ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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改革ラッシュが続いています。

このラッシュを一旦終わらせて、『銃の勇者ハヅキ編』に入るか、それとも先に麗国、妖精族、虫人、北方イエティの従属を先にやっておくか……。

代わり映えしない展開が続くよりは大きく話を動かすべきなのか、支配を盤石にしたことを示すために各国の支配の様子を先に書くべきなのか、迷うぞい。


32話 とある女郎蜘蛛族の供述

ええ、はい。

 

私は穢土の街に住む、茶店の娘。

 

女郎蜘蛛族です。

 

元々は嵯峨見の小さな農民に過ぎなかった私の家族は、大殿、ジン様の農地改革の煽りを受けて田を失いました。

 

このまま追い出されのたれ死ねと言うことなのかと酷く怖かった。

 

でも、穢土に連れてこられて、その考えは変わった。

 

穢土に集められた私達は、元々、手に職があるもの以外は、職業適性検査というものを受け、それを基に職業を勧められました。

 

私の家族は、「社交的、奉仕的」と評価され、対人、接客業を勧められて、家族で話し合い、茶店をやると決まった。

 

その後は、午前は文字の読み方と計算の仕方を穢土の民が一斉に習い、午後は職種による職業訓練と言う特訓を受けました。

 

そんな生活が半年程続く。

 

因みに、その間の衣食住は保証されていました。

 

しかし、定期的に試験があり、その試験で百点満点のうち三十点を下回ったものは厳しい補修と追試があったのです。

 

逆に、成績の良い者には酒や菓子などが振舞われました。

 

皆、ここで捨てられては行く場所などどこにもない身の上。必死に努力して、技術を身につけました。

 

そうして、やがて。

 

我らが大穢土は、日ノ本で一番栄える街になりました。

 

 

 

半年で、文字の読み書きと計算、茶菓子作りと簡単な料理、接客、そして経営について覚えた私の家族。

 

当面の資金十数両と茶店の建物、調理器具と家具をいただき、茶店を始めました。

 

最初の一月は、皆戸惑いがありましたが、それを乗り越えると、上手く回ります。

 

父が仕入れた材料で団子を作り、茶を淹れて、売る。

 

お品書きは、煎茶と焙じ茶、そして団子と餅、それと煎餅。

 

団子はみたらし団子、餅は中に餡子を詰めた大福餅、煎餅は海苔を貼った醤油煎餅。

 

寒い季節には善哉と甘酒もある。

 

暑い季節には、氷で冷やした麦茶とかき氷があります。

 

土蜘蛛の父は呪術を習い、日に五貫と少し(20kgほど)の氷を出せるし、その上で、団子を蒸せる程の火を三刻(6時間)は出せる。

 

私と母も多少は使えるようになったけど、父ほど上手くはないです。

 

けれど、例えば、雪女や氷柱女ならば日に数千貫の氷を平気な顔をして出すし、火車なら鉄を溶かすほどの火を吐けると聞きます。

 

まあ、つまりは、燃料や氷の代金がかからないので楽だと言う話です。

 

品物の値段は大体、どれも五文くらいですね。

 

一文につき、外国の銅貨一枚と大体同じくらいの価値だと聞きます。

 

それでは、上手く回り始めた穢土の社会の一部、私の生活を見てみましょうか。

 

 

 

朝、鐘が鳴る前に起きて、父と仕込みをします。

 

その間に母は朝食用の米を炊いて、七輪で鰯魚の干物を焼いて、糠漬けを切って、味噌汁を作っておいてくれます。

 

朝はそんなものですかね。

 

あ、因みに余り物は肥料になるそうです。

 

そうして、家族揃って朝食を食べます。

 

朝食は美味しいです。

 

昔のように、粟や稗の粥と山菜と少しの野菜や豆なんかを食べることはなくなりました。

 

穢土では武士のように毎日白米を食べられるのです。

 

できれば麦飯の方がびたみんがとれるのでそっちの方がいいとは聞きますが、基本的には白米ですね。

 

そして、朝の鐘が鳴る頃には仕事を始めます。

 

七日に二日は休みますが、連続しては休みません。

 

でも、たまには長い間店を閉めて遠くにお詣りに行くのも良いと御触れが出されていました。

 

 

 

午前の仕事。

 

人はあまり来ない。

 

午前から茶を飲むのは、夜勤明けの武士や休日を満喫している街人。

 

人が沢山来るのは昼過ぎ頃ですね。

 

さあ、お昼の時間です。店番を父に任せて、私と母は昼食の時間。

 

十文貰って外に出る。

 

今日のご飯はどうしよう?

 

昨日はお寿司だったし、今日は蕎麦にしよう!

