今日はダンジョン十層を目指して頑張る!
五層までは前回と同じノリで攻略できた。
六層でモンスターをある程度倒した後、野営。
「その、ダンジョンって、安全地帯とかは……?」
「ないよ、そんなもの」
あー、この辺もハードコアかあ。
「まあでも、このアラームの魔法がかかった鈴をかけておくと、モンスターが近づけば分かるようになってる。あとは、交代で見張りだな」
見張りかあ……、まあ、夜更かしは得意だし、あんまり寝なくても平気だから、良いけど。
さて、六層の攻略をやっていこう。
六層はゴブリンとウルフが出るらしい。
「ウルフ?狼ですか?」
「ウルフと狼は違うぞ?」
「えっ?その、どの辺りが?」
「ウルフはモンスターで狼は動物だ」
「モンスターと動物って何が違うんですか?」
「魔石があるかどうかだな」
魔石!
ファンタジーだ!
「魔石ってアレですか、魔道具に使ったりとか……?」
「お、知ってるのか?そうだ、魔石は魔道具の動力源だ」
へー!
「魔道具、見てみたいです!」
「ん?あー、シンシア、見せてやれ」
「ん」
シンシアさんがランタン?みたいなのを見せる。
「これはライトの魔法がかかった魔道具。ゴブリンの魔石一つで三時間は光る」
おー!凄い!
……でも、燃費悪くない?
ってか、魔石剥ぎ取ってなくない?
「あの、さっきから魔石……、取ってないじゃないですか?」
「ああ、そうだね」
「あの、勿体なくないですか?」
「ゴブリンの魔石程度じゃ銅貨二、三枚が良いところだよ?低階層のモンスターから剥ぎ取ることは少ないね。駆け出しならまだしもねえ」
そうなんだ。
「でも、剥ぎ取る練習くらいはしておこうか」
「えっ」
「ほら、今倒したゴブリンの胸を裂くんだよ」
「う、ゔぉえ、うっぷ……」
グロいよー!!!
……胸の皮を剥がして、肋骨を砕いて、心臓を剥ぎ取り、半分に割ると中から出てくる。
「うゔぅ……」
「あー、血の匂いとか、慣れないと臭いからねえ。大丈夫かい?」
「アッ、大丈夫です……」
魔石……。
ゴブリンの魔石は、キャンディくらいの大きさの、マゼンダ色の石だった。
でこぼこだけど、カットすれば宝石でも通用するくらいに綺麗だ。
それにしても、うう、内臓グロかった……。
皮が、皮がべろんって!黄色い脂肪が!ううううう!!!
「お、ウルフが来たぞ!気を付けろよ、人間を相手にするのとは違うからな!」
あ、ウルフが来た。
ウルフは姿勢が低いから、攻撃が当たりにくいらしい。
その上、素早いので、初心者の鬼門とのこと。
でも私なら!
「えい!!」
『ガ』
首を斬り落とす!
楽勝だね!
「因みにウルフは毛皮が売れるんだ。冬なんかに売ると銅貨五十枚はするぞ」
そうなんだ。
七階層、八階層も同じような感じだった。
あ、ホーンラビットってモンスターも出たから、それも倒した。
「よし、飯にするか。折角ホーンラビットを狩ったんだ、食うよ」
「えっ、モンスターって食べられるんですか?」
「食えるぞ?」
「その、食べて良いものなんですか?宗教的に……」
カリーナさんの方を見る。
「おかしなことではありませんよ?」
アッ、そうなんだ、普通なんだ。
「ホーンラビットは普通のウサギより美味いんだぞー?角は薬になるしな」
へー、やっぱり美味しいんだ。
「焼いて塩かけて食うぞ」
イザベルさんが手早く捌いて、焚き火の前に鉄の串に刺して焼く。
そして。
「あ、美味しい」
ウサギってこんな味なんだ。
うう、うさちゃん可愛そう……。で、でも、モンスターだから。
「アッ、その、そう言えば、モンスターって仲間になったりしないんですか?」
「ん?テイムのことか?できるらしいぞ?アタシにゃ無理だが……、国はワイバーンをテイムして竜騎士隊を作ってるし……、冒険者でもウルフを連れてる奴とか割といるな」
へー!
