学生時代は確か、ラ王の袋麺を狂ったように食ってた時期があったけど……。
出てきたのは、まあ、やはりと言うべきか。
王侯貴族と言うよりは、戦士という雰囲気の大男だった。
筋肉でムキムキ!ではなく、適度に脂肪を乗せた巨漢、プロレスラーって感じの風貌で。
赤い髪をざっくりと刈り揃えて、髭をたくさん蓄えた、デカいドワーフみたいなオヤジだった。
そんなアスレッドの王、ブローナックは、大きな目玉を見開きこちらを睨め付けてきた。
何これ?威圧されてんのか?
俺の方が確実に強いし、身体も大きく、武器も多い。
怖がる必要性がないな。
俺はそのまま、声をかけた。
「俺はあんたの娘を守り、ここまで送り届けた。それに対する褒美がその視線なのか?」
礼を失している。
それは自覚しているが、よく考えてほしい。
何故、自分より弱い奴らにペコペコ頭を下げなきゃならないんだ?
それは、俺のプライドが傷つくってだけじゃあなく、俺を慕ってついてきてくれている嫁達の格を下げる行為だ。
礼節を重んじるのは日本人の美徳だが、偉い人は偉そうにするのが本来正しい人の在り方だろう。
「ほう、貴様!儂に対して頭を下げないのか!」
大きな声を張り上げて、ブローナック王は玉座から立ち上がる。
「認識のすり合わせをしたい。そちらにとって、『娘を救われた』というのは、どれほどの価値があることなのか?まずはそこからだ」
「……肝の座った男だな。余程、腕に自信があると見える」
「その辺りの話をするならば、今ここでお前を殺すのに一呼吸あれば充分なくらいだからな。俺を脅しつけて報酬を払わない、なんて真似は許されないと思え」
ブローナック王は笑った。
「儂を殺すか。できるか?」
王は周囲に目線を向ける。
護衛の、側近らしき騎士が四人。王のすぐ側にいる。
その上で、城の広間の入り口に、衛兵が二人。
広間から別の部屋に繋がる扉が四つあり、そこにそれぞれ二人ずつで八人。
腰に斧を吊して、戦えそうな雰囲気の王本人。
合計で十五人か。
できるか、と聞かれれば……。
「試してみるか?」
と、答えてやるか。
やれってんならやって見せるけど?
「……その目。本気だな?本気で『できる』と思っている男の目だ」
あへぇ〜……。
目を見れば分かる系のアレ?
んな訳ねーだろ。
人間は目線を合わせあっても何も分かり合えねーんだよ。
ニュータイプだって分かり合えずに殺し合ってただろうが。
まあ、そう思われても不都合はないのでスルーするが。
「良かろう。儂の大切な娘を救った礼ならば、欲しいものを何でもくれてやろうではないか」
ほーん、何でもね。
国くれっつったらくれんのかよ?
いや、要らないけどさ。
「じゃあ、立場が欲しい」
「立場?」
「身分だ。俺を騎士にしろ」
「ほう?儂を殺せるほどの力を持つのに、儂に仕えたいと言うのか?」
「例えあんたを殺して国を簒奪したとして、それで民が従うか?言うことを聞かない民をいちいち捕らえて、殺して回るか?俺は面倒は嫌いだ」
「ふむ、初歩とはいえ統治を解するか。騎士にしては学もあるようだ」
まあ大卒ですし。
「俺は、俺とその嫁達が食っていけるだけの食い扶持があればそれでいい。どこか辺境の村でもくれれば、あとは勝手にこちらでやる。従軍も、しろというなら俺が出て、嫁と一緒に砦の一つや二つなら落としてやるよ。税も納める」
「ふむ……、村の代官を兼ねた騎士か。従軍と納税の義務も果たすのならば、こちらとしても文句はない」
じゃあ?
「……よかろう!貴公に騎士の位を与える!土地の選定などについては後日行い、顔合わせを兼ねた式典は一月後に行うこととする!」
「分かった」
次の日。
俺はまたもや、ブローナック王と顔を合わせていた。
城に泊めてもらっていたので、朝から呼び出されたのだ。
何でも、アーデルハイト姫が無事に戻ってきたことを祝うため、そして俺の仕官のお披露目を兼ねた宴を近日中にやるので、それに参加しろと言うことらしい。
申し訳ないが衛生観念ガバガバの飲食物を口にしたくないため、断りを入れようとした。
すると、王が出てきてこう言った。
「流石に、宴に特別な理由もなく出席できんと言うのは、臣下になる身の者として相応しくないのだが」
まあうん、それはそう。
戦士階級だもんな、バリバリの体育会系だ。
飲み会が断れるはずもない。
「ではせめて、俺が食う飲食物はこちらで用意させてくれ」
「毒でも盛ると思っているのか?!この儂がそんな卑劣なことをするとでも?!」
いきり立つ王。
気持ちは分かるが……。
「いや、この国の料理は舌に合わなくてな。口にした瞬間に吐き出してしまうかもしれん。それは、食わないよりも礼を失しているだろう?」
「何と……、そうなのか。確かに、吐き出すのは無礼だが……」
「宴は近いうちにいつかやる感じなんだろ?もう既にメインディッシュはあるのか?」
「いや、家畜を潰そうと思っている」
「それなら、俺が森で鹿でも仕留めて、それをこれから来る妻と俺が調理しよう」
「狩猟は水物だぞ、そう簡単に仕留められるか?」
「やってみせる。ここいらで最も旨い獣は?」
「それならば、ヴァルツァの森に出る『アーマーディアー』だな。鎧のような甲殻を持つ大きな鹿なのだが、身体は矢を通さぬほど頑丈で、群れで行動するモンスターだ」
「分かった。妻が来たら、俺は森に行ったと伝えてくれ」
「良いだろう」
話がまとまった。
狩りに行くか……。
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《市民の証》
・市民権を手に入れる◯
———クエスト成功
《傭兵の栄光》
・傭兵ランクを「銀」にする×
・オプション:傭兵ランクを「金」にする×
———クエスト失敗
《きらきらの金貨》
・土地を買うための金を手にする×
———クエスト失敗
《貴族の護衛》
・アーデルハイト姫をアスレッド王都まで護衛する◯
・オプション:世話役のレオナをアスレッド王都まで護衛する◯
———クエスト成功
《宴のメインディッシュ》
・ヴァルツァの森でアーマーディアーを五匹狩る
・アーマーディアーを調理する
・オプション:魚モンスターの肉を提供する
・オプション:鶏モンスターの肉を提供する
・オプション:ほうれん草を提供する
・オプション:ニンニクを提供する
・オプション:タマネギを提供する
・オプション:キャベツを提供する
・オプション:デザート類を提供する
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昨日もらった感想に、「建築物や衛兵の話たすかる」みたいなのがあって嬉しかった。
実際、ファンタジー世界の設定を構築しても、こんなん誰も見てないだろ……と若干思っていたので。
自作、主人公の差別意識が滲み出るモノローグで、現地世界を面白おかしく罵倒するシーンが多いので、そこを受け入れてもらえるのはかなり嬉しい……。
現在、この作品は37話まで書けてたんですけど、もう1話書きました。38話で一区切りだけど、もうちょい行くかなあ……。
他者視点とか嫁の視点とかいるかな……?いるなら番外編じゃないけど、他人視点を絡めて主人公の英雄っぷりを語れるけど、ぶっちゃけ作者が読者として他の小説を読んでる時は、あんまり他者視点いらねーよって思っちゃうんですよねえ。作者としては他者視点を書くのは楽しいし、世界観設定を開示しやすいんですけど……。
んー、ちょっと悩む。