ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ナノマシンを遺伝させることは法で禁じられているのに、どうしてこの世界にはナノマシン保有者「聖人」がいるのかな?何でだろう?おかしいね!


11話 商業都市パンセ

パンセの街に着いた。

 

いやあ、俺の住んでいた街と比べたらこじんまりとしているが、まあ、古代レベルまで退化した世界だとこれでも大きい方、なのかねえ?

 

商業都市とか呼ばれてるらしいが、かつてのアースの、ニューヤークのウォール街と比べたらチンケなものだ。

 

でもまあ、物質生成装置が普及してからは、経済活動は収縮していたけどな。

 

俺が生まれた時代は、物質生成装置ができて数百年経っているから……、少なくとも、誰でも食うのには困らなかった。

 

だから売買されるものは知的財産の取り扱いが基本だったな。

 

物質を生成装置で作って、データ化して、それを売って……、みたいな。

 

精度の高い物質生成装置とかはめっちゃ高いし、高級料理のデータなんかも高い。

 

天然物も高いな。

 

それでも、株やら為替取引なんかは、一種のマネーゲームとして文化に浸透していたし、金持ちは実際に贅沢できた。

 

さて……。

 

街に入るか。

 

 

 

交易都市らしく、人の出入りが多く、門の前には長蛇の列ができていたが、今は春で過ごしやすい季節なので、浮遊式の椅子とテーブルを出して、イリスとティータイムを楽しみながら待った。

 

「んー、カフェインが染み渡るぜ……」

 

「オレンジジュース、美味しいです」

 

コーヒーを飲みつつ、イリスに話を振る。

 

「どう?俺との生活は慣れた?やっていけそう?」

 

「はい……、ザンダー様との生活は、楽しいです。ザンダー様は……、優しくて、その、素敵、です❤︎」

 

「そっかそっか」

 

イリスは、最初に会った時は餓狼の様な姿だったが、今はよく懐いた子犬ちゃんって感じだ。

 

物理的に尻尾を振りながら後ろをついてくる姿がとても可愛らしい。

 

「少し早いけどお昼にしようか」

 

「はい」

 

物質生成装置使って、イリスの電脳にデータファイル送って、網膜投射式AR画像で何を食べるか選ぶ。

 

ARのボタンにタッチして料理を選ぶ……。

 

「これとかどう?」

 

「ハンバーグですか、良いと思います」

 

「付け合わせはこれで」

 

「はい」

 

……「何やってるんだあいつら」

 

……「どこ見てるんだ?」

 

……「頭おかしいんじゃねえのか?」

 

外野の声を無視しつつ、物質生成装置を起動する。

 

すると……。

 

テーブルの上がピカッと光って、出来立てほやほやのハンバーグセットが、じゅうじゅうと音のする鉄板ごと現れた。

 

鉄板の上にはハンバーグの他に、甘い人参のグラッセ、茹でたブロッコリー、ウェッジカットのポテトフライとバターコーンがある。

 

「ソースかけようぜ。あ、その前に、ソースがハネるから紙のシールドを張るぞ」

 

「はい」

 

紙の筒でハンバーグを囲って、ソースを回しかける。

 

じゅわあ、美味しそうな音と、匂いがいっぱいに広がる。

 

ハンバーグは250gのミディアムな焼き加減、ソースはガーリックオニオンソース。

 

鉄板で焼かれたニンニクの匂いって、なんでこんなに腹が減るんだろうな。

 

最近は、俺もイリスに付き合って飯を食うようになったので、これくらいなら簡単に食えるぞ。

 

……「な、なんだ?!急に食い物が?!」

 

……「そ、それよりもこの匂い……!」

 

……「な、なんて美味そうな匂いだ、俺達は行商の途中、干し肉と堅パンくらいしか食えなかったのに!」

 

それと、焼きたてのバターロール。

 

トマトスープも添えて。

 

「それじゃ、いただきます!」

 

「いただき、ます!」

 

一応、イリスにも軽い礼儀作法は仕込んでおいたから、ナイフとフォークの使い方は分かっているみたいだ。

 

イリスは電脳化の効果もあり、かなり覚えが良い。

 

「んー、美味いな」

 

「はい!」

 

熱々のハンバーグをナイフで切ると、肉汁がジュワッと滲み出てくる。ミディアムな焼き加減のそれを鉄板に軽く押し付けた後、ソースを掬い取るようにつけて口に運ぶ。

 

うんうん、美味いな。

 

ジパングの天然牛肉百パーセントのデータだから、旨味が違うな。

 

因みに、データファイルの中には、食用人間クローンの肉料理のデータとかもあるぞ。

 

それをイリスに言ったら怖がられたが。

 

割と美味いんだがな、人肉。

 

さて、付け合わせのグラッセは……?

