俺は鬼神、酒呑童子。
ジパング……、日ノ本の西、扶桑国の主であった。
主であったのだ。
しかし、負けて、支配権を奪われた。
戦って負けたのだ。
それも、一騎討ちで。
それならば、仕方がない。潔く臣従するのがもののふというものだ。
俺を打ち負かしたのは、深淵の王、ジン殿。
強いぞ、あれは。
人の形をした鬼だな。俺達と同類だ。
俺の身長が八尺(240cm)で、それより一尺以上は小さいと言うのに、誠に強くある。
合気という業を以って、この俺を投げ飛ばしたあの力。
俺の力は扶桑一と名高いのだが、あの男はそれをいなした。
軟弱な技と侮ったか……。
その後、下克上を狙い襲い来る武家も軽く一掃し、従わせた。
聞けば、深淵の武具を持つにも関わらず、素手で皆を打ち倒したらしい。
成る程、これは勝てぬな。
その後の統治は実に見事。
……まあ、力で全てを押さえつける鬼族の武者よりは、誰がやってもマシだという話だそうだが。
だが、既存の利益にしがみつく、境の商人達などは、何人も叩きのめされ、夜逃げしたそうだ。
ふむ……。
金勘定のことなど俺には分からぬが、国が富んでいることは分かった。
町を歩けば、民が笑っておるのだ。
俺の支配ではできんことだな。
まあ、民などどうでも良いがな。
そんなものより、ジン殿がもたらした食物や酒、道具、武術にこそ意味がある。
食物は主に肉が良いな。
あれは美味いし、精がついて力もつく。
教わったことは栄養についてだ。
蛋白質、血肉を作るもの。
どうやら、より強い肉体を作るには、蛋白質というものを食うべきなのだと聞く。
これを聞き、武士達は皆、肉と魚、豆を食らうようになった。
米を腹一杯食えば力がつくと思っていたが、まさか肉を食うべきだったとは盲点だった。
しかし、野菜も食わねば病に罹るそうだ。
びたみんなる物を食わねば、身体は弱り、死ぬとのこと。
そして、米や芋などの炭水化物を食わねば、体力が湧かないそうだ。
なるほど。
なんでも食えと言うことだな!!
酒は、良いものが売られるようになった。
鬼族にとって酒は欠かせぬもの。
たらふく飲み、食らうのが鬼というものだ。
新たな酒、清酒や麦酒やウヰスキーは美味い。果実酒や梅酒は甘過ぎて好かんが、女達には人気だった。
まあ、外れはないな。
道具で特に感銘を受けたのは竹刀だ。
あれは良い。
強く打っても怪我をせぬからな。
その気になれば、木刀で物を斬れる我らからすれば、あの柔らかな竹刀は打ち据えても人が死なんから良い。
真剣で打ち合いをすると、ついうっかり殺してしまうことがあったからな。
人が死なん、ということは兵士が増えるということだ。
成る程、確かにそうだ。
人が増えれば、兵士になる者も増えるように思える。
そして武技。
空手、柔道、剣道、弓道。
いい具合に鍛えられた。
特に、無手での戦いは良いな。
素手で物を斬り裂き、貫くとは。
実にいい、練習しよう。
まあ、民を労わるとか、よくわからんことが多いし、書類だなんだと面倒も多いが、日ノ本は安泰だ。
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妾は九尾狐の玉藻。
カムイ様の巫女で、秋津洲を統べる者でした。
ですが今は新婚の女なの。
旦那様は深淵の王、ジン様。
日ノ本に繁栄をもたらすお方ですわ。
はじめに妾の家に殴り込んできた時は何事かと驚きましたが、カムイ様はご主人様を旦那とし、よく言うことを聞くようにと命じられました。
……妾は、カムイ様の啓示がない限り結婚はしないと誓い、もう既に千年程待っていたところです。
やっと結婚できる……!!
もうっ!カムイ様っ、遅いですよ!
