ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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牛丼うめー。


83話 共和国へ

「っと……」

 

デカい森だ。

 

「ソフィア」

 

「うーん、ごめんねえ、この辺の地理はよく分かんないや」

 

ふむ……。

 

南の半島が王国、北の山岳を超えた高地が帝国。

 

王国の東の海に沿って北の方向へ移動していたら、広い森にぶつかった。

 

ふむ、確か、東にはブロンド共和国があると聞くが……。

 

「「「んお?」」」

 

む、獣人が三人。

 

「おーおーおー、何でも屋じゃねえか!俺達のこと覚えてるか?」

 

「いや、覚えてねえな」

 

誰だこいつら。

 

犬の顔なんざ覚えられるか。

 

「ルーソン領で会っただろ?」

 

この世界の獣人は、男女共に完全に獣の姿をしているから、見分けがつかない。

 

基準世界の獣人は、顔は人間だから、大きな違いがある。

 

確かに、ルーソン領で獣人の客がいた気がするが……。

 

「ここはどこだ?」

 

尋ねてみるか。

 

「ブロンド共和国だぞ?知らないで来たのか?」

 

ふむ。

 

「ライアン領から海沿いに北に進んだらここに着いた」

 

「あー、そういうことか。あのな、ブロンド共和国は、確かに首都は東にあるんだが、領土自体は、帝国と王国に挟まれるこのキハダの森も含まれるんだよ」

 

成る程。

 

つまり、帝国は北西、王国は南の半島、共和国は中心部と東にあるのか。

 

「とすると、共和国は広いのか?」

 

「ああ、いや、もっと東の方は砂漠でな。イワヌ砂漠って言う広い砂漠があって、そこに住む凶悪なサンドマン達がたまに攻めてくるから、共和国はあんまり広くはねえぞ」

 

蛮族というやつだろうか。

 

「他の大陸は?」

 

ルーソン領で聞いた限りだと、他の大陸について有用な情報は得られなかったが……?

 

「おう、イワヌ砂漠の先の東の果てには、アライシュ大陸があるんだぜ!」

 

アライシュ大陸、ねえ。

 

「アライシュ大陸には、見たこともねえお宝が山程あるって話だ!……まあ、サンドマン共が邪魔で共和国側から船を出すことはできねえんだがな」

 

嘘くさい話だな。

 

黄金郷の噂のようなものか。

 

「信じてねえな?でも、アライシュ大陸に行って来たって言う冒険者は何人かいるんだぜ!」

 

「おう!そいつらはみんな、色々と珍しいもんを持って来たんだ!」

 

「たまに、王国のライアン領から、腕利きの冒険者を乗せた遠征船が出るんだ!……まあ、帰ってこれるのは十人に一人くらいらしいけどよ」

 

東のアライシュ大陸はこんなものか。

 

「では、北の大陸は?」

 

「え?北に大陸なんてあるのか?」

 

成る程、北の大陸は知られていないのか。

 

あらかじめ、この世界に来る前に大陸の大まかな分布を見たが、今いる一番大きいこの大陸に、王国、帝国、共和国の三国。

 

北と東にも大陸があることが分かっている。

 

「まあいいや、それで、ブロンド共和国に来るのか?」

 

ふむ……。

 

主に、俺の中での優先度は王国、帝国、共和国の順だ。

 

戦争の匂いの濃さの順とも言える。

 

王国は、そうだな……、王家が天皇で、諸国の貴族が戦国武将、と言った雰囲気だ。

 

なので、王国には期待しているんだが……。

 

いや、こういうのは、自分の目で見るのが一番だな。

 

王国も、確かに、まだまだ情報が集まっていないが、帝国と共和国は全くの未知。

 

近くまで来たのだから、共和国に寄り道しても良いだろう。

 

……そもそも、これはバカンスだ。みっちりスケジュールを詰め込むようなモンじゃねえな。

 

「ああ、共和国に寄り道するつもりだ」

 

俺が、獣人のアホそうな三人組に言った。

 

すると、三人組は。

 

「おお、そうか!じゃあ案内してやるよ!」

 

と言ってくる。

 

ふむ……、森の案内、か。

 

森は怖いぞ。

 

魔人となった今では、最終的には、木々を魔導で吹き飛ばせば迷わないし、そもそも転移できるから問題はないが、人間だった頃は、自然は下手をすれば敵兵よりずっと恐ろしい脅威だった。

 

虫けらを食って泥水を啜り、野生動物や毒虫を警戒しながら木の上で眠る……。ありゃ辛いな。

 

そんな森を案内するとなると、それなりに対価は渡さなきゃならねえな。

 

「ほらよ」

 

「お?何だこれ?」

 

「森の案内の前金だ」

 

「ん?おお、いや、金なんざ要らねえよ?俺達が里帰りするついでだしな」

 

「後から要求されたら面倒だ。俺は金を払った。契約書にサインしろ」

 

「お、おう……」

 

契約書にサインを書かせる。

 

「あ、あのさ、金より、移動中に美味い飯を食わせてくれねえかな?俺達、そっちの方が嬉しいぜ?」

 

「なら金を払え」

 

「……その、道案内の代金を払って、食事代を徴収するって、よく分かんねえなこれ」

 

 

 

森の中で四駆を走らせるのは無理だ。

 

となると、徒歩か。

 

俺は平気だが、ソフィアが大丈夫だろうか。

 

俺は物持ちが良い方だ。鍛えた軍用犬なんかは、長い間可愛がってやるし、使えなくなるまではしっかりと世話をする。

 

ソフィアというペットを使い潰すような真似はしない。折角懐いた下僕を、特に理由もなく使い潰すのは間抜けだ。

 

いや、使うときは使うんだが。

 

長年テロやら何やらをやってきた身からすると、鉄砲玉もタダじゃないことが分かる。

 

人的資源は大事にし過ぎるのも悪いが、ぞんざいに扱うのも駄目だな。

 

ここぞという時に死んでこいと命令できる下僕を沢山ストックしておくことが大切な訳だな。

 

 

 

この狼獣人三人、白いのがボルボ、茶色いのがバルバ、灰色の中ベルベと言うらしい。

 

因みに三人は兄弟とのこと。

 

兄弟で流浪の冒険者生活……。

 

ボルボが斧使いで、バルバがショートソードの斥候、ベルベが弓と槍の狩人とのこと。

 

まあ……、どうでも良いな。

 

見たところ、そこそこ強いようだが、取り込むほどに魅力ある存在じゃない。

 

先日の街は規模がそれなりにあったから楽しんで潰せたのだが、こんなアホそうな木っ端獣人を虐めてもどうしようもねぇだろ。

 

よし、共和国に遊びに行くぞ。

 

 




生きるのに疲れた。

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