ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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戦闘描写苦手。


12話 熱いバトルは特にない

アソシアの森にて。

 

「リヒト、探知魔法よろ」

 

「分かった」

 

リヒトに丸投げする。

 

探知魔法レベル5とのこと。

 

つまりは人間レーダーだ。

 

「あっちにオーガらしき反応がある」

 

「良し、行くぞ」

 

「あ、待って下さい!」

 

疾風の翼だったか?Bランク冒険者の言葉を聞き流して先に進む。

 

 

 

「なあシグ、見てくれこれ、王都で人気の恋愛小説らしい。全部読んだんだが恋愛とは難儀なものだな。好いている相手に気持ちを伝えることができんものなのか、人間は」

 

「そこはほら、駆け引きとかさ、色々あるんだよ」

 

「私はシグのことが大好きだと正面から伝えられるぞ?何者にも憚る必要はないからな」

 

「世の中は力だけじゃどうにもならねえことが多々あんのよ。ヴィオラもいつか分かるさ」

 

「ふむ、そういうものか。……シグ、お前は私が好きか?」

 

「そりゃ、まあ、好き、だぞ?」

 

「……ふむ、参ったな。シグに好きと言われるとかなり嬉しいぞ。一日一回は言うようにしてくれ」

 

「そんなアメリカンな……」

 

ヴィオラといちゃつきながら森を行く。

 

うーん、こちとら学会の鼻つまみ者、異端者、奇人変人であるからにして。ストレートに好意を伝えられることは中々なかった。

 

こんな風に面と向かって好きだと言い合うのは気恥ずかしいし、慣れないな。

 

「ヴィオラちゃんは可愛いけど、僕は外見年齢にプラス十歳ほどしてもらえないと……」

 

「私は逆にマイナス十歳ほどしてもらえないと……」

 

黙れ熟女好きチスイコウモリとロリコン耳長。殺すぞ。

 

「お、おい!ここは危険度Bランク相当のアソシアの森の中なんだぞ?!もっと緊張感を……」

 

疾風の翼の剣士の男が口出ししてくるが……。

 

「この程度の森で警戒も何もあるか」

 

「っ、リヒト様……!貴方にとってはそうかもしれませんが、他の者は違うでしょう?!」

 

「いや、こいつらは私と同格だぞ?こんな森、その気になれば更地にできる」

 

「まさかそんな……!」

 

戦慄する剣士を横目に、俺達はずんずん進む。

 

やがて……。

 

「おっ、あれじゃね?」

 

「ああ、あれがオーガだ」

 

オーガを発見した。

 

「ま、不味い、逃げなきゃ……!!」

 

「は?いやあれターゲットでしょ、逃げちゃ駄目じゃん」

 

「何を言ってるんですか?!ここは、オーガの巣ですよ!!!」

 

だから何だってんだ。

 

「オーガが十数体に……、Aランク相当のオーガジェネラルまで!!僕達に手に負える敵じゃない!!!」

 

「ああそう、じゃあ下がってろ」

 

俺は一歩前に出る。

 

当然、格闘技やなんやは習得してないから、構えは適当だ。

 

でも流石に棒立ちは不味いだろうって事で、腰を軽く落とすくらいはしている。これで少し動きやすいかなあ、って感じかね。

 

あと脱力が大事だって宮本武蔵も言ってたような気がするし、肩の力は抜いている。

 

つまりは、両足を肩幅より大きいくらいに開き、腰を落とし、両腕を垂らした構え。文章にすると完全に怪しいやつだが、戦っているうちにこの形に落ち着いた。

 

そもそも、俺はエロエロの実の触手人間。態々人間の骨格でものを考える必要はないのだ。

 

格闘技というのは人間の技であって、触手人間は人間の技に倣う必要性がない。

 

さあて、行くか。

 

「そら」

 

振り子の要素で軽く腕を動かしたら、そのまま触手に変え、しならせ、鞭のようにオーガに叩きつけた。

 

先端の速度は軽く音速を超える。

 

その上、特殊合金をひん曲げるほどの筋力で放つんだ。

 

つまり、物理学的に何が起こるのか?

 

……爆音。

 

『ゲアッ』

 

「シグ、それうるさい」

 

「うるさっ!」

 

「む」

 

衝撃波だ。もちろん、触手の先端に触れたオーガは、大音量の爆発音とともに弾け飛んだ。

 

「な、何だあれは……?!」

 

驚愕する剣士を他所に、カインが出しゃばる。

 

「うるさいんだよね、それ。威力は中々だけどさー。僕がやるから黙って見てなよ、シグ君」

 

そして生き残っているオーガに手を翳すと……。

 

『ガ、カ……、オア……』

 

オーガはみるみるうちに痩せて、老いていき、やがて骨と皮だけになった。

 

エナジードレインレベル5、らしい。

 

「うええ、不味い、このエナジー不味い!ああ、三十代半ばくらいのお姉さんの生き血をちゅーちゅー吸って優しくエッチな事してもらいたい……、元気が出ない……」

 

自分でやっておいて何故かテンションが下がっているカイン。

 

「お前達、やる気がないなら私がやるぞ」

 

ヴィオラが立候補。

 

「やっちゃえヴィオラ」

 

「ああ、見ておけ、これが混沌の力だ」

 

混沌魔法とは、背反する光の魔法と闇の魔法の合成属性で、あのリヒトですら使いこなせない魔法らしい。

 

極彩色の光線がヴィオラの片手から放たれ、薙ぎ払われた。

 

『ギョエ!』『ギャッ!』『ギイッ!』

 

短い断末魔を上げて消滅するオーガ。

 

「原理が分からんのだけども何でこんな火力出んの?」

 

「私にも分からん」

 

分からんエネルギーをぶっ放すんじゃないよ物騒だな……。

 




ヴィオラは頭空っぽです。

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