 

ナイフを入れるまでもなく、フォークで切れるグラッセは、甘過ぎず、しかし優しい甘さだ。砂糖の上品な甘さだけでなく、天然野菜の本来の甘みも感じられる。

 

パンを千切って、鉄板のソースを拭き取るようにつけてから口に運ぶと、おお美味い!

 

スープは……、トマトのトマトマしさ?トマト本来の美味しさを活かしながらも、優しい柔らかな味になっている。具のベーコンがスモーキーで二重丸ってところか。

 

「お代わり、欲しいです」

 

「おー、食べな食べな。こっちにチーズ入りのあるぞ」

 

「はい!」

 

ありゃ、250gじゃ食べ盛りのイリスは足りなかったか。食べ盛りのまま不老処置をしたのは失敗だったか?

 

まあ、年齢の調整くらい、いくらでもできるから構わんか。

 

更に追加で、チーズインのハンバーグをイリスが手持ちの物質生成装置で創り出す。

 

更に更に、パンとスープもお代わりするようだ。

 

食べるねえ、若いって良いね、俺はあんまり腹が減らないから。食えない訳じゃないけどね。

 

「チーズ、美味しいです!濃厚、ですね!」

 

「良かったねえ」

 

と、食事を終えた後は。

 

デザートタイムだ。

 

「デザート何にしようか?」

 

「あの、私は、ガトーショコラが良いと思い、ます!」

 

「そっか、じゃあそうしよう」

 

イリスは甘いものとお肉が大好きなんだってさ。可愛いね。

 

俺も甘いものも肉も好きだよ。ってか、嫌いなものが特にない。

 

「ふわぁ……!生クリームがたくさん……!」

 

しっとり濃厚ガトーショコラにたっぷり生クリーム。

 

「あまあま……、しっとり、ふんわり……」

 

うむうむ、チョコレートのほろ苦さと、割とずっしり来る甘さ。

 

カロリーを摂取しましたーって感じ。

 

生クリームをたっぷり乗せてガトーショコラをぱくり。

 

あー、美味い。

 

周りの商人達の羨ましそうな目を無視して楽しんでいると……。

 

「う、うおお!もう我慢できねえ!俺にも食わせろー!!!」

 

「お、俺もだ!金は払う!だから!」

 

「寄越せー!!!」

 

と、大パニックになっていた。

 

ええ……。

 

怖……。

 

あ、でも、商人達が列から離れたから、空いてるな。

 

襲いかかってくる商人達を魔法でイリスと一緒に飛びこえて、街の前へ。

 

「入門料は?」

 

「え、あ、一人銀貨一枚だ」

 

「じゃあこれで」

 

銀貨を二枚払って、入門。

 

あらかじめ取っておいてよかった、冒険者資格。

 

冒険者ギルドの登録票とプレートを見せると、スムーズに話が進み、簡単に街に入れた。

 

「何故冒険者がこの街に?」

 

「あー、商人になりたかったんですけど、俺がいた街には商人ギルドがなくって、取り敢えず冒険者になってから身分証を手に入れて移動しようと思いまして」

 

「ふーむ……、まあ、ひょろ長くて弱そうだし、野盗の類ではなさそうだな」

 

へ?あ、あー。

 

データバンク『アカシックレコードシステム』使えねえのか。

 

アカシックレコードシステムなら、ナノマシンを注入したアース民全てのデータが参照できるから、犯罪者なんて丸わかりなのに。

 

まあ、今のアース民はナノマシンの注射も電脳化もしてないからデータバンクがそもそもないか。

 

んー、んー?

 

システムは……、あー、半分死んでるな。

 

まあ、ネットワークシステムだから、データ取り出しと書き込みは出来るっぽいけど、サーバの管理維持してないからただの辞書みたいなもんになってるわ。

 

本来ならもっと色んなサービスが使えたんだけどなあ、今はサーバが落ちてて駄目っぽい。最低限の機能しか使えないな。

 

まあ、アカシックレコードネットワークシステムが使えるだけマシか。

 

「……という訳だ、分かったか?では入れ、くれぐれも問題を起こすなよ!」

 

「ああはい、分かりました」

 

適当に街の注意事項を聞き流して、街へ入る。

 

注意事項?騒ぎを起こすな、くらいのもんだね。問題ないよ。

 

「はい、行くよイリス」

 

「はい」

 




マジレスすると後で聖人が出てきますよって話。

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