次は旅人fgo。
ここんところは毎日、ハイペースに依頼を受けている。
一日三つから五つくらいのペースだろうか。
それも、完璧に。
それなのに、等級が上がらないのだ。
「なんで?」
「さあ?手に入れた遺物を冒険者ギルドに提出せずに、自分の為だけに使っているからじゃないですか?」
「は?」
なんだそりゃ。
「冒険者は、自らの力と技、そして知恵で困難を乗り越えるもののことを言うのです。自分は何もしないで遺物に頼るだけじゃ等級は上がりませんね」
「だから、あれは俺が作ったんだって」
「ふん、どうせ、元から、バラバラの状態から自動で組み立てられる遺物だったんでしょう?騙されませんよ」
はー。
……昔のニュースの映像記録で、こんなものがあったらしい。
『ARデバイスは知能の低下を招く!』というニュースだ。
しかし、そんなデータはなく、最新技術についていけない老害が、テレビ番組の中で雁首を揃えて、やれ最近の若者はと声を大きくして、あたかも最新技術を使うものは悪であるかのように吹聴していた、という。
その昔にも、スマートフォンは使うと馬鹿になるとか、電話より手紙の方がいいとか、時代を遡れば遡るほど、老害がいた。
技術についていけないもの、自分の理解の及ばないものを無価値と断ずるものがいた。
魔法とは、錬金術とは、科学とは。学問とは……、そう言った連中との戦いだ。
ならば、こうしよう。
「うん、お前ら、潰すわ」
「………………は?」
「まず手始めに、近隣の村やこの街の依頼人に片っ端から魔道具……、お前らの言う遺物を売り捌く。格安でな」
「な、なっ?!!そ、そんなこと、出来るはずが……」
「クリエイション、フォーミング、エングレーヴ、アセンブリ」
多数の魔道具を作っては、ギルド内を埋め尽くす。
「全部だ、全部売る。お前達冒険者ギルドには、ドブさらいの仕事すらこなくなる」
「あ、ああ……!!!」
一ヶ月後。
「おやおやおやおや、どうしましたかー?閑古鳥が鳴いちゃってますねー?」
「貴方がっ……、貴方のせいで!!!」
ギルドの受付の女に罵倒される。
おいおい、酷いなあ?
俺は普通に商売しただけだぞ?
「そ、そうだ!お前のせいで仕事がなくなっちまった!」
「俺達はこれからどうすりゃいいんだ!」
「くそ、ガキの子守も、雨漏り直しも、ドブさらいすらありゃしねえ!」
しーらないよー。
「そちら側の仕事と、俺の仕事がかち合っちゃいましたねえ。でも、顧客は、より優れている方に金を出すんですよ」
ヘラヘラと笑いながら告げる。
「「「「お前があああああ!!!」」」」
おっと、どうしたのーかーなー?
