ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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時間ないない時間ない。



29話 東西統一

ジパングの改革を開始。

 

まずは東西の平定だ。

 

西、酒呑の領域を支配する。

 

真正面から城に攻め込み、酒呑のいる天守閣へ乗り込む。

 

「何者だ!!名を名乗れ!!」

 

「俺はジン。この国を支配する」

 

「ほう、やって見せろ。……ただし俺に勝てたらの話だがなあ!!!」

 

赤い肌、額に二本の角、鋭い牙、2mを超える筋骨隆々の体躯。

 

ざっくばらんに伸ばした黒の長髪から覗く眼光はギラギラとした光を放っているように見える。

 

服装は着流しで、アクセサリーの類は見られない。

 

ぱっと見は山賊の頭だが。

 

鬼神酒呑、どこまでやるのか。

 

「がああぁぁぁ!!!!」

 

振り回すのは棍棒ではなく、刃渡りが1.5mはあるかという分厚い大太刀。

 

それも、昔見た、そう、これは示現流というやつに酷似している。

 

確か、二の太刀要らず、だったか。

 

猛烈な速度と威力を誇る剣術だ。

 

前世の俺なら避けられたかどうか。

 

だが。

 

「今なら余裕だ」

 

袈裟斬りの斬撃に対して斜め前に「進む」。

 

剣術に限らず、近接格闘には間合いと言うものがある。

 

適切な間合い以外での攻撃は効果的じゃねえ、ってのは素人でも知ってんだろ。

 

「そんで合気ッ!!」

 

「ぐおっ!!」

 

そして剣の間合いより近い投げの間合いにて、思い切りぶん投げる。

 

倒したところに、ナイフを突きつける。

 

「俺の勝ちだ」

 

「……負けた、か」

 

クソ蛮族である西ジパング人は、鬼、落武者(そう言う種類のアンデッドだそうだ)、龍、蛟などが多い。暑いところには爬虫人が多い、おかしなことではないな。

 

さて、この蛮族共は、俺が支配を宣言すると全員が槍や刀を片手に現れ、下克上を狙ってきた。

 

仕方がないので全員死なない程度に叩き潰した。

 

だが、一度負けると潔く臣従するので、裏切りが当たり前の戦国時代風の文明レベルからすればまあ、まとも、なのか?

 

臣従した連中を教育して、言いくるめるのには少しばかり骨が折れた。

 

馬鹿ではないが脳筋だ。

 

武器や防具の質の向上、兵站の進化、人員の増加の利点など、戦争的なメリットを絡めて説明したところ、大きく理解を示したので、まあ、まとまった、だろうか。

 

次に東の玉藻だ。

 

こちらは、アニミズムが讃えられる独特の雰囲気を持つ人々が多く、こういった場合、原住民の信じる神を否定するのは良くないと考えた。

 

祖霊、と言うのか、こいつらの信じるその手のものを否定すると、支配が難しくなる。

 

イギリスよろしく、他所から大量に国民を連れてくる植民地化、であれば、気にする必要はないんだろうが。

 

この手の連中は無理に押さえつけると、神の名の下に最後の一兵まで抵抗しやがるからな。

 

段々と科学や技術を伝えて、オカルト離れさせていくしかないだろう。

 

その辺りは、不老長寿の人外という点が、中々代替わりしないというデメリットになってくる。

 

少しずつ意識を変えていかねば。

 

因みに、この辺りには猫又や人狼、化け狐、鎌鼬、雪女など、それと人魚のような水生系、がしゃどくろ、唐傘お化けのようなものと幅広くいる。

 

共通しているのは寒さに強いという点か。

 

さて、玉藻本人はいかにも宗教家と言った様相の美女だった。

 

そこそこの身長、九本の尻尾、獣の手足に耳、いくらかつり上がった目に口紅をつけた唇。顔はその狐のような瞳を除けば、女優もびっくりの美女だ。

 

服はゆったりとした民族衣装のようなものの上に、獣の皮で作った短い外套のようなもの、獣の牙で作った首飾りなんかをしている。袖口からは刺青が覗くことから、全身に刺青を入れていることが予想できる。

 

ふむ……。

 

「この国の支配権を寄越せ」

 

「おやまあ、護衛を張り倒して、妾の住居に押し入ってきて、そんなことを言うのかしら?」

 

「従わない場合は残念だが、拷問で無理矢理従属させるしかないなァ?」

 

「あら、痛いのは嫌だわぁ」

 

くすくすと笑う玉藻。

 

「ふむ、それじゃあ大人しく言うことを聞いた方が良いんじゃねえかなァ?」

 

「そうしたいところだけど、カムイ様は納得するかしら?」

 

カムイ様……?

 

神的なものか。

 

「別に宗教的に口出しするつもりはない。信仰については自由だ。俺が求めるのは兵士の貸し出し、技術研究、及び提供だ」

 

「まあ、兵士を」

 

「そうだ。メリカ大陸への派兵、治安維持などに兵士を使う」

 

「攻めるのですか」

 

「誤解しないでもらいたいが……、これはお前達にも利がある」

 

「攻めて利があると?妾達は新たな地の支配など望みませんよ」

 

「あっちはそう思っていない。何十年か、何百年かは分からないが、そのうち、人間は攻め入って来るぞ」

 

「そんな……」

 

「人間は進化するからな、船を作り、武器を作り、やがてジパングにも攻め入って来るだろう」

 

「……では、何故攻めるのですか?」

 

「間引きだ。人間が進化しないように、民を殺し、兵を殺し、時には王を殺し、停滞させる」

 

「………………確かに、そうです。私が子供の頃は、人は鉄も作れず呪いも碌に使えませんでした。しかし、千年もすると、たくさんの武器や道具を作り出し、呪いも上手くなっていきました」

