ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あー。

生きるの辛い。


16話 ドラゴン・ハント

龍種。

 

四肢と翼を持つ大型のトカゲ。

 

しかし、その大きさは、最小の種類でも全長100メートルを超える、超巨大生物である。

 

流石に、体長100メートルを超える生物を何万匹と養えるほどにこの星に余裕はない。

 

なので、龍種は、他のモンスターとは異なり、呼吸によって外部から魔力を吸い上げて生きている……。

 

それが何を意味するか?

 

それは、この世界最強の兵器である、錬金術(科学的思考)と魔法の融合品『マギアメイル』の天敵となる、ということである。

 

マギアメイル、魔導甲冑。それは、その名の表す通りに、魔法の力によって駆動する。

 

具体的には、中世期には霊薬と謳われた、モンスターの血液から生成される『エリクシア・リキッド』を消費して動くのだ。

 

このエリクシア・リキッドは、液状化した魔力の塊であり、人類種がほんのひと匙でも飲めば、失った魔力がたちまちに回復する薬品であり、ガソリンなどよりもよほど高エネルギーの燃料でもあるのだ。それでいて、かなり安定した物質で、引火性などもない。

 

しかし、龍種は、呼吸をするだけでこのエリクシア・リキッドを吸い取ってしまう。燃料タンクから揮発していくかのように……。

 

なので、この世界で龍種を狩るとなると、燃料タンクに特別な魔力密閉加工を施したカスタム型マギアメイルを使うか……、捕龍船という船に乗る冒険者が直接狩るかの二択しかない。

 

基本的に、後者がメジャーな手段となるが、捕龍船が狙うのは採算性が取れる小物龍ばかりで、本当に恐ろしい超超大型龍などは、手出しのできない天災扱いをされていた……。

 

「そんな訳で、今回俺達が狙うのはこれ。500メートル級の『火龍』な」

 

ブリーフィングルームに立体映像が表示される。

 

巨大な、火の龍。

 

大小十八の翼膜、多数のヒレ、六本の手足。凄まじい剛体に鋭い爪と牙。それを、赤い甲殻で覆った、空の帝王である。

 

学名にして、Wyvern Vulcanus……。

 

俗称、バルカンドラゴンだった。

 

この龍は、かつてまだこの世界の人類種が弱かった時代、生贄を捧げることで共同体を守る神として崇められていた存在でもある。

 

それについては、生贄が湧く場所を餌場だと思い込み、餌場を守るために駐留していたという説が今では有力だ。

 

無論、前述した通りに、龍種に食事の必要性はないのだが、食事をすればするほど成長するという性質があるので、隙あれば生物を襲うのが龍種というものだった。

 

その傍迷惑さは、まさに天災。

 

地震やハリケーンと同類の、人類には抗いきれない『現象』であった。

 

「……それに、俺達が挑むのか」

 

新人パイロットのライナルトが呟いた。

 

元冒険者のライナルトは、龍狩りの経験もある。

 

だが、ライナルトは、龍狩りについて、「どんなに金を積まれても二度とやりたくない」と公言するほどに、龍を恐れていた。

 

それほどまでに、ライナルトが経験した龍狩りは辛かったのだ。

 

遥か上空、薄い酸素、身を刺す冷気。

 

巨大な龍には、何発撃ち込んでも死ぬ気配はなく、一晩撃ち込み続けてやっと殺せた、と。

 

ライナルトはそう言いながら、難色を示した。

 

「良かったな、ライナルト!今度は一晩と言わず、二晩三晩戦って良いぞ!」

 

笑顔で告げるダニエル。

 

彼は狂っていた。

 

そして、崩れ落ちるライナルトの肩に手を置いたのは、天慈郎だ。

 

「どうでもよか。龍狩りたぁ、誉じゃ。呼ばれんでも俺は行くぞ」

 

「ジロ、そうもいかんだろう?!相手は龍種、それも天災級だぞ?!」

 

「知らん。俺にできることは、ヤットウだけじゃ」

 

「そもそも、質量差が全然違うだろうが!見ろ、この立体映像を!グリムメイルが10メートル前後に対して、この龍種は500メートルもある!五十倍だぞ、五十倍!」

 

「知らん!斬る!」

 

言い争う二人に、ダニエルは言った。

 

「今回は俺も出るぞ」

 

「「あ、じゃあ大丈夫だな……」」

 

二人は腰を下ろした。

 

 

 

核融合炉搭載式飛行船、『エバーグリーン』の機体上部に、八機の機動兵器が立っている。

 

否、エバーグリーンは複数ある。

 

十機ものエバーグリーンは、それぞれが、この世界の飛行機技術では考えられないほどの巨体を、航空力学を無視して宙に浮かせていた……。

 

『《反重力発生装置》だったか?凄まじいな』

 

ライナルトが、眉間の深い皺を更に深くして呟く。

 

『どーでも良くない?旦那のやることにいちいち驚いてたら、身がもたないよ?』

 

そう言ってグレネードランチャーを構えるのは、獅子獣人のアトラ。

 

『それもそうか』

 

そう言って、傭兵達は、それぞれがポジションにつき……。

 

『グレネードランチャー、発射!』

 

一斉に攻撃を始めた。

 

凄まじい爆風。

 

グレネードランチャー。

 

炸裂する弾頭のその威力は、この世界のそれよりも、誇張抜きで千年以上先を行っている。

 

モンローとノイマンの生み出した金属の噴流は、千年先の技術で作られた特殊合金製の弾頭と炸薬で轟々と音を轟かせながら弾け、分厚い龍種の甲殻をいとも容易く貫いた。

 

『———ォォォオオオオオオ!!!!!!』

 

遠雷のように、遅れてやってきた叫び声。

 

天災、神とまで喩えられる龍種が、痛みを受けて鳴いている。

 

『あーあ、勿体ねえ』

 

『龍の血があんなに……』

 

傭兵団員達はそう言って、次弾を装填。

 

間髪を入れずに次の弾丸を放つ。

 

瞬く間に、火龍の腹部はボロボロになった……。

 

『———グオオオオッ!!!!!!』

 

『攻撃!来るぞ!』

 

『E2へ移動!』

 

『『『『ブースター点火!』』』』

 

凄まじい火龍の息吹。

 

火炎の奔流。

 

それは、単なる火の息ではなく、高密度に圧縮された、炎のレーザーだ。

 

直撃すれば、ネクロ77型とて、大破は免れないだろう。

 

それを、グリムメイルらは、『飛行して』回避した。

 

そして、別のエバーグリーンの船体に着陸する……。

 

そう、飛行である。

 

グリムメイルは、圧倒的な出力を利用して飛行することができるのだ。

 

無論、飛行できる時間はおよそ三十秒程度の短時間なのだが、一時的とはいえここまでの機動力と跳躍力があるのは、この世界のマギアメイルと比べれば遥かに格上だ。

 

「射撃!続けろ!』

 

『『『『応!!!』』』』

 

大きく怯む火龍。

 

そして、割れた甲殻の内側から。

 

ずろり、と。

 

臓物の一部がまろび出た。

 

『あそこが弱点だ!狙え!』

 

龍種とは言え、重厚で堅牢な甲殻の中身は、柔らかな肉と臓腑。

 

そこに弾丸を叩き込まれれば……。

 

『———ォォォオオオオオオ?!!!!!』

 

龍種も、死は免れない……。

 




あー能力隠しものなー。

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