「うう、キンチョーする……!」
今日は、王女様が、パーティメンバーに会わせてくれるそうだ。
魔剣の勇者パーティ……。
やっぱりお約束で、パーティメンバーは私を入れて四人。
「勇者様、こちらへ」
「は、はいっ!」
い、い、いや、私基本、コミュ障オタクだからね?!
顔合わせの時点でマジで緊張してるから!
し、死にそう!
「アタシはイザベルよ、よろしくね」
「私はシンシア、よろしく」
「わたくしはカリーナと申します、これからよろしくお願いしますね」
うわわわわ。
ウワー。
何なのもう……、何なの?
これが異世界補正?
めっっっちゃ可愛い女の子三人。
まずはイザベルさん。
赤い髪をショートカットにした姉御って感じの美人さん。
スタイルも良くって、身長も175cmくらいあるかな?
鼻に横一文字の傷跡があるのが特徴。
体格が結構がっしりしてて、なんかこう、冒険者っぽい革と金属の鎧、斧と盾を持っている。
鎧は、肩や腕、胴回りや腰、脛なんかはちょっと鉄が使われていて、他の部分は革。頭には飾り気のないサークレット。
ファンタジー大好きっ子の私は、その盾がラウンドシールドという丸型の盾だってことが分かった。斧はバトルアックスってやつかな?
他にも、腰のポーチとか、剥ぎ取り用の短剣とか……、冒険者の戦士って感じだね。
次にシンシアさん。
……魔法使いだね。
でっかい帽子にローブに短いマント。
うん、魔法使いだね!
大きな木の杖と、ネックレス。
すとーん。どこがとは言わないけど。で、小柄かな?チビの私よりはちょっと大きいけど。
黒髪ロングの知的美人だね。
腰にはポーチとナイフ。
最後にカリーナさん。
神官かな。
ローブ。首から♀雌を表す記号の形をしたネックレスが。
そして豊満なボディ!どこがとは言わないけど、おっきい!
そして飾りのついたメイスを持っている。
綺麗な金髪ロングのおっとり系美人さん。
こちらも、腰にポーチとナイフを。
この人達が、私のパーティメンバー?
え、ちょ、みんな美人過ぎて私浮かない?
顔合わせが済んで、親睦を深める、とかって名目で食事会。
四人で食卓を囲む。
えぇ……。
だからコミュ障なんだってば!
アニメと漫画とゲームとラノベの話しかできないんだって!!!
「おお、流石は王家だな!飯が豪勢だ」
イザベルさんが喜んでいるみたい。反応がいかにも冒険者だよね。かっこいいかも。
「ん?なんだ勇者サマよお?食わねーのか?」
「アッハイ、食べます食べます……」
「そうか?旅の最中は美味いもんなんて食えねえからな、今のうちに美味いもんを腹一杯食っとけよ」
「はい……」
美味いもの、って言っても……。
なんて言うか、脂っこくて塩辛いものばっかりで、あんまり美味しくない……。
昔の人は、たくさん身体を動かす仕事をするために、カロリーをたくさんとる必要があって、だから、脂っこいものが高価だったって、歴史の先生が言ってた気がする。
香辛料とかも、例によって高価みたい。
今回は王家の食事って事で、香辛料がふんだんに使われているんだけど……、その……、アレだよね。
香辛料って、たくさん使えば良いって訳じゃないよね……。
日本ではあんまり馴染みがないから分からないけど……、これなんだろ、サフラン?とかそう言う系の臭いでもう、なんか、臭い。
あんまり美味しくない……。
よく、転生者が異世界で和食を再現したりするけど、その気持ちが良く分かったよ……。
「んー?さっきから元気ねえなあ?大丈夫かよ勇者サマよお」
「アッダイジョブですはい(小声)」
「大丈夫かよおい」
いや本当に、コミュ障なんで……。
あからさまに陽キャのイザベルさんはきつい。
「イザベルさん、勇者様は緊張なさっているのです。過剰に干渉してはなりませんよ」
とカリーナさん。
優しい。
「ん、そうなのか?アタシなんかに緊張しなくっても良いぞ?別にぶっ飛ばしたりなんかしねーんだからよ」
「はぁ、だから、そういうところが良くないのですよ」
その間、シンシアさんは黙々と食べている。
「じゃあ、アタシがなんか話すわ。聞いてくれるか?」
「アッハイ、ありがとうございます」
と言う訳で、イザベルさんの話を聞くことに……。
×××××××××××××××
てな訳で、今日はフルボが来ている。
「ご機嫌麗しゅう、フェッソ伯爵」
「うあー、やめてくだせえ!クソみてえな貴族社会で疲れてるんですから!ここでの俺ァ、黒骸骨のフルボでさあ!!」
「はっはっは」
フルボと食事をしつつ、色々と聞く。
因みに、メニューは、俺が鴨のテリーヌ、フルボが海老のアヒージョ。俺は人外になってから食事量が増えたし、フルボも細い見た目よりもずっと食う。
「っあー、こっちのワインは最高ですねえ。人間国家側のワインは不味いんでさあ」
「確かにな。勇者殿も不満そうだ」
「あー、宮廷料理なんざ、香辛料を馬鹿みたいに使っただけの料理ですからねえ。今まで美味いもんを食ってきたガキにはちとキツイんじゃありやせんか?」
だろうな。
「で?今回の勇者のパーティだが?」
「はぁい、俺が選びやした」
ふむ?
「良い女だな、お前の趣味か?」
「いえ、そんなこたぁありやせんよ?単純に理由があったんでさ」
ふむ。
「理由とは?」
「まずこの冒険者の女戦士、イザベル。こいつはですね、優秀なんでさ」
「ほう?」
「こいつは現在Aランクの冒険者なんですが……、見た目に反して論理的なんでさ」
論理的?
「冒険者ってえのは普通、かつての聖剣の勇者にあやかって、剣を好んで使うんですがね、この女は剣にこだわらねえんですよ」
「成る程な」
「ええ、そういう訳です。……武器ってのは、相手によって臨機応変に変えるべきで、第一剣なんて、人間同士ならまだしも人外相手だと効果が薄いもんです」
その通りだ。
ゴブリンやウルフのような小物相手ならまだしも、熊のようなモンスターの場合、なまくらな鉄の剣では、毛皮を切り裂くことができない。
この女のように、重めの斧を叩きつければ、毛皮や甲殻を持つモンスターにも有効打が与えられる。
盾も邪魔にならない円盾、防具も急所を守りつつ余計な音を出さず、重さも控えめで、動きやすさを第一にしたもの。
「冒険者ってのはアホでしてねえ。脇とか太ももを露出した馬鹿女とか、剣一本で田舎から出てきたクソガキとか、そういうのでいっぱいなんでさ。でも、あの女は、色々と効率的にやってる」
ふむ。
「それに本人も社交的で、色んなパーティに臨時で入ってアドバイスを残してくようなお人好しでさあ。このまま放っておくと、人間が賢くなっちまいやすね」
「消すべきだな」
「だから今回、勇者パーティに回したってな訳で」
「良くやった。それで良い」
「もちろん、他の女共にも、勇者パーティに入れた理由がちゃあんとありやすよ」
「では、聞こうか」
「ええ、次はこの女ですね……」
コミュ障ぼっちオタク女勇者の冒険シーンと、最悪の魔王と愉快な仲間達のまったりシーンを交互に。
この魔剣の勇者編終わったら、また適当な勇者を陥れるルートか、主人公が更なる異世界を侵略する話どっちにするか悩み中です。