13話だけど1話なので安心してください。
第13話 闇テックバトラー、アレイスター現る! Aパート
時は、2056年……、近未来。
革命的な高分子ポリマー技術によって生まれた超硬プラスチック『プラスティール』と、超小型でありながらも従来のものとは一線を画す性能を持つIC及び駆動系『フェムトIC』『マッスルモーター』、そして超高性能小型バッテリー『X(バッテン)バッテリー』……。
それらの超技術によって作られた、全長20cmほどの人型自立駆動ロボット『ロボテック』と、ロボテックを使ったバトルは、全世界のホビー事情を塗り替え、新しい時代を齎した。
ロボテックは、その小さなボディからは考えられないほどの運動性を持ち、ボディと同じ素材でできたプラスティールのバトルフィールド『センジョージオラマ』の上を駆け巡る。
そして、ロボテックを携帯端末で操作し、センジョージオラマの上で戦わせるエンターテイメント、『テックバトル』は、子供達だけでなく大人をも魅了し……。
……やがて、そのロボテックを悪用し、軍事利用や暗殺ドローンとして扱う悪の組織『バタリオン』が生まれ、彼らはロボテック開発者の『炎神英斗博士』を誘拐し、世界征服という陰謀を企てるのであった……!
しかし!
そんな悪の陰謀を防く、正義の使徒がここにいる!
行け!『炎神来斗』!バタリオンを倒し、世界に平和を齎すのだ!
〜OP「ゼンカイPOWER!」〜
第13話 闇テックバトラー、アレイスター現る!
俺の名前は、炎神来斗(えんじんらいと)!
今年の春、桜丘中学校に入学した中学一年生!
今日も楽しい一日が始まるぜ!
『おはよう、ライト!』
「おう!おはよう、ブレイズセイバー!」
ベッドから起き上がって欠伸をした俺に、一番初めに話しかけてきたのは、俺の相棒!
俺の髪と同じ赤色の、カッコよく尖ったスポーツカーみたいなボディ……。
それに、緑色のデュアルアイと頭についたツノ!
ロボテックの、ブレイズセイバーだ!
俺のとーちゃんから託されたデータを、お兄ちゃんが形にしてくれた、最高の相棒なんだぜ!
『ライト、学校の時間が近いぞ。早くご飯を食べるんだ!』
「おっと!朝メシだな!しっかり食べないと、勉強もできないぜ!」
『……勉強、していたのか?』
「……し、してたし!」
と、とにかく、俺は、自分の部屋がある二階から鞄を持って、一階のリビングへと降りて行った。
「かーちゃん!朝メシ〜!」
「お母さんは朝メシじゃありません!まず、おはようでしょ?」
「はいはい」
「はい、は一回!」
「はーい」
「伸ばさないのっ!もう……、そんなんじゃ、いつまで経っても『お兄さん』みたくなれないわよ?」
「うえっ……、それを言われるとなあ」
確かに、お兄ちゃんみたいになりたいけど……、アレは無理だよ。
家の隣にある、お兄ちゃんの家を見ながら、俺はそう思った。
お兄ちゃんは、俺と違って……、頭が良くてカッコよくて大人っぽくて優しくてクールで、抱きつくとなんか良い匂いするし、そもそも家自体がいい匂いするし、料理も上手くて外国語も話せて仕事もできて資格も色々持ってて、テックバトルの腕も一流で、女の子にモテモテで、おまけにスポーツもできて、飛び級で大学を卒業した天才で、イケメンで、家族思いで、お金も持ちで、でも嫌味じゃなくて、俺の欲しいもの何でも買ってくれて、みんなに慕われている最高で最強のお兄ちゃんだからなあ……。
俺なんかじゃ、足元にも及ばないよ。
「そうそう、お兄さんと言えば……、今日は朝ご飯が用意できなかったのよ。パートの早番があって、これからすぐに出なきゃならないの」
「えーっ!そりゃないぜ、かーちゃん!」
「だから、貴方のお兄さん……、絶斗(ぜっと)に頼んでおいたわ。今日の朝ご飯は、お兄さんのお家でいただいてきなさい」
「マジで?!やったー!」
正直、かーちゃんよりお兄ちゃんの方が料理が上手いからな!
……これをかーちゃん本人に言うとぶっ飛ばされるから言わないけど!
前に言った時は、三日間メシがめかぶだけになったからな……!
同じ轍は踏まないぜ……!
で、俺は、お兄ちゃんの家の前に来た。
西洋風って言うのかな?ヨーロッパみたいなオシャレで大きな建物の、インターホンを押す。
『はーい』
インターホンに出たのは……、お兄ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんの家の居候の女の子。
至天創永(してんそうな)さんだった。
「あ、ソーナさん?お兄ちゃん、いる?」
『ゼット君なら今キッチンに……、あ、入っていいよーだって。今鍵開けるねー』
電子制御されたドアの鍵がガチャっと開く。
俺は、靴を脱いでスリッパに履き替え、リビングまで進んだ……。
そこには。
「おはよう、ライト。朝食ができているよ。拙い料理で悪いけど……」
「おはよっ!お兄ちゃん!」
大好きな、俺のお兄ちゃんがいた!