 

千年も生きてんのかこいつ。

 

「そうだろう?人は間引くべきだ。お前達のカムイも、お前達が滅ぶのは望んでいないはずだ」

 

「……カムイ様にお尋ねしましょう」

 

そして、何らかの呪文を唱えると、玉藻は。

 

「………………!!」

 

「どうした?」

 

「カムイ様のお言葉です。貴方様と添い遂げろ、と」

 

「………………あ"ぁ?」

 

待てや。

 

 

 

玉藻は俺との結婚を大々的に発表した。

 

はぁ?と思ったが、カムイ様のお言葉だそうだ。

 

何だその不鮮明なものは。

 

この世界に神などいるものか。

 

と言う訳で検証タイム。

 

玉藻に頼んで神託スキルを何度も使わせ、検証した。マリーも協力してくれた。

 

すると、神託とは、所謂アカシックレコード的なもの、膨大な知識の塊からの限定的な知識の引き出しであると断定された。

 

一種の未来予知にも相当する、と。

 

つまり、全知の……、過去も未来も全て知る意思のない存在から、自分にとって有用な情報を引き出すという感じだ。

 

俺と結婚しろと言うのも、俺が今後世界の覇権を握るが故に、その支配者である俺と仲良くすべきだ、ということなのだろう。

 

玉藻のそれは聖王国の巫女のそれとは違い、かなり精度と確度が高いらしい。

 

聖王国の巫女の神託は、勇者という対魔物用ヒットマンの選定や大災害の予知くらいしかできないし、月に数回が限界だが、玉藻の神託は一日何度か使用でき、できることは絶対に当たる占いのようなものとのこと。

 

失せ物探しから人探し、災害の予知、果ては民衆の不満や反乱分子の動向すら見えるそうだ。

 

使えるぞ、こいつ。

 

実にいい。

 

 

 

新たに使える駒を手にした俺は、輸送機でジパング中を回り、有力な氏族を集め、会議をする。

 

場所は、新たに作った首都、東京辺りを穢土と名付け、穢土城を出した。

 

パワーポイントで図や表をまとめ、馬鹿にも分かりやすくプレゼンする。

 

いや、本当にな、賢い奴は説明の必要がなくて楽なんだが、馬鹿は面倒だ。

 

しかし、何事もこの馬鹿を基準にしてやらねばならない。何をするにも、最低のレベルに合わせてやるってのは重要だ。

 

お前のことだぞ酒呑。鬼。馬鹿ばかり。

 

そして昼夜は試食会と交流会を兼ねた会食。

 

転移門で呼び出したリィンと八千代に手伝わせ、大量の料理を作った。

 

やはりこの国、戦国時代レベルの文明しかないが故、獣肉食をあまりやらない。

 

基本味噌と米、平民は蕎麦や麦、粟なんかを食ってるらしい。

 

そんなんじゃ身体が保たねえだろうがよ。

 

GDP上げて人口増やして……、ってやらねえとな。

 

「なんじゃあ、この酒は!美味い!」

 

この時代の酒といえば、濁り酒が基本。

 

大して美味くねえ濁り酒と比べれば、清酒は格が違うだろうな。

 

「そしてこの肉!猪肉とは違う脂身が美味い!」

 

豚の生姜焼きを頬張る酒呑。

 

「しかも、食えば強くなれると聞く!」

 

「そうじゃねえよ、たんぱく質は筋肉の材料になるってだけだ。筋肉を鍛えなけりゃ強くはなれねえ」

 

「安心しろ、我が国の民は皆精強で、勤勉だ!毎日しっかりと鍛えている!」

 

そうかい。

 

「お揚げ」

 

「何だ、玉藻」

 

「美味しゅうございます……、美味しゅうございます……」

 

……まさかこいつ、狐だから油揚げが好きだとか言うのか?

 

「稲荷寿司、美味しゅうございます。このお揚げ?というもの、本当に我が国に売ってもらえるのですか?」

 

「作り方を教える」

 

「ありがとうございます、ありがとうございます」

 

そうか。

 

「ジン殿、このじゃがいも、という芋は良いな。痩せた土地でも逞しく育ち、味も甘くて美味い。そして腹に溜まる。民達が飢えることはなくなるだろう」

 

と、鞍馬。

 

だろうな、じゃがいもは飢餓対策にいい。

 

「この天ぷらと言うものは個人的に好きだな。油の安定供給方法も教わったことだし、うちで作らせよう」

 

「そうか」

 

「そしてこの寿司、というのも良い。この穢土の近海で獲れた新鮮な魚を、酢で腐りにくくした米の上に乗せて、醤油という調味料をつけて食べるんだね?味も良いし、屋台で売ったら売れそうだ」

 

「寿司は元々ファストフードの類だからな」

 

「ふぁすと……?ああ、それと、蕎麦も良い。蕎麦はいつも粥にしていたけど、麺にして食べるとこんなにも美味いものなんだね。さっきの天ぷらと合わせても良いし、流行るよこれは」

 

「だろうな。だから、生産者を増やして人口を増やして、この国を栄させてやる」

 

「……それで、戦争を?」

 

「ああ、当たり前だ。そうしなければお前らが滅ぶ」

 

「………………」

 

難しい顔をする鞍馬。

 

「僕は国が豊かになればそれで良いんだけどね」

 

「そう全てが上手くいくと思うか?」

 

「……はぁ、思わないよ。やるしかない、か」

 

 

 

会議をして、話を通した後は、上層部の氏族を連れて視察。

 

今回は上層部が賢いお陰で、大分楽に改革できたな。

 




西は島津、北はアイヌっぽいノリです。

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