今日もダンジョン攻略。
取り敢えず十階層まで。
私とシンシアさんがアイテムボックスを使える分、荷物持ちを同行させる必要はない。
アイテムボックスにはトン単位くらいの物が入るので、実質、シンシアさんと合わせて数トン。
言うなれば、トラックを引き連れて移動しているようなものだ。
替えの服や雑貨、武器、食料なんかを詰める。
えーと、確か、昔見た映画での知識だけど、人間は一年で1トンの食料が必要らしいから……、四人で半年保つかな?ってくらいかな。
あ、アイテムボックスの中のものは、時間が止まっているから腐らないんだって。
まあ、お約束だね。
さて、荷物は旅慣れしているカリーナさんと、冒険者のイザベルさんが選んでくれたので、それを私とシンシアさんがアイテムボックスに収納する。
最近はその為の買い溜めをしている。
パン屋さんにわざわざ多目にパンを焼いてもらって、それを片っ端から収納。
燻製や塩漬けの肉、野菜、干物も。
他にも下着とか手拭いとか、簡単な武器や防具の手入れ用の工具、予備の武器や防具、食器や鍋、調味料に、野営に必要なテントや薪なんかも。
兎に角沢山の生活必需品を集めている。
それで、その、一番キツイのはね……。
この世界、生理用品がない……!!!
「あ、あの、イ、イザベルさん?その、月のものが来た時って、どうしてますか?」
「月のもの?何だいそれは?」
「あ、あの、女の人が、その、血が出る……」
「ん、ああ!生理かい?」
「うぅ、は、はい」
明け透けに言わないでよもう!
「それがどうかしたんだい?誰でもなるものだよ」
「えっ、血が……」
「イザベルさん!貴女って人はもう!勇者様、月のものは、亜麻布を股に巻くのです」
と、カリーナさん。
そ、そう言えばこの世界の女の人、みんな下着も履いてないからね?!
何せ中世的な異世界、ブラもパンティもない!!
私は……、その、男性用のズボンみたいなパンツを無理矢理履いてます。うう、ショーツが恋しい……。
「そうなのかい?」
「えっ、じゃあイザベルさんは、その、せ、生理の時どうしてるんですか?」
「どうもしないよ?」
「ど、どうもしないとは?」
「だから、何にもしないよ。血は出るもんだ、仕方ない。割り切るよ」
「ほ、ほら、具合とか悪く……」
「ああ、そうだね、昔毒を吐くモンスターに毒を吹き付けられたことがあるけど……、あの時よりはキツくはないからね。耐えられるよ。まあ、生理の時は大事をとって、冒険者としての仕事は休むね」
えええええ?!!!血、垂れ流し?!!!
「ゴブリンやオークなんかは、女の血の匂いに敏感だからねえ……。そんなんで森やダンジョンに行ったら面倒だよ?」
え?!何それ?!実体験?!!!
「まあ、そもそも、モンスターってのは血の匂いに敏感なやつが多いんだけどね、特に女の経血には物凄く敏感なんだよ。だから、モンスターを引き寄せる匂い袋なんかには、経血が使われていたりするんだ」
へ、へー?
イザベルさんは垂れ流し、と。
「その、シンシアさんは?」
「亜麻布を股に巻く」
そうなんだ……。
良かった、垂れ流しじゃないんだ。
「血が漏れる度にクリーンの魔法を使ってしまう」
まあ、そうだよね。
「因みに、月経時は魔力が大きく減衰する。要注意」
「え?そんなのあるんですか?!」
「ある。また、月経時は、体調不良故に魔法が安定しないことが多い。女魔法使いの弱点」
まあ、それもそうだよね。
私ももう重い時なんかは学校休むもん。
えーと、それでカリーナさんは?
「カリーナさんはどうしてますか?」
「亜麻布を当てて、家や宿で休みます」
「そうですよね、普通は」
「因みに、月経の時は教会に入れません」
「えっ?な、なんでですか?」
「不浄だからです」
えー?
