ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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スカイリムを始めました。


22:よく分かるダンジョン攻略講座

「そんな!ダンジョンが……、封鎖?!」

 

「どうするの、ピーター?」

 

俺は、幼馴染のディナと、ダンジョンの掲示板を見て驚愕していた。

 

パーティメンバーのテルマとルイーズ、最近入ったばかりのハルという黒髪の女魔法使いも驚いていた。

 

「ど、どうする?」

 

「貯蓄もあまりないしな……」

 

「あ、わ、私は最悪、地球に帰れば、いいので生活は、大丈夫、です」

 

全員、ほとほと困り果てるというやつだ。

 

折角、鉄級にまで上がったというのに、こんなところで躓くなんて……。

 

あと一つ上げて銅級にでもなれば、かなり安定した生活が手に入る。

 

それこそ、一度のダンジョン攻略で一月くらいは休めるくらいの。

 

結婚や出産などの、人間らしい生き方も望めるだろう。

 

なのに……、そんな時にこれか。

 

しかも、タイミングが悪いことに、装備の更新後で金がない時に……!

 

「借金とかする……のか?」

 

「馬鹿言うなよ。冒険者なんかに貸す金貸しはこの世にいないぜ」

 

居たとしたらそいつは確実に詐欺師だ。

 

だって、冒険者なんて一度ダンジョンに出れば、帰ってくるかどうかなんて博打みたいなもんだからな。

 

博打して生きているような冒険者という存在に金を貸す奴なんて、小狡い高利貸しくらいのもんだ。

 

……「おい、どう思う?」

 

……「こんな時に限って、ゲオルグ卿は居ないそうだ」

 

……「数ヶ月はこのままらしいぞ!」

 

他の冒険者の噂話を聞いた感じでは、ゲオルグ卿は三ヶ月は戻らず、その間はダンジョンはずっと閉鎖されたままらしい。

 

三ヶ月も収入がなければ、俺達は餓死にだ。

 

どうするか……。

 

と、そんな時である。

 

ホイッスルの音が、ギルド中に鳴り響いた。

 

『アオゲラの笛』だったか?そんな名前のマジックアイテムで、距離や壁よって音が減退しない魔法の笛。

 

これは確か、ギルド側の布告などがある時に吹かれるものだったはず。

 

実際、その通りらしく、ギルドマスター自身が現れた……。

 

「冒険者諸君!ダンジョンの閉鎖によって困っていることだろう!そんな諸君らの為に、食事と少しの酒を与える『依頼』を用意した!」

 

なるほどな。

 

依頼を受ければ、少なくとも飢えることはないと言うことか。

 

これは、受けざるを得ないな。

 

「内容は、『上級冒険者による訓練』だ!訓練を受けた者には割符が渡され、その割符をギルドの酒場に出せば、具有りの粥とエールの一杯を食わせてやろう!評価次第では、追加の飯と酒もやる!」

 

……なるほど。

 

悪くない、悪くないな。

 

いや、むしろ望ましいくらいだ。

 

飯も食えて、上級冒険者の指導も受けられる、のか。

 

これは実にいいぞ……!

 

「訓練の受付は、ギルドの受付で行う!指導する上級冒険者の受付場所がどこなのか、これから発表するので、黙って聴くように!」

 

そう言ってギルドマスターは、上級冒険者の名前を読み上げ始めた……。

 

「一番から三十番受付では、『蠍殺しの』ハリーや『死に剣』ハンジローなどの戦闘訓練を〜……」

 

うーん……、行くとしたら四十六〜五十五番受付の『盗掘王』インディアナの盗掘訓練かな……?

 

「……そして最後、九十九番受付は、下級冒険者『竿師』サターンの講座がある」

 

あ、これ、九十九番絶対行くべきだなこれは。

 

サターンさんの講座がタダで聞けるとか、行かない奴はアホだぞこれ。

 

……「ハハハ!『竿師』から何を教わるんだ?」

 

……「女のコマし方かぁ〜?」

 

……「また、『竿師』の優遇かよ。ギルドもふざけた真似をしやがるぜ」

 

その価値を分かっていないアホ共はそうやって吐き捨てるが……、まあ、競争率が低い方がいいに決まっている。

 

俺は、パーティメンバーに目配せした。

 

「おう!分かってるって!」

 

「うむ」

 

「は、はい」

 

ディナもこくりと頷いた。

 

よし、じゃあ行くぞ……。

 

 

 

「あぇー」

 

うわあ……。

 

冒険者ギルド裏、訓練所の外れの、芝生の上で液体のようにぐでんぐでんになったサターンさんが、変な呻き声を上げながら、甘い香りのする菓子を噛んでいた。

 

ガム、とかいう異国の菓子だ。作り物のような不自然な甘い香りは、ビーストマンの俺からすると鼻にツンと来る。

 

「あ、あの、主人公様……?」

 

不思議な呼び名でサターンさんを呼ぶのは、ハルという女魔法使い。

 

そんなハルに、サターンさんは言った。

 

「なーーーんで俺にタスク振るかね????俺はただ、マジックアイテムのコレクションと人間観察ができればそれでいいのに……」

 

よく分からないが、仕事をしたくないらしい。

 

