ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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バーキン行きます。


14話 実績:世界破壊

「うえっ……、臭くて酸っぱくて、美味しくありませんわ……。レオナ、この黒いものは本当に食べ物なんですの?」

 

「はっ、アーデルハイト様。こちらは、農民の食卓に供される標準的なパンにございます」

 

「黒くて硬くて、食べ物じゃないみたい」

 

「それにつきましては、黒麦という下等な作物がありまして、この黒いパンはそれで作られているのです」

 

「まあ、下等な?どうして、皆、美味しい白パンを食べないのですか?」

 

「食べられないのです、アーデルハイト様。農民達にはそれだけの富がありません故」

 

「そうなのですか。農民の方々は、あまり頑張って働いていないようですね……」

 

「は、はっ?ええと……?」

 

「あら?頑張って働けば、お金が儲かるのでは?お金が儲からないのであれば、富がないのであれば、それは頑張って働いていないと言うことなのでは……?」

 

村の広場に、豪奢な馬車。

 

車体に淡い色のビロードが張られ、金糸で百合の花が刺繍された、高級なもの。

 

そこには、「たおやか」という表現がぴったりの、世間知らずそうな貴族の娘と、世話役らしき女。

 

それを守る六人の騎士がいた。

 

それに対して、蔓草の短剣団は……。

 

「今だ!やれっ!」

 

あ、クロスボウで射掛けやがった。

 

二十人の傭兵が、周辺に立つ護衛らしき騎士達を射抜く。

 

……なにこれ?

 

「敵は崩れたぞ!畳みかけろ!」

 

「「「「うおおおおっ!!!」」」」

 

騎士達は、この世界の時代感覚に似つかわしくない、十五世紀程度のプレートアーマーを着ている。この時代相応の鎧ならサーコート(鎖帷子)になるはずだが……?

 

……その辺は、モンスターの襲撃などがある世界であるし、武具の発達は早かったのかもしれない。気にしないでおこう。

 

だが、単なる鎖の服であるサーコートと比べて、プレートアーマーは一体型の鉄板を重ね合わせた甲冑。防御力は鉄塊の如し。

 

弓矢や剣戟であれば、容易く弾いて防ぐだろう。

 

しかし、流石に、貫通力の高いクロスボウの斉射で体勢を崩されたところに、倍以上の頭数の傭兵達が現れ……。

 

「はあああっ……、『ストロング・パワー』!!!」

 

「うおおおっ!『シャープ・エッジ』!!!」

 

魔法でその身を強化してからの、高威力な攻撃を放たれた今、蹴散らされてしまった。

 

そして……。

 

「ひ、ひいっ!な、なんですか、貴方達は?!」

 

「ううっ……、お、お退がりください、アーデルハイト様!」

 

貴族のお嬢様と、それを庇う、肩にクロスボウのボルトが突き刺さったお付きの女。

 

首を傾げる俺に。

 

「さあ、騎士様。こいつらを殺せ」

 

蔓草の短剣団、団長のカシューは、こう言ってきた……。

 

「はぁ?」

 

あ?あーーー、ああ。

 

はいはい、なるほどね。

 

盗賊退治。

 

貴族は、国富を掠め取る盗賊。

 

つまり、そういうことか。

 

んー、相変わらず手動更新のジャーナル君は何も答えてくれやしない。

 

いきなりこんな重要クエストを投げてくるとは、オープンワールドゲームとして失格が過ぎるだろ?

 

まずこういうのは、最初は共通ルートで進めて、各陣営全てに両属できる状態にしておき、終盤で旗色を明らかにするってのが、マルチエンド式のオープンワールドゲームの正しい所作だろ。

 

んー。

 

どうすっかな……?

 

「どうした?早くやれよ」

 

常識的に考えて、こいつらは普通にテロリストだ。

 

貴族に対して攻撃しようなんざ、まともじゃない。

 

付け加えて、女子供を奇襲して殺そうってのが気に入らんな。

 

そりゃ、女子供を大切に!とかではない。どこで誰が死のうとどうでもいい。

 

ただ、戦えない奴から優先的に殺そうとするのは「戦士」の作法ではないだろう。

 

ついでに言えば、自分の手を汚さずに、他人にやらせようってのもムカつく話だ。

 

……俺は、この世界への転移によって、地球での記憶を全て失っている。

 

いや、地球の知識や、学んだこと、「正しい」と思える思想などはあるが、俺が地球でどんな仕事をしてどんな名前でどんな知り合いがいたか、そういう個人的なデータは思い出せないのだ。

 

なので、判断の基準は。

 

この肉体。ヴォルスランドに生きた大英雄、ブラッド・ミスラスのものとなる。

 

そして、ブラッド・ミスラスは。

 

「お前らのその腑抜けた惰弱さは許せんな」

 

戦士の心、「戦う意志」の無い者を軽蔑する……。

 