「で、でも、月のものは必ず来るものですし、不浄とか言われても」
「アース教においては、女の穢れ、悪魔の仕業とされています。瀉血をすると月経が来なくなると言う説もあります」
「瀉血ってなんですか?」
「血を抜くことです。月経は女の病気の一つですから」
「い、いやいや!病気じゃないですよ?!む、むしろ、その、月のものが来ない方が病気だと思います!」
「そうなのですか?」
「は、はい」
そっか……、医学とかも発達してないから……。
みんなそんな感じなんだ。
「私の世界では、その、月のものが来た時は、その、ちゃんと子供を産めるようになったからって祝われるんですけど」
「初潮を祝われるのですか?それはまた、何とも……。こちらでは悪魔の訪れとして忌避されるので……」
うーん。
文化の違いかあ。
×××××××××××××××
「確かにそうだな、この世界ではそんなもんか」
「そーだぜー、女は毎月大変なんだ、労われよー?」
「テメーが発情期の度に死ぬ程ブチ犯す俺も大変なんだがな」
「でも楽しんでるから良いだろ?」
「まあな」
今日はグラースが来ている。
「獣人、鳥人、爬虫人類辺りは、毎月の生理に加えて、年に二、三回の発情期があるんだ」
グラースが言う。
「発情期は男女両方に来るぞ。滅茶苦茶大変だから労ってくれ」
知らんが。
「いや本当に……、セックスのことしか考えられなくなるんだよ……」
「確かに、発情期の時のお前は、麻薬を注射されたかのように理性を失っていたな」
噛み付くわ引っ掻くわで大暴れだ。ダメージはないが、それに毎年付き合うのは本当に面倒だからな。
何せ、こいつの発情期の最中は、全部の予定をキャンセルし、一週間程ずっとセックスしなきゃならない。
食事と排泄、睡眠以外の時間は全てセックスだ。人外の体力がなければ付き合いきれないだろう。
「獣人や鳥人、爬虫人は、パートナーが発情期に入ると、自分も発情期に入るもんなんだけどよ……、ご主人様は何ともないのか?」
「確かに俺は、獣人、爬虫人、悪魔を合成した種族だが、あくまでベースは悪魔だ。特に問題はない」
エルフやドワーフなどの亜人、悪魔、虫人、植物人、ゴブリンなどの鬼人なども、生理のメカニズムは人と変わらない。
マリーみたいな不死人はそもそも生理が来ないってよ。だが性欲はあるらしいが。
「毎回言ってるが、発情抑制剤飲めよ」
エデンにて、発情を抑える薬が開発されたはずだ。
「えー、あれ飲むとだるくなるんだよー、思いっきりセックスした方が良いってー」
ピルみたいなもんなのか?
「お前以外にもピトーネとブリッツとウーノも相手にしなきゃならねえんだぞ……」
「あー、やっぱあいつらも何だかんだ理由つけて薬飲まねーんだな?」
「ああ……」
「いーじゃんか、モテモテで」
「同じ女を一週間抱くのは飽きるんだよ」
「酷え?!」
「他の男に相手してもらったらどうだ?」
「いや、モンスター娘は基本的に、自分の旦那以外の男に抱かれることはないんだよ」
「うん?そう言えば浮気が話題になったことねえな……」
確かに、ハーレムを持つ男は多いが、浮気だ何だと言う話は聞いたことがない。
何でだ?
「自分の旦那以外をその、性的な目で見れなくなるんだよなー」
「何だそれは」
「いや、上手く説明できないんだけど、なんつーかフェロモン?的なアレだと思うぜ?自分の旦那以外の匂いが、こう、臭くなる?みたいな?」
そうなのか?
「そうだなー、自分の旦那以外の男は……、こう、親父とか男の兄弟とかみたいな感じになるんだよな」
ふーむ。
そう言う種族特性がある、と言うことか?
通りで人妻に声をかけても釣れない訳だ。
「モンスター娘はそう言う生き物なんだな」
そう納得しておこう。
この世界はファンタジーだからな、説明できないおかしな進化を遂げたってことだろう。
最近もう一週間くらいずっとラーメン食ってる。
いかんいかん、痩せねば。