でも、その分、素敵な人に出会えたから良しとしましょう。
彼はあの、乱暴者の酒呑を素手で倒すほどに強く、智慧者の鞍馬よりも博識で、妾のように美しい方です。
それだけではなく、カムイ様のことも否定せずに認めて下さいました。
妾としては、カムイ様を否定されるならば、国民の最後の一人になるまで戦う気持ちでいましたが、あっさりとお認めになられるので驚きました。
かの、西の聖王国なる地では、アース教以外は認められないと聞きます。
アース教は、唯一神アースを崇める宗教で、魔人やモンスター娘は、唯一神以外から生まれた存在とし、迫害するそうです。
ご主人様は、アース教について、「カトリックの悪いところを煮詰めたクソ」と仰っておりました。はて、何のことでしょう?
カムイ様についても、「否定はしないが、信じてはいない」そうです。
それでも構いません。
カムイ様は、どんな方も見守ってくださるのですから。
ご主人様は、カムイ様について興味がおありなのか、沢山の質問をします。
「カムイ教には聖典はないのか?」
「聖典?」
「ああ、そうだな……、例えば神の言葉だったり、カムイ教の司祭などの重要人物の残した文書だったり……、そう言ったものはないのか?」
「いえ……、言い伝えや歌はありますけど、本はありませんね」
「ふむ……、その辺りはアイヌ民族に近いのか。成る程。では、儀式なども言い伝えで伝えているのか?」
「儀式?」
「洗礼や生贄なんかはないのか?」
「いえ、ありませんよ?カムイ様に祈れば、皆が信徒です」
「……んん?ないのか?カムイ教を信じる上での義務は?」
「ありません。強いて言えば、皆健やかに、人を傷つけず、隣人を愛し、家族仲良く過ごすことが義務、でしょうか?」
「……では逆に、やってはならないことは?」
「そう、ですねえ。他人を傷つけることでしょうか?」
「戦時中はどうする?」
「その時は皆、カムイ様に謝ります」
「はぁ?それで許されるのか?」
「国を守るためには、どうしても他人を傷つけなくてはならない時があります。その時は、皆、カムイ様に謝るのです。やむを得ない事情があれば、カムイ様も許してくださいます」
「随分とユルいな……。異教徒はどうするんだ?」
「異教徒?」
「他の神を信じる人間の扱いだ」
「皆、カムイ様を信じているのでは?」
「違う神を信じるものもいるだろう」
「他の神?他の神……、他の神は、いません」
「あぁ?何だそりゃ?」
「人族の信じる唯一神アースも、西の民が信じる祖霊も、皆カムイ様なのです」
「……あー、つまり、カムイ様とやらは神の総称だと?」
「はい」
「………………まさか、お前らの言うカムイ様ってのは、知的生命体が自力では乗り越えられないような困難に出会った時、無意識に祈るものをカムイと定義しているのか?」
「はい」
「はぁー……、何だそりゃ。何というか、適当な宗教だな」
「そうですか?」
色々なお話をしました。
「カムイはどんな姿をしている?」
「分かりません、人の数だけカムイ様の形があります」
「カムイ教では、死者はどうなるんだ?天国や地獄と言った概念は?」
「死者は星になり、皆を見守るカムイ様の一部になるのです」
「クハハ、死者は星に、か。生娘みたいなことを言う……。では、生前に許されない罪を犯した者は?」
「流れ星になって、地に落とされてしまいます」
「ハハハハハ!成る程な!しかし、地に落ちる流れ星は、罪を犯した人の数より随分と少ないなァ?」
「そうですか?たまに、沢山の流れ星が落ちてきますけど?」
「……あー、流星群か」
そして。
「カムイ教については大体理解した。コントロールしやすそうで実に良い」
「それは何よりですね」
と、このように、ご主人様と沢山お話をしました。
その後は。
「来い、抱いてやる」
「はい❤︎」
初めての性行為、良かったです❤︎
スパロボ×マブラヴの伝説的な作品がありましてね。
なんかそういう、絶望世界に希望もたらしちゃう系オリ主書きたいんだよなぁ。