とりあえず、仲直りックスをしておいた。
俺がナイーブな訳ではなく、後々で違和感があるとか言われて喧嘩する羽目になるのが一番嫌なだけで、嫁らが俺のことを認めてくれるなら、俺から何か言うことはもうないのだ。
とりあえず、サスボーン・マナーの庭にあるプールで水着撮影会を行い、嫁ら全員と乱交して酒を飲み美食を楽しみ、三ヶ月ほど大騒ぎした……。
「こちらはいかがですか、ご主人様?」
「はい、あーん」
「美味しいでござるかー?」
「うんうん、うめーよ」
いやー……、クッソ楽しい。
日本人だった頃の記憶はないが、少なくとも労働についての記憶があることから、何かしら仕事はしていたと予想できる。
だが今は、MODの力と、騎士としての立場で、衣食住プラス女にも困らず、毎日遊んで過ごせるのだ。
こんなに嬉しいことはない。
それぞれが体型も性格も……キャラが異なる絶世の美女美少女が十人も俺に靡き、それらと遊んで、エロいことをして過ごせる。
立場だって、今はもう、巷ではこの大陸最強の英雄である勇者を無傷であしらったことから、新しい最強の英雄だと名高い。
ゲーム的には序盤なのかもしれないが、男の野望的な意味では、俺は今殆どのものを手にしていると言っても過言ではない……。
もうこれでクリア扱いで良いんじゃないかな?とは思うが、実際のところこれからも無限に人生は続いてしまう訳で。
永遠に酒池肉林しているのも悪くないが、それだけではつまらない。
うん、そうだ。
やはり、そうだ。
「なあ、お前ら」
「はい?」
「冒険をするぞ、付き合え」
「「「「……はい!」」」」
俺は、領地の運営を雇い入れた家令に任せて、サスボーン・マナーを出た。
そして、まずはサスボーンでのクエストをこなしていくことにしたのだった。
ゲームをやったとしても、やっていることは基本的に人助けやお使いとかなのだから、ゲームが現実となったようなこの世界でクエストと称して人助けをやるのは間違いじゃないな。
俺は、四頭立てのバスみたいにでかい馬車に乗り込み、嫁十人を引き連れて、村の広場に出た。
すると、どうしたことかと村人達が出てきて、村長である中年の男が飛び出してくる。
「こ、これは領主様!な、何かありましたか?」
どうやら村長は、完全装備の俺が嫁を全員引き連れて出てきたことに、驚き慄いているようだった。
無理もない、普通に怖いもんな。
「何か悪いことが起きた訳でも、お前らに罰を与える訳でもない」
俺は言った。
すると、その言葉に胸を撫で下ろした村長がもう一度、じゃあ何で?と問うてくる。
再び俺は話した。
「退屈凌ぎに冒険をしようと思う。しかし、領地の問題を放置したまま冒険の旅に出続けるようでは、領主としての責任を果たしているとは言えない」
「は、はあ」
「なので、まずはこのサスボーンで冒険をしようと思う。サスボーンの、危険なモンスターや盗賊を討ち倒すのだ」
「な、なるほど。視察を兼ねたモンスター退治の旅ということですね。それは、大変ありがたいお話です」
「この街には、冒険者ギルドもないことだしな。モンスター退治にも苦労しているだろう?俺が解決する。村長は今すぐ、この村で困っている人々を集めてこい」
「は、はいっ!ただいま!」
まず、一人。
村長が前に出た。
「ん?村長が困っているのか?」
「は、はい。まずは、村全体の問題をお話ししたく……。私は村長のモリソンと言います。実は最近、村の近くにサイクロプスの番いが棲みついているのです」
ほう。
サイクロプスか。
「サイクロプスとは、一つ目の巨人のことだな?」
「はい、そうです。奴らは、放牧している村共用の牛を食い殺したのです!牛がいなくては、畑を耕せません!倒そうにも、強過ぎて我々の手には負えず……!」
なるほどな。
「牛だが、食われたものはもうどうしようもない。それは諦めろ。しかし、サイクロプスは倒そう」
「おお、ありがとうございます!」
「しかし、牛が足りずに労働力が足りないとなると、税を集める俺も困る。故に、この街での冒険が終わり次第別の土地に行くのだが、そこから牛を買ってこようと思う」
「なんと!ありがたいお話です。それで、お支払いは……?」
「領地を守る為だから不要だ、と言いたいところだが、タダで動くのは好ましくないな。金貨三十枚は出してもらおうか」
「それくらいならば、傭兵団を雇うのよりも安いくらいです!分かりました、村で金を集めておきます」
「よし、それで良い。それと、牛の件だが、何頭やられた?」
「二頭ですが」
「では、四頭買ってきてやろう」
「ほ、本当ですか?!」
「しかしその代わりに開墾を頼みたい。サイクロプス含めて、近隣のモンスターを掃討するからな。開墾した土地は、部屋住みの次男三男に与えて、村を拡大しろ。無論、開拓した土地はしばらく税を免除するぞ」
「分かりました!」
おっと?
