あとはzelona書いてる。
趣味で書いてる傭兵が結構溜まってるので放出。
「ジパング……、拙者達の言うところの日ノ本は現在、三つの勢力に分かれているでござる。東の九尾狐、玉藻。中央の天魔波旬、鞍馬。西の鬼神、酒呑……。それぞれが、それぞれの領域を支配しているのでござるよ」
ふむ。
八千代とジェット機に乗ってジパングへ。
移動の間、現状のジパングの支配権について聞いておく。
「拙者の実家は中央、そして拙者は天魔波旬の娘でござる」
「ほう」
そうなのか。
「お前の父親は、俺にすんなりと支配権を渡すか?」
「父上は民を第一に考えるお方でござる。民を害しようとすらば、死するまで戦って、抵抗するでござろう」
成る程。
「八千代、説得を手伝え」
「それは勿論でござるが……」
「何だ?」
「実は、弟がいるんでござるよ。故に、父上は……」
「弟の方に支配権を渡すかもしれん、か」
「……その、できれば、殺さないでいただけると」
「できるだけ、な」
殺すことにはならないだろうが……。
さて、ジパングについた。
人工衛星を打ち上げ、衛星写真を撮ったところ、国土はほぼ日本。
沖縄はやはり中国の占領下なのだろうか?
文化レベル的には戦国時代ほどらしいが。
鎌倉時代並じゃなくて良かったな。鎌倉武士は蛮族だと聞く。
適当な平地に着陸し、車で大和まで移動する。
ああ、大和と言うのは、天魔波旬の支配領域の中心地だ。
大体、愛知辺りだろうか。
車を降りて街中を歩く。
「ああっ、八千代姫!」
「八千代姫だ!」
「お帰りになられたのか!」
………………。
「姫、か」
「照れるでござるなあ」
飄々としているが、こいつ、かなり良いとこの子ってやつだな。
「では旦那様、腕でも組んで行くでござるか」
「構わんが」
「んふふぅ❤︎」
俺に寄りかかるかのように、ぴったりとくっ付き、城へと向かう八千代。
ふむ。
城。
中々の防壁や石垣がある。
これなら、古式大砲くらいなら撃ち込んでも平気だろう。
アルカディアにも中々の防塁やら城壁があったが、ここも中々だ。
城の防壁と言うのは、相手の攻撃力に依存するものだ。
相手が弓矢程度なら、矢避けの土塁でどうにかなる。
しかし、大砲を撃ってくるなら、城壁防塁が欲しい。
つまり、このレベルまで防護機能を持っていると言うことは、大砲レベルの攻撃力の持ち主が存在すると言うこと。
どうやら、ジパングには、忍術を使う忍者と、呪術を使う陰陽師などが、大火力の攻撃を繰り出せるらしい。
忍術も呪術も、魔力を使って発動する故に、広義では魔法の亜種だとマリーが言っていたな。
特に忍術は、印と呼ばれる手の動きで術を発動できるが故に、無音で、隠密性に優れるそうだ。
呪術は呪いの力によって長距離の遠隔攻撃ができる、とか。
なるほど、それらを使ってレベルの高い闘争をやっているようだな。
おまけに、多種多様な種族がまとまって、共同体になっている。
人間とモンスター娘、魔人が共存していると言うことだ。
異民族同士をまとめ上げるとは、政治的手腕も確か、なのか。
やるじゃねえか、鞍馬。
「やあやあ、僕が天魔の鞍馬だよ、よろしく婿殿」
顔パスで入った名児耶城……、名古屋城?お前は信長か?まあ良い、それは良い。
そして現れた天魔を名乗る男は。
八千代の親とは思えないくらいには若々しい、黒髪の色男だった。
まあ、年齢については良いか。人外だしな、その辺は何百歳とかでも驚かねえよ。
髷は結っていない、髷という文化はないのだろう。
服装は裃……、ああ、時代劇なんかでよく見る、肩の部分が三角になったアレだな。
そして優男で……、ああ、だが、目が笑ってねえ。
「よろしく」
さて、早速交渉をしようか。
「それで、この国の支配権についてだが」