 

蕎麦は、四文もあれば食べられる穢土っ子の好物で、鴨南蛮や天ぷらを乗せた蕎麦は特に人気。

 

私は、八文する天ぷら蕎麦を注文しました。

 

大きめの器に熱い汁と蕎麦、刻み葱が乗っている。その上に、大きな海老の天ぷらが二つ。

 

これが大穢土の天ぷら蕎麦です。

 

もっと上等な店の天ぷら蕎麦には、海老の他に、紫蘇、茄子、南瓜、人参、卵、穴子魚などの色々な天ぷらがつくそうですね。

 

まあ、私はただの街人、庶民なので、そんなに高いものはあまり食べませんが。

 

と言うか、高いものは基本的に脂っこいんですよね。

 

武士なんかは脂っこいものが好きなようで、好んで食べますけど、庶民は……。

 

さて、いただきます。

 

……うん、やっぱり美味しい。

 

つゆの染みた海老天がたまらない。

 

因みに昨日は寿司だった。その前は肉じゃが、その前は唐揚げ。

 

穢土には何でもある。お金さえ払えば、欲しいものは大体手に入る。

 

治安も良く、庶民でも嗜好品を楽しめる。

 

穢土は素晴らしい土地だ。

 

 

 

午後の仕事は忙しい。

 

最近は寒くなってきたから、善哉と温かいお茶が良く売れる。

 

大工や職人、専業主婦なんかが、昼休みの時間を作って、温まるついでに間食を楽しみに来る。

 

看板娘の私は、それに愛想よく対応します。

 

まあ?私可愛いですし?私目当てに来るお客さんもいるくらいですよ。

 

本当ですよ?

 

……まあ、うちは穢土の外れにあって、主に旅人の休憩所みたいなものとして利用されるのが殆どなんですけど。

 

純粋に菓子が食べたいなら、街の中の甘味処に行きなさい、ただし混んでいるよ、と言う訳ですね。

 

 

 

夜の食事は軽く済ませる。

 

昼に母が買ってきた惣菜とおにぎりで済ませる。

 

たまに家族全員で、少し良い店に行くこともありますね。

 

でも、基本的に夜は少なめにします。

 

あ、今日は母が買ってきた豚汁を食べました。

 

あったまりましたね。

 

そう、冬も、火鉢、炬燵や湯たんぽ、懐炉と暖かく過ごせますし、毛布も服も買えます。

 

家も、昔住んでいたようなあばら家とは違って、しっかりした作りだから、隙間風もない。

 

安心して眠れると言う訳です。

 

お金さえあれば、ストーブや暖炉でもっと暖かいそうです。

 

夜は、本を読んで過ごします。

 

灯りも安くなりましたからね。

 

将来的には、電気やガス、などを使うそうです。

 

分からないですけど。

 

何でも、モンスターからとれる魔石はえねるぎー源として効率が悪過ぎる、とか。

 

大殿が言うには、武装した人間が倒せるレベルのモンスター、例えばゴブリン一匹からとれるくらいの魔石では、二、三時間、ランプ程の明かりを灯すことで魔力を使い切ってしまうそうです。

 

非常に燃費が悪い上に、石だから重くて輸送こすとがかかるし、廃棄物も石なので邪魔だと。

 

また、モンスターの出現に依存するので安定供給もできない、と。

 

えねるぎーは、やはり電力に変換するのが一番だと大殿は言います。

 

私も、あまり難しい話は理解できませんが。

 

つまり、大殿が言うには、国中に電気の力を普及させれば、より世の中が便利になる、とのこと。

 

将来的には、外国から石油、石炭を輸入して、原子力発電所を作り、自動車や電車を走らせて、最終的には宇宙を目指すそうです。

 

 

 

将来がどうなるのかなんて、私には分かりません。

 

けど、大殿にお任せすれば、きっと、良い未来を手にすることができるはず。

 

明日はもっと良い日になりますね。

 

きっと。

 




『銃の勇者ハヅキ編あらすじ』
各国の改革と共に支配を強める最凶傭兵、ジンは、ある日、冒険者ギルドから聖王国からの手紙を受け取る。『ハヅキ・ジングージ、貴方は勇者に選ばれました』……。聖王国の神託により、銃の勇者に認定されたジンは、これ幸いと人間の支配領域を旅し、死と破壊の種を蒔く!女エルフの魔法使い、女ドワーフの戦士、女ハーフリングの斥候を仲間に、魔王のいるという魔大陸を目指す!狙うは魔王討伐!ではなく……「魔王、俺のものになれ」……!魔王の座?!

そんな長くはならない予定です。

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