「いやあ、流石に温厚な俺でも腹に据えかねたからね、今回はね。だから、合法的に潰させてもらった訳よ」
しゃーないよなー、その辺はなー。
「お前、こんなことしてタダで済むと思ってんのか!!」
「ん?俺、なんか法に触れるようなことした?」
「う、あ、あれだ、営業妨害だ!!」
「してないでしょ?客の奪い合いで負けたんだよ、あんたらは。大体にして、俺が本気で営業妨害したら、ここら一帯更地になってるよ」
ミサイルでな。
「この、野郎!!」
「ん?」
斬られた。
まあ、もちろん、個人防護装置が発動し、障壁に刃は防がれる。
「き、斬れない?!!」
俺は素手で剣を払いのける。
「いきなり斬りかかるとは、文化的じゃないね」
「あ、ああ、ば、化け物!!」
ご挨拶だなあ。
そんなこんなで、俺はこの街を見て回った。
「どう?」
「あ、遺物の人。良いわよこれ、持たせてると子供が騒がないの」
「おーとまとん、は冒険者に頼むより確実にモンスターを倒してくれるのじゃ」
「あんどろいどは寝ずの番をやってくれるから助かるな」
人気は上々。
対価をもらっての仕事だから、俺も納得している。
まあ、冒険者ギルドを虐めるためだから、ちょっぴり安く売った感はあるが、その分機能も控えめ、民間モデルレベルだ。
「良いことをすると気持ちがいいなあ、イリス!」
「え?あ、はい」
因みに、イリスとは手を繋いで歩いている。
うん、イリスはね、十五くらいだって言うからヤバイかなって思ったんだけどね。
俺の時代では成人は十八だったけど、この時代では十五らしいのよ。
一応大人な訳で。
本人もそう言ってて。
だからそれを尊重しないのも悪いし、大人として扱ってる。
この半年くらいの間に、色々教えたし、知識面ではほぼ俺の知るアース民並だ。
だからこそ、ちゃんと考えて欲しかったんだが、それでも、俺に多大な恩義を感じていて、その上で従者としての仕事に誇りを持っている、と。
更に、不老不死になることにも同意した。
更に更に、夜伽と称して抱かれにきた。
過去の映像や写真で、君の信じる神々や俺も碌なもんじゃないと説明したが、それでも、好きだと。
そう言ってくれた。
割と、本気で嬉しかった。
最近はそう言う好意を向けられることがなかったからな。
だから今は恋人気分で観光して、軽く冒険者っぽいことして遊んでる。
あ、もちろん、いずれ来るかもしれない、邪神、異星人対策も進めているよ。
でも、ちょっとくらい、息抜きしても良いだろう?
「貴様ーーーッ!!!!」
はぁ。
「何?デート中なんだけど」
あ、いつぞやのギルドマスター。
「貴様のせいでギルドは滅茶苦茶だ!!殺してやる!!」
「えー、怖いなー」
ああ、なんかぞろぞろと武器を持った冒険者達が。
騒めく街の人々。
ふむ、良い機会だ。
「複数のゴロツキに囲まれて絶体絶命?冒険者なるゴロツキに溢れたこの街では、そんなこともあるでしょう!で、は!今回ご紹介させていただく商品は、こちら!」
クリエイション、フォーミング、エングレーヴ、アセンブリ!
「防衛用アンドロイドです!」
民間モデルだが、五階位魔法までなら防ぎ、民間人程度なら複数人相手でも取り押さえることができる。
因みに外見は人間とかけ離れたメカノイド型。強化ガラスの鋭角なフェイスパーツに魔化合成ポリマー製の白いボディ。ボディパーツに通ったラインからは、青い光が漏れる、人造人間と言った見た目のアンドロイド。
それを二、三十体。
対する冒険者は百人ほど。
どうやら、この街の冒険者やら、元冒険者のギルド職員やらが、武器を持って襲いかかってきたようだ。
「さあ、見てくださいこの性能!武器を持ったゴロツキも、モンスターもなんのその!治安維持用に街に数体、必要なんじゃないですか?!」
拡声器を使って、営業。
その間にも、冒険者達はアンドロイドに制圧されている。
勿論、殺すまではしないが、まー、男女関係なくボコボコにされてるなあ。
あ、ボコボコというのは表現を選んだ優しい物言いで、実際は骨は折れるわ目玉は潰れるわで酷いことになっている。
だが、都合がいいことに、この世界には喧嘩を禁じるような法律はない。その辺はリサーチ済みだ。
つまり。
「やっちゃえ☆」
『『『『排除開始』』』』
「「「「ぎゃああああああ!!!」」」」
こっちの勝ちって訳だ。
この後、アンドロイドは街の一番偉い人にまとめて売って、防衛用で能動的に攻撃を仕掛けることはないこと、簡単な仕事や魔法ならこなすので、冒険者の代わりとして使って欲しいことを説明した。
と、言う訳で、この辺りには用事がないな。
取り敢えず、この辺りで大きな街、商業が発達した、パンセという街があるらしい。
そこ、行こうか。
その次はちょこちょこ書いてる傭兵。