まあ、この人はかなり金持ってるだろうしな……。

 

上級冒険者パーティと金貨のやり取りをしている姿も、一度見たことがある。

 

「で、講座ってのは何やるんですか?」

 

俺が訊ねる。

 

すると、サターンさんは、「ん」と声を発しつつ……、白い大きな板のようなものを指差した。

 

そこには、「たのしいかてーかきょおしつ」と書かれていた……。

 

「家庭科……って何です?」

 

「お裁縫とかお料理とか」

 

これを聞いた時点で、冷やかしや面白半分で来ていた奴らは帰っていった。

 

残るのは、数十人だけ。

 

遠くでやっている、『蠍殺しの』ハリーの剣術指導なんて、千人以上の戦士が集まっているのに。

 

「な、なんで冒険者である俺達が、そんな花嫁修行みたいなことをやらなきゃならないんですか?」

 

「うーん、なんかさ、まだ勘違いしてないか?」

 

「な、何を?」

 

「冒険者の仕事は『戦うこと』じゃないぞ?」

 

は……?

 

何言ってるんだ、この人は?

 

「じゃあ、何だって言うんです?」

 

「決まってんだろ?冒険者の仕事は、『冒険をすること』だ」

 

………………えーっと?

 

「おいおいおいおい、お前よお、ピーターよお。お前も大して戦えないのに、パーティになくてはならない存在になってるよなあ?そりゃどうしてだ?」

 

「え?それは、俺が罠解除とか索敵とかやってるから……」

 

「そうなんだよね。冒険者って、戦う技能がなくても、他で補えるんだよね」

 

あー……?

 

「でも、何で裁縫や料理が?」

 

確かに、言いたいことは分かる。

 

俺は戦いは苦手だが、他の部分でパーティに貢献しているから、それと同じように「他の部分」というものを鍛えろと言っているんだろう。

 

でも、布繕いや飯炊きなんて、家庭に入った女がやるものだ。

 

そんなものができても冒険の役には立たないはずだ……。

 

「一からか?一から説明しないと駄目か?」

 

な、何だろう、かなりの煽りの意思を感じる……。

 

だが、ここはちゃんと頭を下げておこう……。

 

「はい、一から説明をお願いします」

 

すると、白い大きな板に書いてある文字を、布で拭き取ってから、ペンでまた何かを書き始めた……。

 

「服」

 

「え?」

 

「服は高価だろ?破れた時、直せた方がいい」

 

「あ、まあ、それは」

 

「それに、領域によっては、肌の露出を極力避けなければならないことがある。森林領域や密林領域、湿原領域などでは、肌を露出していると毒虫にやられる」

 

そういえば、いつも行っている草原領域でも、虻蜂に刺されて痛い思いをするな……。

 

「そんな時、手拭いを切り取って端切れにし、それで服の穴を塞ぐことができれば、毒虫を防げる訳だ」

 

「なるほど……」

 

「それ以外にも、布を編んだり裁縫したりして、止血帯や三角巾、担架の類も作れるようになっておくべきだ。ポーションや回復魔法は常にあるもんじゃないからな。裁縫に習熟すれば、人体にできた傷を塞ぐこともできる」

 

確かに、そうだ。

 

俺の故郷の村には、神官なんて弱い力しかない奴一人しかいなかった。

 

だから、治療のためには、添木をして腕を縛って……なんてことを、村の年寄り達がやっていた気がする。

 

「料理もそうだ。少し脱線した話になるが……、氷河領域、火山領域。色々あるが、体温が変わるとどうなると思う?」

 

体温……?

 

まあ、寒いと風邪をひくし、暑いとだるいかな?

 

「水が沸騰する温度を百、凍りつく温度を零とした時、人間の体温は凡そ三十六だ。これが、二つ下がるとどうなると思う?」

 

「……風邪をひく?」

 

「いや、低体温症になる。つまり、まともに歩くことも、喋ることもできなくなる訳だ」

 

……え?

 

たった、二つ下がるだけで?

 

「で、三十を下回ればもう意識は保っていられない。お前も俺も、どんな豪傑でもだ」

 

そ、そんな馬鹿な。

 

「ついでに、上がり過ぎても駄目だ。四十を超えると血液が固まり始め、四十二にもなれば臓腑が壊れ始める」

 

……人体、脆過ぎるだろ?!!

 

「だから、温かい食事を摂って体温を上げる必要があったんですね」

 

それはそうだ、体温を下げれば不調に陥るんだろ?

 

ああ、畜生。

 

これだから、この人は!

 

普通の冒険者は絶対に知らない、それでいて冒険者なら知っておくべき全ての『知識』を!

 

持っているんだよなあ!

 




が、しかし、このクソみたいな日本語化手順はなんなんだ?美少女コンパニオン増やす前にまず、分かりやすい日本語化手順を明示するのが先だろうに。

そんな訳で日本語化できないので、仕方なく英語を喋る美少女コンパニオンをゾロゾロ連れ歩いて黄金の爪を取ってきました。

ベゼスダゲー特有の「コンパニオンが強過ぎて主人公が要らない子になる」現象に直面しながらも、少しずつ頑張ってます。

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