サルビアが言うには、ダンジョンの中で食べるものや、旅の最中に食べるものは、ガチガチの黒パンに干し肉、ドライフルーツにチーズなどらしい。
かと言って、家庭で食う飯が美味いのかといえばそうではない。
一般的な農家などの家庭では、野菜や豆のスープ、これまたガチガチの黒パン、これまたチーズ、麦粥、たまに獲物がとれれば肉をちょっと焼いて食うくらいのものなんだとさ。
では、店で食えば美味いのか?
そんなことはない。
店でも、家庭料理とほぼ変わらないような薄味の野菜スープに、ガチガチではないがスカスカのパン、腸詰め肉や、燻製魚など。
ならばならば、貴族はもっと美味いものを食っているのか?
そんな訳でもない。
貴族は珍しい肉を好んで食うらしいが、どれも美味い訳ではなく、『珍しいものを食べられる立場にある』と言うステイタスを対外に示すだけだ。
まあ、そんな生活している訳だから、平民は、飢えや寒さに栄養失調でバタバタ死んでいく。
貴族も、糖尿病や脚気でバタバタ死んでいく。
冒険者もまあ、戦って死んでいく。
なんだこの時代死んでばっかりだな?!
まあそんな感じで、このメシマズの時代に、よりにもよってダンジョンの中でこんなに美味そうなものを食べている訳だから、目立っちゃった訳だね。
「でも、不味いもん食うくらいなら、多少目立っても美味いもん食った方が良いじゃん?」
「は、はあ。で、ですがそれでは、目立たないようにこっそり生きると言う目標に反するのでは?」
「いやー、その辺は難しいよね。生活レベルと目立ちっぷり、どうするか……」
「で、ですがまあ、私も昔、魔石を入れると一定時間火を噴くコンロとか、そう言った魔導具を見たことがありますから……、まだ、誤魔化しが効くかもしれませんよ!」
「そう思っておこうか」
さあ、飯も食ったので、移動だ。
十一〜十五階層は山。
現れたモンスターはストライクボアとブラウンベア、ホーンディア、サーベルテイルウィーゼルなど、動物系モンスターが出る。
この辺はシンプルに強い野生の力を体感しよう!との事だ。
「行きます!」「行くぞ!」
イリスとサルビアが暴れて倒した。
なお、倒したモンスター肉はフレズが美味しくいただきました。
十五階層のボスはレッドベア。雑魚。
肉や革などがドロップした。
十六〜二十階層では、虫系のモンスターが出るらしい。ダンジョンの風景は密林だ。
包囲されないように気をつけよう!と公式サイトに書いてある。
おっと、キラービーの群れだ。
「お任せください、ご主人様」
アルフレッドが後ろから弓で射る。
アルフレッドに渡したのは、Cランク民生用の競技用魔法弓と、物質創造装置付きの矢筒だ。
アルフレッドには、かなり高レベルの様々なアプリケーションがダウンロードされているからな、弓の扱いもバッチリだ。
キラービーの胴体を貫いて、背脈管……、つまりは心臓を破壊する。
近付いてきた奴らは、イリスとサルビアが斬ってくれる。
楽だな。
二十階層のボスはクイーンビーだった。雑魚。
薬品などがドロップ。レアドロップにクイーンビーの毒針剣。
「疲れてない?」
「全く疲れてないです」
「不思議だ……、これだけ戦ったのに、息も切れていないし、身体も軽いままです!」
しかし、時間的には夜なので、一晩野営する。
まあ、ダンジョンのセーフエリアは虫も出ないし、雨も風もない。天幕とかなしでも寝袋で寝れるだろ。
因みに、ちゃんと昼と夜が変わるぞ!
そして次の日。
公式サイトによると、二十一〜三十階層は全て、砂漠だそうだ。
暑さに負けるな!熱中症対策と水魔法が鍵!と公式サイトに書いてある。
モンスターは、サンドゴーレム、サンドワーム、レッドスコーピオン、デザートハイエナ、デザートサーペントが現れるそうだ。
まあ、余裕だな。
第四階位魔法、ウォーターランス。
水の大槍を複数展開して、サンドゴーレムにぶち込む。
サンドゴーレムは、物理攻撃は核を破壊しない限り再生してしまう特性があるので、正攻法で攻略するとなると水魔法を使う必要がある。
まあ、ここのサンドゴーレムはただのサンドゴーレムだ。二、三階位の魔法で普通に倒せちゃうな。物理でも、上手く核を破壊すれば倒せるし。
軍用やテロに使われるサンドゴーレムはもっとデカイし、周囲のものを砂に変換して取り込んだり、砂の塊を質量弾として飛ばしてきたりする。
それは大体、サンドゴーレムロードとかって呼ばれる。弾除けに使われるな。
そんなもんより、ハイミスリルアロイゴーレムとかの方が厄介だが。
まあなんだ、つまり、俺の知る時代のアース人ならば、ただのサンドゴーレムなんて、魔法覚えたての子供でも楽勝ってところだ。
民間人なら大体、四階位魔法まではそこそこ使えるのが普通だからな。軍属なら六階位まで、特殊部隊なら八階位まで。十階位まで使えるのは、俺のような、世界トップレベルの電脳とエーテルドライブユニット持ちだけだ。
今の俺みたいに、ウォーターランスほどの魔法をぶち込むと、サンドゴーレムは文字通りぶっ飛ぶ。
にしてもクソ暑いな。
あらかじめ全員に、冷却効果がある外套を着せているため、特に問題はないが、普通の人からしたらキツイだろう。
ナノマシンも入れずにここまできている人がいるとか、信じられんな。蛮族かよ。
「「エンチャントウォーター!!!」」
イリスとサルビアは、三階位魔法、エンチャントウォーターで、武器に水属性を宿して、砂系のモンスターから優位に立っているみたいだ。
「疾ッ!!!」
アルフレッドも、俺の護衛をしつつも弓による援護射撃を忘れない。
「ん……?」
あ、他の冒険者だ。
十五階層まではちらほらと見えていた冒険者だが、二十階層にもなると、殆ど見なかったんだよな。
今は二十二階層だが、ここまで潜ってる冒険者は他に見なかった。
どれどれ……?
「おおおおおっ!!!」
「ディル、そのまま押さえてて!おりゃあああ!!!」
「ぐうっ?!」
「アシタバさんっ!回復します!大いなる癒しの神アレクシオンの御子たるローズマリーが命じる!かの者を癒したまえ!ヒール!」
「アシタバは退がれ!リンデン、援護を!」
「ええ!万物の根源たるマナよ!その大いなる力を我に貸し与えよ!水よ踊れ!ウォーターブレイド!!!」
男女三人ずつの六人パーティか。
ふーん、強いのかね?
「あっ!」
「ん、どうしたサルビア?」
「知り合いです」
あ、そうなんだ。
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