ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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寒くない?

え?こんな寒かったっけ?


9話 尊き労働

実は、冒険者ギルドの依頼票というものは、常に全てが綺麗に片付く訳ではない。

 

難易度が高い依頼、面倒な依頼、危険な依頼……、そう言ったものは放置されがちだ。

 

緊急度の高い依頼は、ギルド側が信頼する「銅」クラス以上に任せてすぐに終わらせているので、依頼掲示板に張り出されたまま埃をかぶっているような依頼票は、即ち厄介であるということになる。

 

その分、その厄介なことをこなした場合は、ギルドからの査定にプラスされるぞとギルド側は嘯くが……。

 

冒険者には学がないとは言え、彼らも阿呆ではない。

 

いや、そんな阿呆は、とっくの昔に死んでいる。

 

というより、こんなものは阿呆でも分かるはずだ。

 

「盗賊」「二十人」「アンドルフ砦」……。

 

羊皮紙の紙面に踊る、死のキーワード。

 

こんなものを受ける阿呆は、流石にいない……。

 

 

 

そして今、アンドルフ砦の門が吹き飛ばされた。

 

「なにっ?!」

 

「な、なんだあっ?!」

 

「うわああああ!!!」

 

本来、この世界において盗賊というものはかなり恐ろしい存在だ。

 

何せ、戦いを重ねて筋肉が増え、技術が洗練されたとしても、弓矢に貫かれて生きている人間はいない……そんな世界だから。

 

どんなに強くなっても、どんなに偉くなっても……、裸の時に鉄の剣で斬りつけられれば、どんな達人もどんな勇者も、皆須くはらわたを溢して死ぬのだ。

 

だから、数の多さはそれだけで絶対的な力で、地球のゲームのように、一人の人間が何百もの軍勢を千切っては投げ……などと言うことは、神話や英雄譚と言う名の夢物語でもない限りあり得ない。

 

あり得ないはずなのだ……。

 

 

 

アンドルフ砦の正門。

 

本来なら、破城槌という、巨大な丸太槍を吊り下げた移動式の櫓……「攻城兵器」と呼ばれるものがなければとても壊せない木製の大門は。

 

巨大な「大斧」で、見るも無惨に砕かれていた……。

 

「……何だ、脆いな。『魔法防護』もかかってないのかよ」

 

その大斧は、大の男三人がかりでもなければ持ち上げることすら叶わぬ超重量で、砦の門を砕くほどともなれば、男十人分の力は最低でも要するであろうことが容易に伺える巨大な武器だった。

 

それを、片手で振り回し……、その上もう片方の手で総金属製のイかれた大盾を保持し、更に全身に大きなフルプレートの金属鎧を着込んでいるのは……。

 

「旦那ぁ、こりゃ、俺一人でも片付くぜ?」

 

恐ろしき戦いの民、オルグ族の女傭兵、ロザリアだった……。

 

オルグ族とは、赤色の肌と白い髪を持つ人種にして、人間とは違い角が生えた……所謂「鬼」のような特徴を持つ存在。

 

女でも身長は2メートルを超えることが珍しくなく、その筋力は並の人間の三倍はある。

 

種族全体が戦士が傭兵で、十二になれば戦場に赴くのが当たり前。殺し合いができないものは劣等とされ間引かれる、苛烈な思想を持つ恐ろしい戦闘民族である。

 

それが、ヴォルスランドの厳しい環境で鍛え抜き……、百を優に超える英雄譚(クエスト追加MOD)を紡いできたのだ。

 

そして何より……。

 

「うわあああーっ!し、死ねえええっ!!!」

 

彼女達、ヴォルスランド人は、この世界の人間とは「仕様」が違うのだ。

 

「あ?は、あ……?」

 

盗賊が、鉄剣を振りかぶり、振り下ろした。

 

しかしそれが、ぱきん、と。

 

軽い音を立てて、半ばからへし折れる。

 

その鉄剣を持ち、盗賊は、間の抜けた大口開きの顔をして、立ち尽くす。

 

———《反応装甲》、発動

 

ヴォルスランドの、『スキル』を鍛え上げた者が得られる、『アビリティ』という超常の力。

 

反応装甲と呼ばれるそれは、一定のクラス以下の武具で攻撃された時、相手の武器の耐久値を大きく減少させるという自動発動型の技術にして奇跡……。

 

この世界の人間は、どんなに鍛えてもこのような奇跡は起きない。

 

いや、身体能力を強化する魔法もあることだし、一級の才能を持つ達人が、最高の装備と共に鍛えて鍛えて鍛え抜けば、同じようなことができるようになる可能性はある。

 

だが、このように。

 

「馬鹿がよ、そんなもん効くか。行くぞ……、《ギロチンの斬りつけ》……!」

 

このように、コンスタントに。

 

その分野の達人が、生涯の果てに見出すような秘技を連続して使えるのは、「あり得ない」のだ……、この世界では。

 

「ぎゃあっ!」

 

首が飛ぶ。

 

その断面は、あのように巨大で重い大斧で断ち切ったと言うのに、まるで幽体の剃刀で切り抜いたかのように真っ平。

 

