ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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寒いよ〜、寒くて凍えそう〜。

動いてないから寒いよ〜。


32話 コミュニケーション1

ブローナック王に、「君頑張り過ぎ!次の戦争には呼べないからね?」とこっそり言われたので、俺はしばらく領地運営に専念することとした。

 

思えば、こちらの世界に来て二ヶ月程度が過ぎたが、なんだかんだ忙しくて嫁らと触れ合えていない。

 

ヤることは当然のようにヤってはいるんだが、それはそれとして、だ。セックスは究極のコミュニケーションなのかもしれないが、だからと言ってそれだけやってりゃいいってもんでもない。沢山栄養あるからと言って牛乳だけ飲んでりゃ良い!とかではないように。

 

そんな訳で朝。

 

俺は、食事を共にしている嫁らに言った。

 

「俺は、俺の認識では最近にこの肉体になった別人なんだが」

 

「またその話ですか?」

 

エイブリーが困った顔をした。

 

「いや、それはもう、俺の中では整理できてる。ただ……」

 

「ただ?」

 

「お前らのことを知りたい」

 

「知っているのでござらんか?」

 

マヤが首を傾げる。

 

「そりゃ、お前らを作ったのは……、あー、まあMODで設計したのは俺だからな。知らないことはないと言って良い。だが、実感がないんだよ」

 

「あー……?」

 

「俺は、お前らと夫婦だった。愛してもいた。だがそれは、あくまでもゲームでの話だ。記憶はないが、もしかしたら俺も日本では結婚を……」

 

「「「「その話はやめてください」」」」

 

全員で寒気がするほどの冷たい声。

 

まあうん、気持ちは分かるが。

 

「いや、やめない。大切な話だ、聞け。……つまり、実感がないんだよ。俺はお前らのことを愛しているし、愛したいと思っているが、これが本当に俺の気持ちなのか分からない」

 

「そ、そんなぁ……!」

 

シャーロットが半分泣く。

 

申し訳ないが、聞いてほしい。

 

「だから、実感させてくれ。真剣に向き合いたいんだよ、お前らと。俺とお前達が、本当に愛し合っているんだと、俺に分からせてほしいんだ」

 

俺がそう言うと、嫁らは、なんだか覚悟を決めたような顔つきになって、言った。

 

「「「「分かりました!」」」」

 

 

 

こうして、俺は、しばらくの間嫁とのコミュニケーションを取ることにしたのである。

 

 

 

はい、俺の前に今、エイブリーとドロシー、そしてブルーナがいる。

 

「はい」

 

「ええと、この人選は……?」

 

エイブリーがエルフ耳を垂らしつつ、訊ねてくるが。

 

そんなものは決まっている。

 

「怒らなそうな子を呼んだ」

 

「あ、はい」

 

それに尽きる。

 

さて……、どうするか。

 

「今朝も言った通り、俺には実感がない。全て、ゲームの世界の出来事だったと思ってしまっている」

 

「それは……」

 

「分かっている。だから、話をしよう。時間は無限にあるんだ、沢山話し合おう」

 

「……はいっ!」

 

そんな訳で俺は、三人と向かい合った。

 

「エイブリー。ハイエルフの姫君にして、地母神ラウズに仕える神官。ヴォルスランド西大陸では聖女と呼ばれていた女」

 

銀色の髪をストレートに伸ばした、豊満な体型の美女エルフ。白い肌に青い瞳、優しげな雰囲気と母性を持つ。

 

「ブルーナ。ドヴェルグの族長の娘で、若き天才鍛治師にして発明家。地下世界では王侯も同然」

 

褐色肌に赤毛のツインテール。くりくりと大きな瞳と、子供っぽい溌剌な笑顔が美しいドヴェルグ。

 

「ドロシー。家事妖精の血を引く半霊半人のメイド。家事のために最適化された独自体系の魔法を自在に操る上に、メイドとしてだけでなく家令としての能力も持つ」

 

黒髪を眉のところで切り揃えて、後ろ髪はシニヨンにまとめた、怜悧な印象の美女。妖精らしく、神秘的な雰囲気。

 

俺がそう確認をすると、三人は頷いて……、エイブリーがこう言った。

 

「はい……。それも、貴方がMODなるもので、そう定めたから……、なのですね?」

 

「そう言う認識がこちらにはあるな」

 

「……私の人生も、全て貴方が?」

 

んん……、その辺はどうだろうか?

 

「このゲームのMODの作り方は特殊でな。人一人の人生や運命を完全に決めることはできないんだ。だって、俺も一人の人でしかないからな」

 

「人に神の力を与えるのが、MODという存在なのですね」

 

「ああ。だから、俺が決めたことは、お前が美しく、強く、聖女と呼ばれるに相応しい才覚を持つこと。それと、そうなるだけの経験を積めるような運命を用意する、と言うことだけだ。お前達の努力は『真実』だ、これは保証する」

 

「え……?ええと、ゲーム、なのですよね?」

 

うーん、そこの認識が違うか?

 

「最近のVRゲームはめちゃくちゃ凄いらしくてなあ……。コンピュータの技術的な特異点を超えて、完全に世界一つを『演算』して『再現』できるようになったらしくてさあ。俺は設定を与えたけど、世界の動きは本当のことっていうか……」

 

「……?」

 

エイブリーは分かっていないようだが……。

 

「はあっ……!良かったぁ!じゃあ、ちゃんとヴォルスランドはあったんだね!」

 

技術面に詳しいブルーナがなんか納得していた。

 

「ど、どう言うことですか、ブルーナちゃん?」

 

「エイブリー、あのね?ヴォルスランドは、パパが生きていた『ニホン』?『チキュー』?って世界の、『下位世界』なんだよ!」

 

「ああ、なるほど!」

 

下位世界、か。

 

ヴォルスランドで……、いや、こういうオープンワールドゲームで例えるならば、DLCで追加されるような『新マップ』だろう。

 

ヴォルスランドでは、とんでもない実力を持った大魔導師が、本の中に世界を作った!などという、『鏡の国編』なんてのがあった。

 

つまり、このゲームの設定では、「その気になれば世界は作れる」ってこと。

 

「鏡の国を作った大魔導師も、鏡の国の中で遊んでいたらしいですからね。つまり、旦那様もそうだった、と」

 

「そして、何かの弾みで出られなくなっちゃったんだねー。ちょっとおバカっぽいかも!」

 

エイブリーとブルーナは、そう言って笑った。

 

「では、ヴォルスランドの創造についても、ご主人様がおやりに?」

 

ドロシーが訊ねてくる。

 

「いや、ヴォルスランドそのものは『ゼベク・ソフトワークス』の製品だな。俺達ユーザーは、MODという装置のようなものを通して、その世界を改変できるんだ」

 

「……つまり、並行世界がある、と?」

 

あー……?

 

まあ、そう、なるの、か?

 

「そうだな。お前らがいないヴォルスランド、滅んだヴォルスランド、俺のような『契約者(ミスラス)』が闇に堕ちているヴォルスランド……。色々あるんじゃないか?」

 

「なるほど……。でしたら、ご主人様に感謝を」

 

は?

 

「何でだ?」

 

「私めと、出会ってくださいまして、ありがとうございます。私めはそれだけをお伝えしたかったのです」

 

「私もです!旦那様のお陰で、旦那様と会えた!」

 

「アタシからも、幸せをありがとう!感謝してるよ、パパ!」

 

んん……。

 

「……やっぱり、お前らのこと、好きだなあ」

 




今はプログラマ転生を4話ほど書きました。

スラム街にショッピングモールを建てる話と、その陰に商業国家の妨害が!みたいな話。


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