ああ……、お兄ちゃんは今日もカッコいいぜ!
思わず抱きついちゃったけど、やっぱいい匂いするなあ……。
本当に血のつながった兄弟なのかな?
いや、お兄ちゃんは、とーちゃんと同じ白髪だし、多分血は繋がってるはず。
俺は、かーちゃんと同じ赤髪だからな。
「おー、相変わらずブラコンだねえ、凡人君」
そう言いながらパンを齧っているのは、さっきのソーナさん。
ソーナさんは、五年くらい前からお兄ちゃんの家に居候している女の人だ。
歳は、お兄ちゃんと同じ十五歳らしいけど、背が高くておっぱいが大きくて、髪が長いから、なんだか大人っぽく見える。
って言うか……、お兄ちゃんもソーナさんも、本当に二歳しか俺と歳が違わないってマジなの?
二人とも、ほぼ大人にしか見えないよ……。
「ソーナ、私の弟を凡人と呼ぶのはやめてくれ。いい加減、弟の名前くらい覚えないか」
「ごみーん!私様は天才だから、凡人の名前って覚えらんないんだ〜」
普通にひでぇ!
この人、お兄ちゃんのことは大好きのくせに、俺のことは路肩の石くらいにしか思ってねーんだよなあ……。
「全く……。ライト、冷めないうちに食べてくれ」
「あ、うん。いただきます」
因みに朝メシは、カップに入ったコーンスープに、サラダと、えっぐべねでくと?とかいうよく分からないオシャレなやつだった。それと、なんかオシャレな干し葡萄?とかが入ったヨーグルト。
まあ味はすっげえうまい。
何かこう、カフェとかホテルとかで出てきそうな感じ。
飲み物は、お兄ちゃんは大人なブラックコーヒーで、ソーナさんがコーヒーに信じられないくらいにドバドバ砂糖を入れた何か。
俺にはちゃんと、ココアを出してくれた。
お兄ちゃんは、俺がコーヒー飲めないって覚えててくれたんだ……。
やっぱ、俺、お兄ちゃんのこと好き……。
「さて、そろそろ学校に行こうか」
「うん!」
食後、俺とお兄ちゃんは、桜丘中学校に行く。
お兄ちゃんは飛び級で大学を卒業して、今は弁護士として働いているんだけど、年齢的には中学三年生。
だから、かーちゃんとの約束で、仕事がない日は学校に通うことにしているんだって。
かーちゃんは、お兄ちゃんに同い年の友達とか作って、ちゃんと子供の人生を楽しんで欲しい……とか言ってた。
かーちゃんは、普段はガミガミうるせーけど、やっぱ優しいな……。
あ、ソーナさんは来ないよ。あの人、何もやってない。
お兄ちゃん、何であんな変な人を居候させてるんだろ?
まあいいや、学校学校……。
「キャーッ!ゼット様ぁ〜♡」
「ゼット様が登校なさってるわ!」
「三日ぶりね!」
「ゼット様ったら、またこの前の『リーガルテックバトル』で勝利なされたそうよ!圧倒的な力で相手側のロボテックを叩きのめして、被告人を無罪にしたんだとか……!」
「素敵……♡」
うわあ……。
出たよ、『ゼット様親衛隊』……。
お兄ちゃんのファンを名乗る女の子達(男の子も二割くらい居るらしい)の集団だぜ。
あいつら、すぐにキャーキャー言うから苦手だ……。
すっげーうるせーし、なんか気持ち悪いし……。
こんな変なのに優しく手を振るお兄ちゃんの、気持ちが分からねーよ……。
俺も一応、会員No.0002だけどさぁ……。
「キャーッ!ゼット様が!お手を振りになったわー!」
「私よ!私に手を振ってくださったのよ!」
「違うわよ!私!私よーっ!」
うわっ、なんか戦い始めた……。
「「こうなったら、テックバトルで決着をつけるわよ!」」
あ、でも、テックバトルは見ていきたいな!
「「『センジョージオラマ』、セットOK!空間圧縮、解放!テックバトル……、レディー!ゴーーーッ!!!」」
親衛隊の女の子が懐から出した、圧縮されたセンジョージオラマのカード。
電気信号を受けて、数十倍もの大きさに広がったセンジョージオラマは、ステージが『コロッセオ』……。
障害物のない、真正面からやり合うガチンコのステージだ!
「行きなさい!『シノビート』!」
「迎撃よ!『スパルタン』!」
軽量二脚型、黒く細いボディに十文字のバイザーがついた小型のロボテックが躍り出る!
それを、丸い盾で防ぐ、がっしりとした体躯の赤い中量人型ロボテック!
くぅ〜……!
やっぱ、テックバトルは最高だぜ!
新作、行きます。
とりあえず18話程度あるので、適当にやっていきますね。