ドロシーが耳打ちしてきたな。
「牛ですが、こちらで召喚しましょうか?」
「は?召喚?」
あー、なんかあったな。
家令に頼むと、家畜をどこかから買ってきてもらえるシステム。
アレは確か、いちいち移動して方々から家畜を買うのはだるいからとゲーム的な手間省きシステムだったのだが、虚空からいきなり家畜が出るのはリアリティがないからと後々に公式が、金銭を触媒にした召喚魔法みたいな感じのアレですと決めたやつ……。
「使えるのか?」
「はい。ただ、使用する金貨はヴォルスランドのものでなくてはなりませんが」
なるほど、実質無限ってことね。
「村長、事情が変わった。牛は今すぐ出そう」
ドロシーが引っ込んでいった。後で牛を連れてきてくれるだろう。
「は?はあ、分かりました」
「他に、困り事がある者は?」
俺が村の広場に集まった村人達に呼びかける。
すると、一人の老婆が手を挙げた。
「実は、去年のマヌル川の増水で、小舟が流されてしまったのですじゃ」
「舟を用意すれば良いのか?」
「それが……、それだけではなく、マヌル川の船着場にサハギンが……」
なるほど。
サハギンとは、半魚人的なアレだそうだ。
水中では人の倍以上のスピードで泳ぐ人型の化け物で、それだけの泳ぎの速さに相応しいフィジカルを持つ水泳ゴリラらしい。
「では、討伐してこよう。舟は何に使うものだったんだ?」
「漁業ですじゃ。小舟で網を引いて、トラウト魚を獲っておりますじゃ」
「獲れた魚はどうしていたんだ?」
「村で売ったり、干し魚にして行商人に買い取ってもらったりですじゃ」
「よし、舟も網も用意する。但し、今後は干し魚を作る量を増やして、もっと稼いでもらうぞ。そして課税もする」
「ははあっ!分かりました!」
「他は?」
中年夫婦が手を挙げた。
「よ、よろしいでしょうか、領主様。私達は木こりなのですが、森の中にある休憩小屋付近に盗賊が……」
盗賊か。
この世界では、人間は大して強くないからつまらんね。
「分かった、殺す。その代わり、村は今後開墾されて人が増える予定だ。なので、木こりの負担も増えるだろうから、その時に恩を返してほしい」
「ははっ!」
「他は?」
「はいはい!はーい!」
小さなガキが手を挙げながら駆け寄ってくる。
「領主様ってつええんだろ?!オレに剣を教えてくれよ!」
「コラっ!ミッチェル!領主様になんて口の利き方をしてるのっ?!」
「いでぇー!何すんだよ、かーちゃん!」
横から出てきた母親らしきおばさんがガキの頭を引っ叩いて回収した。
「剣を教えるに足る程の人間になることから始めろ。毎日しっかり食事して、夜はよく眠り、たくさん運動して、よく働くんだ。そうしてちゃんとした大人になれば、うちの兵隊にしてやる」
母親に抱えられながらも俺に手を振るガキを見送って……。
「他は?」
もうないか。
よし、じゃあ行くぞ。
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《サスボーンの守護者》
・サイクロプスを倒す
《保障の費用》
・牛を六匹届ける◯
———クエスト成功
《小舟に乗った気持ちで》
・小舟と網を提供する◯
・サハギンの群れを倒す
《サスボーン:盗賊退治》
・サスボーンの森の盗賊を退治する
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そしたらもうすごいんすよ、ジムが改装されてて。
機材の使い方動画を垂れ流すパッドが設置されてたわ。
あとよく分からん新機材も増えてたけど、俺としては、他の地区の店舗にはあるという噂のプロテイン飲料が飲めるサーバーとかが欲しいんですが……。
あとランニングマシンは待ち時間長いからレーンを増やしてくれや。
とにかく、久しぶりに運動できて気持ちがええんじゃ。実家に帰った時も痩せたと言われたので、もっとガンバルゾー!
鬱なんて大体不健康してるからなるんじゃ!運動してちゃんとした飯食ってよく寝て、仕事を適当にやってればメンタルは保てるはず……。