最近、このフェッソ伯爵の領地、マーレ領にダンジョンができたらしい。ダンジョンは資源として有用なので、領地で管理維持するらしい。
例えるなら鉱山のようなものとのこと。
「ダンジョンか、丁度いいな。勇者サマの訓練に潜ってみるか」
と、イザベルさん。
「あの、ダンジョン、危なくないですか?」
「ああ、危ないさ。でも、危なくなけりゃ訓練にならないだろ?安心しろって、そんな深くは潜らないし、ちゃんとサポートするからさ!」
「アッハイ」
とのこと。
「でもまあ、鎧の調節が終わるまでは軽く剣でも教えるよ」
「アッ、よろしくです」
ってな訳で訓練始まったんだけど。
「よし!その調子だ!筋が良いぞ!」
「えい!やあ!」
軽く剣を習う。
実は、転生特典で、身体能力が上がってるから、並の騎士なら身体能力だけで圧倒できるのだ。
イザベルさんとも、戦ったら勝てるけど、純粋な剣技とか知識とか、そういう点では敵わない。
イザベルさんの凄いところは、単純な強さだけじゃなくて、知識とか技能とか、もっとそういうところだと思う。
高い身体能力を使いこなせるように訓練しないと駄目だ。
それと、実際に剣を使った練習もする。
革の鎧を着せてある砂の入ったサンドバッグみたいなのに、剣を振る。
「やああっ!!!」
魔剣インドキロスの斬れ味は凄まじく、ただの革の鎧程度なら簡単に真っ二つだ。
「よしよし、刃筋の立て方も分かってきたな」
『良好です、マスター』
イザベルさんとインドキロスに褒められながら、インドキロスを振り回す。
凄いのは、インドキロスが見た目より軽いところと、どんなにインドキロスを振り回しても疲れないところだ。
インドキロスももちろん凄い。
けど、私の身体能力も凄いことになっている。
ちょっとジャンプすれば五メートルくらいは跳ぶし、自分より大きい岩をひっくり返せる。パンチ一発で木は折れるし、走れば車より速い。身体は鉄の剣でも斬れないし、魔法だって使える。
「インドキロス、さん」
『キロとお呼びください。私はマスターの僕でありますから』
「えと、じゃ、じゃあ、キロ?キロは伝説の魔剣なんだよね?」
『はい』
「前の持ち主はどんな人だったの?やっぱり、私みたいに物凄い身体能力の勇者?」
『そうですね……、前のマスターは傭兵の方でしたよ。マスターよりも遥かに強かったです』
へー。
上には上がいるんだなー。
「じゃ、じゃあ、私も、前のマスターに負けないように頑張らないと!」
『……それは無理かと』
「なんか言った?キロ?」
『いえ、なんでもありません』
そして、装備ができた。
鎧の着方を習って、装備する。
「どう、かな?」
「おお、似合ってるね!」
イザベルさんに褒められた。
えへへ。
「じゃあ、それを着たまま訓練をして……、そうだな、来週にはダンジョンに潜るよ」
「はい!」
ダンジョンかあ。
モンスターを殺すのはまだ怖いけど……、慣れなきゃね。
「ところで、この世界ってレベルとかスキルとかはない感じなんですか?」
「なんだいそれ?」
「ステータス表示とか……?」
「ステータス?」
「その、強さを数値で表す的な……?」
「そんなこと、どうやってやるんだい?」
「鑑定魔法とか……?」
「そんな魔法、聞いたことないね。鑑定魔法は物に使うもんだよ」
なるほど、レベルやスキルのない、ハードコアファンタジーかあ。
……頑張ろ。
×××××××××××××××
「レベル?スキル?ステータス?何のことだ?」
もしや、種族特性のことか?
種族特性とは、フェンリルなら魔力を直接氷に変換できるなどの、種族としての技能のことだ。
人間には特に技能はないが……?
さて、今日はマリーが来ている。
「レベルは強さの度合い、スキルは必殺技、ステータスは能力を数値化したものなんかを示すのでは?」
聡明なマリーはそう推測した。
なるほど、必殺技か。
確か、昔機会があって読んだことがある日本のコミックブックでは、必殺技の名前を叫んで攻撃を叩きつける少年が描かれていたな。
リアリティがなく、何が面白いのか理解できなかったが故に、軽く読んだくらいだったが。
「面白いな、この世界に実装できないだろうか?」
「実は私も考えていた。成長度合いを数値化することで優劣を表面化させ、人間世界の停滞と差別の助長になる」
ふむ……。
「『武器庫』に入っていた、テーブルトークアールピージーと呼ばれる種の遊戯の解説本を基に、ステータスと鑑定魔法を作成。これが魔法式」
魔法式を読み、発動させる。
目の前に用意した羊皮紙に、小さな炎がタイプライターの様に文字を印字する。
『NAME:ジン
RACE:アンラマンユ
AGE:56
SEX:男
JOB:魔王
LEVEL:666
HP:58000
MP:15500000
STR:12000
DEX:8750
VIT:11440
AGI:10860
INT:7740
MND:15210
LUK:100
CHA:11090
SKILL
『武器庫』
魔神変幻
闇魔導
光魔導
混沌魔導
時魔導
属性魔法:究極
時空魔法:究極
付与魔法:究極
回復魔法:究極
創造魔法:究極
マーシャルアーツマスタリー:究極
マジックマスタリー:究極
サバイバル:究極
スカウトマスタリー:究極
スペシャリストマスタリー:究極
タナトスゲイズ
シャイターンロア
ディアボロスハンド
アルコーンウイング
チェルノボグアームズ
ネルガルドライブ』
ふむ、全くわからん。
「解説してくれ」
「上の方は理解可能か?」
「大体な。STRはstrengthで……、上から筋力、器用さ、耐久性、敏捷さ、知能、精神力、運、最後は魅力か?」
「肯定」
「HPやMPは?」
「生命力と魔力。各数値は、人間の成人男性で5〜10と言ったところ」
「レベルってのは?」
「今までの人生で得た経験から算出される、格のこと。人間であれば、6もあれば英雄」
ほう。
「スキルというのは?」
「その個体の持つ技能と必殺技。パッシブなものとアクティブなもの両方表示」
つまり?
「例えばこの、スペシャリストマスタリーは、特技兵としての技能全てを持つことを指す。習熟度は下から順に、初級、下級、中級、上級、超級、究極となっている」
ほう、理解したぞ。
「しかしこの必殺技?のようなものはなんだ?使った覚えはないぞ」
「使った」
使っていないが?
「例えばこの、タナトスゲイズ……。ご主人様が触れずに人間を殺したいと考え開発した、殺気に魔力を乗せてぶつける技。MND値による抵抗が失敗した時、その生命体はショック死するというスキル」
……あー、そんなこともやったことがあるな。
しかし、タナトスゲイズ、などと名付けた覚えはないが?
「私が適当に決定した。謝罪する」
「まあ、その辺りは別に気にしねえけどよ」
……それで?
「魔導による、世界法則の書き換えを応用、倒した生命体から魔力の一部を奪い、レベルが上昇するように編集する。その際の、身体能力変更のデータは、この勇者から採取」
成る程な。
「魔剣の勇者の敗北後、世界の編纂を行う。大規模術式故に、魔力の貯蓄を切り崩す。許可を」
「良いだろう、その時は書類を用意しておけよ」
「了解」
あんまりこう、能力を数値で表すとか好きじゃないんですけど。