「何を言っている?!」

 

「貴族が気に食わない!それは良い、考えるのは個人の自由だからな。だから殺す!それも良い、意思ある存在ならばやりたいことをやるのが正しい」

 

「だから俺達は……!」

 

「だが」

 

大剣を抜き、地面に刺す。

 

「っ?!」

 

「だが、気に入らないからと言って、本人に直接訴えずに女子供を殺そうというのが気に食わん。やるのなら、その貴族とやらを直接、正面から殺しにいけよ」

 

「そんなことをして、ただで済むと思うのか?!」

 

「まあ、玉砕……。死ぬだろうな」

 

「ならば!」

 

「で?それが何か問題なのか?己の意志を貫いて死ぬのならば本望だろうが。生きるか死ぬかは関係ない、お前も戦士ならば、自分の信条に殉じて戦えよ」

 

「クソッ……!お前ら、囲め!」

 

おっ、敵対っと。

 

じゃ、殺すか。

 

巨大な剣。

 

ドラゴンの脊柱とオリハルコンを使って作った最強の大剣、『龍帝の大剣』……。

 

正確にゲーム的な表現をすると、「《神話の》龍帝の大剣+++(致命)(剛力)(粉砕)」だ。

 

まあうん。

 

ゲームの、MOD込みでの攻撃力で、システム上可能な限界値を突き詰めてみたアイテムだな。

 

野良ドラゴン位なら「えびせんべい」くらいの勢いで叩き斬れるぞ!

 

それを人に振るうとどうなりますか?

 

———《戦いの咆哮》発動

 

「ゥウオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

音の衝撃、爆轟。

 

俺のウォークライは龍の咆哮に等しく、あまりの音量と勢いは、物理的な破壊力となる。

 

近くで俺を囲む、蔓草の短剣団の団員達は、耳から血を流しつつ吹き飛んだ。

 

そして、龍帝の大剣……。

 

『身体強化』『腕力増強』『魔力纏わせ』『暗黒の刃』……、バフ魔法発動。

 

———《龍帝の覇道》発動

 

———《戦神の斬り込み》発動

 

———《致命的破壊力》発動

 

———《絶殺の一撃》発動

 

思い切り、振り、抜く!

 

瞬間、轟音。

 

赤黒い闇、死の一閃、破壊の火柱。

 

龍帝の大剣が描いた斬撃の軌跡、その十倍の巨大な黒いひび割れ。空間そのものの損傷。

 

あ、あわわ……!どうしよ、世界を斬っちゃった……!

 

思いの外、俺の全力がヤバ過ぎて、「俺またなんかやっちゃいました〜?」みたいなネタにもできねえ!

 

ってか、ヴォルスランドって丈夫だったんだな?一応神話の世界だもんな?本当に申し訳ありませんでした。

 




年末だー。

何もイベントがないから時間が過ぎるのがはやい!

大人ってつまんないんですねえ!



それはそれとして魔法チートものを書きたい感。

本当は最強の魔法使いだけど、めんどくさいので一地方の薬師に留まっているというよくある文脈のファンタジー日常もの(たまにバトルあり)!

某バスタードソードの人を発端に、チラホラとそういう流れの小説が出てきましたので、俺もやりてえなあ、と。

吼えろペンで島本先生が、素人がプロの作品をパクっても下手過ぎてバレない!みたいなことを言ってたのでいけるいける。

でも実際、見たいかどうかと言えば見たいでしょ?

静かなるドンみたいなノリで、普段は一般通過サラリーマンだけど実は……みたいなの。

腕のいい薬師として、二十五の若さながら小さい庭付きの屋敷を街の中に構えて、奴隷の魔族ロリに「流石ですご主人様!」と持て囃されながら、冒険者としても腕利きと周りから一目置かれる……。

固形石鹸を開発して、その製作法を知り合いの貴族の庶子に売り渡して財を成し、女冒険者からは石鹸の作り手として感謝されてモテモテ。

屋敷兼薬屋である自宅では、奴隷魔族ロリちゃんが店番をしてくれるので、主人公は陰でこっそり魔法を使ってたくさんの薬や石鹸を作り置きしていて、普段は遊んで暮らしている。

年末年始は転移魔法で遠出して、遠方のダンジョンを一人で攻略。ダンジョンから取れた魔力結晶を使って、魔道具作りを陰でやるのが趣味。

その他にも、冒険者であれば狩猟権が得られるので、それを利用して鹿狩りなどをし、その肉で旨い料理を作って奴隷ちゃんや知己の女冒険者達にふるまう。

女だけの冒険者クランとも仲良くて、若くて強くてインテリで金持ちで安定した稼業がある主人公に、不安定な仕事をしている上に女ながらに冒険者になるような子達はみんな露骨な秋波を送ってくる。

あーありがち!だけどそういうのでいいんだよ、そういうので!

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