ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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寒過ぎてサミュエル・ロドリゲスになったわね。


11話 事務作業

一方、ルーネンブルグの街の広場では、発明家とメイドの二人組が、商店を冷やかしつつ、主人から与えられたMODアイテムを試していた。

 

「これ、凄いよねぇ。原理は分からないけど、どこでもお店が開けるなんて」

 

「世界の『理』に介入する神、『MOD』による産物なのだと、ご主人様は仰られておりました。神造具の理論は、ドヴェルグであるブルーナ様にとっても理解の外にあるもの、ですか?」

 

「あっはっはー!ドロシー、違うよ〜!アタシに分からない絡繰なんてこの世にないもん!」

 

「……つまり、どういうことでしょうか?」

 

「んー……、そうだねえ。例えば、この、『お店屋さんキット』っていう道具だけど……、何の魔法も、絡繰機構もないんだ。なのに、ポッケに入るくらいの大きさのカードを使うと、いきなりこんなふうな屋台が出てくる」

 

「……なるほど。では、『あり得ないもの』ということですね」

 

「そーいう事。多分、アタシでも感知できないくらいの上位存在の作った物なんだろうねえ。凄いねえ、そのMODとかいう神様は」

 

「何でも、わたくし達を造るように生命の神を唆したのも、MOD神なのだとか……」

 

「へえ、そうなの?じゃあ、素敵な旦那様と逢わせてくれた神々には、ちゃんと感謝しなきゃね!」

 

神秘が絶えつつあるこのアルザードの地においては非常に珍しいドヴェルグと、シルキー(家事妖精)の血を引くメイドの二人組は、その圧倒的な美貌も相まってか非常に目立っていた。

 

「へへへ……、おい嬢ちゃん?ちょっと来いよ」

 

なので、こうして男達に絡まれるが……。

 

「えい」

 

「んっぎ、ぎぃいやあああああっ?!!!!」

 

ドヴェルグの美姫、ブルーナが、街のど真ん中で成人男性の腕を「捩じ切った」為、舐めた口を利く者はいなくなった。

 

人の肉と骨を純粋な握力で握り、そのまま千切り取るなど……、尋常な力ではない。

 

その示威行動に街の悪党共は警戒をして、迂闊な手出しはできなくなっていた。

 

街の人口は数千人程度なのだ、噂なんてすぐに広まる。

 

既に先程から、『外国の騎士』の『お供の美姫達』だ!などと、道のそこらで囁かれており……。

 

「これ、おいくらですか?」

 

「あ、ああ。山りんごなら、一籠でリューン銀貨一枚だよ」

 

「リューン銀貨……、その銀貨が、この国で一般的な貨幣なのですね」

 

「そうだが……?」

 

「今は持ち合わせがありませんので、どこかしら物資を買い取っていただける店舗をお教え願えませんか?」

 

「古物商のことか?それなら、あそこの『壺と松明』の看板の店に行くと良い」

 

「ありがとうございました」

 

 

 

広場で野菜を売る中年に礼を言い、そのまま古物商の店舗に入る二人。

 

そこには、髭を伸ばした中年がいた。

 

いや、黒髪に白髪が混じったその姿は、中年から老人に差し掛かる最中……、壮年と言うべき男だった。

 

「何じゃ、お主ら?」

 

店主であろうその壮年の男は、訝しげに訊ねる。

 

当たり前だ、こんな美人など、店を開いて以降一度も来店したことがないのだから。

 

「売りたいものがいくつかございます」

 

しかしそんな様子の店主を無視して、メイドの美女ドロシーは無表情でそう言いつけてくる。

 

「こちらになります」

 

ドロシーが懐から出したのは、ヴォルスランド……ゲームの中の世界ではごく一般的な、『クリスタリウム』の短剣だった。

 

「何じゃあ、こりゃあ……?!」

 

「粗製品ですが、おいくらほどで売れますか?」

 

「粗製品?!これが?!」

 

クリスタリウムは、ヴォルスランドにおいてはエルフ達が好んで使用する青水晶のような金属で、非常に鋭利で魔力をよく通し、ガラスのように軽量であることが特徴である。

 

ヴォルスランドにおいては低級の金属で、この短剣はその辺の盗賊団が持っていたもの。

 

「こんな芸術品に、値段なんてつけられんわい!」

 

しかし、このアルザードの地においては、この世のものではない幽玄の金属であった。

 

向こう側がうっすらと透ける蒼白の薄刃に、黄金の装飾と木製の持ち手が付き、柄頭には宝石が嵌め込まれている。

 

宝石も黄金も、ヴォルスランドでは二束三文……と言うほどではないが、そこまでの奢侈品という扱いではない。

 

一方でアルザード大陸においてのそれらの価値は、出土量の総量が少ないことから来る希少さと、貴族などの上位者達が好んで買い漁る品薄さが相まって、ヴォルスランドにおける価値の少なくとも十倍はあった……。

 

「とにかくそんなもん、うちの金庫ごと渡したって払えんわ」

 

そう言って断りの言葉を投げかける店主。

 

それに対してドロシーは、少し悩んでこう返した。

 

「では、こちらはどうでしょうか?」

 

そう言って懐(インベントリ)から出したのは、薪割り用の斧。

 

鋼鉄製のものだった。

 

作業用のもので、馬車にいくらでも積んである備品のようなものである。

 

「これは……!ひょっとして、鋼かのう?」

 

「はい」

 

「モノが良い、これならリューン銀貨四十枚で引き取るぞい」

 

「では、それで。金額の方はもう少し勉強しても構いませんので、よろしければ物価についてのお話もお聞かせ願えませんか?」

 

「ふむ……、まあ、ええじゃろ。今日は客もおらんし、この斧の買い取りだけで良い儲けになったからのう」

 

「ありがとうございます」

 

古物商と会話を始めるドロシーに、ブルーナはこう言って退室した。

 

「あ、それじゃあアタシ、売れそうなものを馬車から持ってくるね」

 

 

 

こうして、街では発明家とメイドのコンビが活動をし、ブラッドの役に立っていた……。

 




現在は、ダンジョンものの続きを書いております。

世界樹の冒険が楽しくてつい……。

世界樹1はクリアして、今は2やってます。

自作では、ダンジョンは大神ユピテルがこの世に置いた大門から入れる別世界で、ダンジョンを制覇したものはどんな願いでも叶うとか世界の王になれるとかフワッとした噂話はあるが、実際、誰も制覇したことがないって設定なので、実は地球でした!とかできなくて面白くないなあ……。

ダンジョンに棲む別種族とかも出せそうにない。

ダンまちみたいに知性あるモンスターとか出すべきかなあ……?

勇者編が終わったら、ギルドで実際にどんな依頼が出ているのか?とか、前に弟子にした雑魚冒険者達と浅層でおつかいする話とか書きたい。

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