良いなー、私もペット欲しいなー!
あっちではお母さんが世話しないから駄目って言うんだもん。
猫ちゃんとか飼いたかったのに……。
ていうか、猫ちゃんなら散歩とかしなくても餌としつけだけでオーケーじゃん!
なんで駄目だって言われたんだろう?どうせお金ないからとかだよ、きっと!
「ん?勇者サマもテイムしたいのかい?」
「アッ、そうですね、なんか可愛い動物とかいると良いですね」
「ふーむ……、このダンジョンの下層の方に、何か良いモンスターがいれば、テイムしてみたらどうだい?」
「えっ、どうやるんですか?」
「動けなくなるくらいまでボコボコにして、自分の魔力を流すか……、卵や子供のモンスターを攫って、小さいうちから躾けるかのどっちかだね」
あー、そんな感じかあ。
「じゃ、じゃあ、良い感じのがいたら、て、手伝ってもらえますか?」
「おう、良いさ!」
×××××××××××××××
「ふむ……、ダンジョンの下層に適当にうちの兵士でも置いてくるか?いや、どこかにお助けフェアリーでも配置しようか」
「了解。人員を選定しておく」
マリーは有能だな。
正直、なくてはならないレベルになっている。
換えが効かない駒は使いにくい故に、後進を育てるように言ってあるのだが……、後進を育てるスピードよりも早くこいつが有能になっていくからな……。
今のところ、俺の秘書を完璧にこなせるのはこいつだけだ。
それはさておき、と。
「……あー、このタバコはいけるな、どこのだ?」
「ジパング産、『八神』」
ほう。
俺はマリーとタバコの批評をしつつ、勇者の見物を楽しむ。
「……で?お前の見解は?」
「特にない」
そうかよ。
「興味なしか?」
「人間が数匹死ぬ程度、なんの問題もない」
「……生きてて楽しいか?」
「そもそも生きていない。私はリッチ」
屁理屈じゃねえか。
「労働環境的な意味での楽しみはある。知識の習得とご主人様との性行為」
殺戮には興味がねえのかよ。
「人が死ぬことに特別な感情は抱かない」
「まあ、良いか」
こいつは相変わらずだな。
セックスしている時以外に表情が変わるのを見たことがねえ。
殴ってもうんともすんとも言わねえからな。
その上無口で、仕事の報告以外では、セックスに誘う時くらいしか話さねえしよ。
身体も貧相だし。顔は良いが。
「まあ、うざってえ女よりはマシだな」
「……私は、ご主人様を愛している」
「クハハ……!おいおい、賢さが取り柄のお前が、随分と馬鹿なことを言うなァ?」
愛だと?
下らん、そんなものになんの価値がある?
「お前も俺の側にいると、更なる知識を得られるから従っているだけだろう?」
「違う、愛しているから」
「証明する手段もない、そんな不確かな感情の揺らぎに何がある?」
「本当に愛している。ご主人様の為なら全てを捨てても良い」
ふん……。
「仮に、愛というものがこの世に存在したとして……、俺はお前を愛してはいない」
「……ッ!」
お?
泣いた?
「ほう、お前は泣けるのか?死人が泣くとは面白いな」
「………………」
「どうした、何か文句でもあるのか?」
「嘘でも、良い」
「……何がだ?」
「愛していると、言って欲しい」
……ふん。
まあ、愛は理解できんが、愛着ならばある程度は分かる。
道具として見れば、こいつらモンスター娘は非常に有用だ。
今後とも末永くよろしくしておきたい。
だから、そうだな。
「愛しているとも、マリー」
「……ありがとう、あなた❤︎」
嘘の一つくらい、ついてやってもいいだろう。
傭兵的には、愛は、「そう嘯いておけば手下のモンスター娘達が精力的に働くから、取り敢えず愛していると言っておく」みたいな感覚。傭兵には愛情というものが全く分かりません。サイコパスだからです。