「まあ、そんな話は良いじゃないか。八千代との馴れ初めでも……」
「そんな話?支配権についての話し合いが最重要だろう」
「……君は、この国が欲しくて八千代を嫁にしたのかな?」
「いや、あくまでこの国はついでだ。俺は既にここから西、ヨロパ地方で国を興し、支配した。ジパングとヨロパ地方全域、そして南の魔の大陸を支配下に置き、東のメリカ大陸では人類の養殖を予定している」
「……成る程、成る程」
………………ほう。
中々の殺気だ。
これ程の殺意を感じるのは久し振りだな。
ここまでできる奴はそうはいない、俺の知っている奴の中でも十本の指に入るレベルだなァ。
「貴様は僕の可愛い八千代を、世界の支配のために手篭めにしたのか、と聞いている」
だが……。
「……ッ!!!」
殺気を返す。
俺の方が、上だ。
「八千代と知り合ったのはたまたまだ、そこは誓っても良い。そして、八千代の力がなくとも、ここは支配するつもりだった」
「……いやはや、驚いた。凄まじい殺気だ。あの酒呑や玉藻だって、ここまでの殺気を出せやしないよ」
ケラケラ笑う鞍馬。
目の奥底は相変わらず笑っちゃいねえが……。
「で?どうなんだ?支配権を寄越すのか寄越さないのか」
「僕は民が豊かに暮らせるならそれで良いんだけどね」
ふむ……。
「そうだな、俺はこれから、西の酒呑と東の玉藻に会ってくる。それと比較して、お前が優れているかどうかを決める」
「偉そうなことを言うねえ」
「フン、施政者なんて腐る程見てきた。良し悪しなんざ一眼見りゃ分かる」
「へえ、僕は君の目にはどう映ったのかな?」
「適格だ。暫定的にお前がジパングで一番だと思える」
「おや、褒められてるのかい?」
「ああ。ここに来るまでに税率などを聞き込みで調べたが、マシな方だな。この技術レベルでここまで上手く国を治める手腕は見事としか言いようがない」
「それなのに支配する、と?」
「ああ、その辺りは安心しろ。俺は上から、有事の際の徴兵や技術研究の指示を出すだけだから、それに従えば良いだけだ。実質的な行政はお前にやらせる予定だ。その方が面倒じゃなくて良い」
「ふむ、そうか……。では、なんと言って民を納得させるのかな?」
「簡単だ、新たな食材、技術を、俺の名で提供する」
「成る程、手土産を以って民の関心を集めるのか」
「それだけではなく、教育もする。俺自らな」
「どうやって?」
「上級魔法の一つに、分身体を作り出すものがある。それで分身分裂し、この国の全域を回り、知識や技術を提供する」
「……では、やってみると良い。ただし、民を納得させられないなら、この話は無しだ」
「その場合は力で支配する他ないな」
「そうしたら、我らは皆、死兵となって最後の一人になるまで抵抗するとも」
「ははは」
「ははは」
さて、話し合いは丸く収まった。
次は鬼神と九尾に会ってこようか。
まずは西の扶桑と呼ばれる地域。鬼神、酒呑。
こちらはまさに猪武者といったところで、施政者としては落第だ。
戦のことばかり考えていて、民衆の操作ができていない。
次に東の秋津洲と呼ばれる地域。九尾狐、玉藻。
ここは……、何というか、アイヌに近い。
シャーマンが多いな。
玉藻自身も、施政者と言うよりは宗教家に近い。カリスマは認めるが、政治向きじゃねえな。
総合的に見て、鞍馬が一番まともな施政者だ。
んじゃ、こうするか。
鞍馬を頂点に据えた江戸幕府、を目指すか。
そして二十年以内に明治程まで文明レベルを進めよう。
しかし、人外の欠点として、不老長寿のせいで世代交代が進まないと言うものがある。
これは、文明レベルを進めていくうちで難点になるな。
まずはこちらの力を示さねえとならねぇ。
さて、改革を始めるか。
天魔波旬は天狗の最上位種で、カラスの羽が生えた人間型をしています。