のか?」
「まあ、俺なんて大したことはできないよ。精々、死人を蘇らせたり、隕石降らせたり、邪神を召喚したり、他人を即死させたり、地球の裏側に転移したり……、そんなもんかな」
「バリバリ凄いことしてるんだが????」
そうかねえ……?
「俺の知り合いはもっとヤバかったからなあ……」
「いやいや……、旅人さんの世界、おかしくないか?」
「おかしくないよ、普通だよ」
ただ、定期的に敵性宇宙人やら怪獣やらが攻めてくるだけだよ。
そんな話をしていると……。
警報が鳴った。
「何だ?」
「集合の合図だ」
なるほど。
大塚長官から話を聞く。
「トライダーG7が、あしゅら男爵率いる機械獣軍団と交戦に入った!援護を頼む!」
とのことだ。
俺とクロウは普通に従ったが……。
赤木君達、ダイガードチームはいまいち、って感じだ。
さて、どうなるか……。
とりあえず出撃。
よく分からんけど、くろがね屋の店員の皆さんが、あしゅら男爵の部下達をボコボコにしてる。
うーん……?
『クロウ、悪い!俺、あっちの手伝いに行ってくるわ!』
よく分からんけど、手が足りないだろう。
機械獣軍団は、俺抜きでも対処可能だろうし、俺はこっちの対処をしよう。
『あっち……?そうか、くろがね屋さんの方の加勢か。分かった、頼む』
『おう。それと、あしゅら男爵にも喧嘩売ってみるわ』
そう言って俺は、アルトアイゼンから飛び降りた。
その落下中に。
「《加速》《英雄》《リジェネレーション》《ピオリム》《スカラ》《バイキルト》《スクカジャ》《ラクカジャ》」
バフを盛る!
バフモリモリは基本なのだ!基礎性能が低いとバフるっきゃないのだ!
俺みたいに素質も才能もないものはこうやるしか方法はないんだ。つまり、バフ盛ってハートを磨くっきゃない!きれいに磨くっきゃないんだ!
飛べ!俺!
「こんちわーーー!!!」
「「「「グワーッ!!!」」」」
なんか回転しながら叩きつける技!!!
あしゅら男爵の兵士を蹴散らしながら、ダイナミックにエントリーした俺。
「あ、女将さん!今日もお美しいですね!」
「お、おう……。加勢に来たのかい?手は足りてるよ?」
「ああ、いや、ここであしゅら男爵を仕留めておこうかなーって思いまして」
「ふむ……、まあ、やってみな」
「あ、それと、俺は人妻には絶対に手を出さない主義なんで、その辺は安心してください」
「そうかい」
「大体にして、女将さんに手を出したら、甲児君とシロー君に何で言えば良いのかって話になるじゃないですか。人間関係ギスるの嫌なんで……」
「ッ?!気付いてんのかい?!」
え?女将さんの子供が甲児君とシロー君だってこと?
「あ、はい、見れば分かります。名乗り出ないってことは事情があるんですよね?黙ってますよ。じゃ!」
俺は、あしゅら男爵に向けて駆け出した。
「あしゅら男爵!ここで仕留めるぞ!」
「「やってみせろ!人間風情が!」」
あしゅら男爵の鋭い手刀が俺の土手っ腹を貫く!
「グワーッ!」
やられたフリしとこ。
「「フン!他愛のない……」」
そう言って、あしゅら男爵が油断した瞬間に……。
「《エーブリエタースの先触れ》……!」
「「な、何ぃっ?!!!」」
俺は、星の娘『エーブリエタース』の悍しい触手を召喚して、あしゅら男爵を拘束する。
それと同時に、土手っ腹の穴は、《リジェネレーション》で再生している。
「《マカカジャ》《マカカジャ》《マカカジャ》そして、《ヨグ=ソトースの拳》ィッ!!!!」
三回のバフで高めた、超高威力の大魔法。
歪んだ空間から虹色の衝撃波が発生する!
「「ぐおおおおおおっ!!!!」」
あしゅら男爵が、三十メートルほど吹っ飛ばされる。
「やったか?!」
「「き、貴様あああああっ!!!!」」
あ、やってないのね。
となると、俺の火力じゃ殺しきれないかなー。
じゃあこうしようか。
今、《鑑定》の魔法で見たんだけど、あしゅら男爵が持っているあの『バードスの杖』ってのが重要アイテムらしい。
あれ壊そう!
俺は、『生ものの素材槌』を取り出す。
この素材槌というのは、ノースティリスという異世界のある地方で使われる道具で、この槌で叩いたものは『材質が変わる』のだ。
例えば、鉄の素材槌で叩けば、叩いたものは鉄になる。
ではこの、生ものの素材槌で叩けば?
生ものになるのだ!
「おらっ!」
「「ム?!」」
あ、でもダメですね、避けられちゃったわ。
素材槌が電柱にヒットする。
すると、電柱は、ブヨブヨの肉の塊になって倒れてしまった。
「「な、な、何だこれはーっ?!!!」」
「勘弁してくれよなー。素材槌のストックはあんまりないんだよー」
俺がそう言いながら、懐から更に素材槌を取り出す。
「「チィ……!雑魚かと思えば、厄介な奴ではないか!」」
そんな風に睨み合っていると……。
『ブレストファイアー!!!!』
ロボット戦の方の決着がついたみたいだ。
「「クッ、仕方ない、撤退だ!」」
あ、逃げた。
あーーー。
甘いもん食いてえわ。