脛骨までもが、まるで最初から繋がっていなかったかのように、美しく断たれていた。

 

このような『達人の秘技』が、好きなだけ使える。

 

これこそが、『スキル』を使う度に強くなり(レベルアップし)、鍛えた『スキル』から凄まじき『アビリティ』を見出す、ヴォルスランド人の力だった。

 

……ぶっちゃけた話、この世界は「戦記もの」で、ヴォルスランドから来た奴らは「アクションゲーム」の存在だという違いだ。

 

 

 

「いけませんよ、ロザリア。今回は、私達の性能の確認なのですから」

 

そう言って、首の取れた盗賊に対して、両手を使って特別な印を組む女。

 

かつてヴォルスランドに覇を唱えた大帝国「神聖王国アルカディア」の民、エルフ族の、聖女とまで呼ばれた大神官。

 

エイブリーである。

 

エイブリーは、白亜のローブを翻しつつ、魔法を行使する。

 

それは、この世界ではあり得ない、超常的な『蘇生』の魔法であった。

 

首を刈られて死んだ盗賊、その首を胴体にくっつけて、身体に優しい光を当てる。

 

すると、みるみるうちに傷が塞がり、盗賊は立ち上がった。

 

「なるほど……、蘇生は可能なようですね」

 

「えっ、あっ、えっ?!」

 

いきなり蘇生され混乱している盗賊。

 

その脳天に、エイブリーは金色のメイスを叩き込む。

 

用済みであるが故に、殺したのだ。

 

白と青を基調としつつ、金糸飾りを多用した神々しい神官服に、粘り気のある返り血が付着し、粘着質な音を立てる。

 

それを、『浄化』の魔法で落としつつ……。

 

「次は、回復魔法の実験と参りましょう」

 

 

 

その一方で、肌に張り付くような材質の、腰の中程までスリットが入ったセクシー極まりない黒ドレスを身に纏う金髪ツインテールの美少女。

 

吸血鬼のルビーは、嗜虐的な微笑みを浮かべつつ、片手でそれぞれ別の印を組み、同時並行で二種類の魔法を発動していた。

 

『鮮血の茨』『茨の血剣』

 

赤黒い液体……血液でできた茨が地面を這い回り、盗賊達を締め上げる。

 

その後、巻きついた茨が剣のように伸びてせり上がり、盗賊の全身を引き裂いた。

 

茨と、それにある棘の剣。太さは人間の手首ほどもあり、長さに至っては人間の背丈の十数倍はあるそれは、風を切る唸りを上げて、盗賊達の肉体に叩きつけられる。

 

当然、このような太く長い鞭で、途轍もない力で打ちすえられれば、苦痛云々以前に原型をとどめていられない。

 

更にその上で、茨の棘の刃まであるのだから、凄まじい打撃力と切れ味で、盗賊達の肉体はバラバラになっていた。

 

触腕のように蠢く茨で、盗賊達を引き裂きながら絞るルビーは、弾けた肉体から滴り落ちる血液を口に含み……。

 

「ぺっ……、ああ、不味いのう。やはり、ゴミ相応の血じゃ。魔も含まぬし、酒臭いし……、これなら豚の血の方がマシじゃの」

 

吐き出しながら文句を言った……。

 

 

 

「わあ、みんな凄いね。朝からやる気いっぱいだ」

 

そう言って神妙な顔をしながら、ほんわかしたセリフを吐くのは、ライカンスロープ、ウェアウルフのレア。

 

肌感覚を重視して布面積が小さい服を着た、人狼の格闘家である。

 

「でも僕は、あんまりこういう無駄なことしたくないんだけどな」

 

「う、うわあああ!死ねえ!!!」

 

盗賊の一人が、背後から矢を射かけてくる。

 

それを、首をずらすだけで、視線一つ寄越さずに回避し。

 

あまつさえ、飛んできた矢を指先のみで掴み取るという「武の極地」……。

 

それを見せつけられ、完全に怯え切った盗賊に、彼女はこう言うのだ。

 

「もう、やめようよ。苦しまないように殺してあげるからさ、抵抗なんてしないでさ」

 

「あ、ああ……!」

 

「絶対に生き残れないんだよ、君達は。大丈夫、痛くないように殺すからね」

 

そう、微笑みと共に宣告した、次の瞬間。

 

彼女は、信じられないほどのスピードで間合いを詰めて……。

 

手刀で、盗賊の首を刎ね飛ばした……。

 

 

 

「……んー、俺要らんくない?」

 

それを見ながら、主人公は独りごちた……。

 




ひょっとして、暖房をつけるべきだったのか……?

ここ最近の体調不良も寒いから……?

まあそれはそれとして、世界樹1そろそろクリアしそう。

やっぱり……、ファンタジー世界が実は荒廃から甦った地球だった!みたいな設定は……、最高やな!!!

あとD&Dの映画も観た。普通に面白かった。文句のつけどころがないが、超サイコー!ってほどでもない、ちょうどいい塩梅。こういうのでいいんだよとゴローちゃんみたいな顔になった。

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