ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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これは虐殺シーンではない、まだもっと本格的に書きたい。


26話 とあるユニコーン族の供述

私はユニコーン族の子爵である。

 

私の家は、この国の成立から存在する由緒ある血脈。

 

建国王シュヴァル様を支えた、弓使いスティード様に連なる血族である。

 

故に、我が一族は弓の名手で、一度戦とあらば、この国一番の弓兵を率いて参陣いたす……、と言いたいところだが。

 

突然の王の代替わり。

 

それにより、この国は、名前ごと変わった。

 

アルカディア、と……。

 

無論、突然のとこで驚き、それに今までの体制の一斉改革には我々貴族だけではなく、民達も困惑した。

 

反発も多かったとも。

 

しかしその時、多くの者が反発しながらも、滅んだポルトランドの軍隊、残党が徒党を組んで国境を越えると言う情報が。それを耳にした我々は兵を率いて参陣する他なかった。

 

皆、不安だった。

 

新たな王は指揮を執れるのか。

 

そもそも、王権の譲渡は正当だったのか。

 

議論が必要なことばかりだった。

 

時間が許せば、新たな王との詳細な軍議などをしたかったものだが、そうも言っていられない。ポルトランド兵はもう目と鼻の先だ。

 

国を守るため、戦うしかない……。

 

不安が渦巻く戦場の最中。そこで、我々は、王の力を見たのだ。

 

 

 

深淵から出ずるは火を噴く黒槍、爆音とともに現れた鋼の魔獣、煙の尾を引く白槍。

 

十万を超すであろう、ポルトランドの軍隊は、一人残らず死滅していた。

 

それも、手足や頭が吹き飛び、胴体に風穴が空いて、焼け焦げた血肉が飛び散り、臓物が爆ぜてと、大凡考えられないような、殺戮劇であった。

 

「ふむ、こんなものか。久し振りに沢山殺せて気持ちが良いな。ハハハハハ!」

 

「深淵王……!!深淵王陛下万歳!!万歳!!!」

 

皆が恐れた。

 

たった一人で、十万を超す軍隊を壊滅せしめんその力を。

 

最早、王権の正当性など関係がない。

 

これ程の圧倒的な力を持つものには平伏する他にないからだ。

 

そして安堵した。

 

この王が我らの王で良かったと。

 

その恐ろしい力が、我々に向けられることはないのだと。

 

 

 

そうして、力を見せつけ、王としての立場を盤石にした深淵王、ジン様。

 

今思えば、これも策略だったのかもしれぬな。

 

ポルトランドの軍隊を生贄に、自らの力を見せつけ、支配を容易にする、という。

 

いや、考え過ぎか?

 

だが、あれ以降、有力な貴族の多くは服従の意を示したそうだ。

 

逆らおうとした貴族は皆、簡単に囚われているとか。

 

囚われたものは死刑だが、ただ殺すのではなく有効活用している、だとか聞いたが、詳しくは分からない。

 

税収は貨幣で集めること、減税、貴族の経費と給料は分けることなどを厳密に決められ、結果としては、貴族の権利は弱まったように思える。

 

それを考えると、反発するものが出るのも無理はないように思えるが。

 

しかし、この改革で反発した者、即ち、改革を拒んだ者は、皆、民から搾取し贅沢をしたい者ばかりのように思える。

 

評判の悪い貴族から順に粛清されている……?

 

成る程、「無能はいらぬ」か。

 

そういうことか、王よ。

 

 

 

新たな法、新たな農法、新たな作物。

 

王は全てを変えた。

 

しかし、それでも、民は皆、王を慕い、狂人と呼ぶことはない。

 

それは、変革の最中、王は決して民を飢えさせなかったからだ。

 

王は、自ら国を回って、民に知識を与え、食物を与え、家や服、道具を与えた。

 

田畑を持てない次男三男には、知識を与えて職を与えた。

 

職人には、新たな道具の作り方を教え、更に技術を上げさせた。

 

医者には、道具と知識を与え、間違いを正し、医術の秘儀を教え込んだ。

 

シェフには新たな料理を教えた。

 

それだけではなく、深淵から工場という建物を沢山出して、そこで民を働かせる賦役を作り、余った人材を有効活用した。

 

水道という水の通り道を作り、汚物を洗い流す仕組みを作った。

 

貨幣を発行し、経済活動を活発にした。

 

「お前らは人の形をした牛馬だ、人間なんかとは農耕の効率が違う」

 

と、農耕の推進も行った。

 

これらは、建国以来の偉業だった。

 

格段に、暮らしやすさが変わったのだ。

 

その最中にも、王は己の深淵から、見たこともない食物を取り出し、聞いたことのない調理法でそれらを調理し、民に食わせた。

 

新たな野菜、ニンジンのなんと美味いことか!リンゴの甘さはアプルルの比ではない!

 

また、砂糖がとれる貴重な作物、テンサイダイコンを大規模に育てることも決定され、その上で養蜂という、蜂を育てて蜂蜜を得る秘伝も伝えられた。

 

甘味は非常に貴重なのは誰でも分かるだろう。

 

それをこうも簡単に作り出すとは。

 

これが軌道に乗れば、我々ケンタウロス系が愛する甘味が日常的に楽しめるようになるそうだ。

 

うむ。

 

ケンタウロス系は甘味が大好物でな。

 

ミノタウルスやサテュロスも甘味を好むそうだ。

 

食い物といえばコンソメも素晴らしい。

 

乾燥させた野菜をすり潰したコンソメ粉末は、今、アルカディア中で大流行している。

 

更にそれを使った、白のシチューも人気だ。

 

クリームシチューと呼ばれるそれは、肉と野菜を乳と白ワイン、水、そしてコンソメで煮たもの。

 

この甘いシチューはアルカディアのご馳走とされ、祝いの日などに供される、定番料理になったのは、まあ、後々、機会があれば話そうか。

 

他にも、グラタンも大いに流行した。

 

ミノタウルスやサテュロスの乳、それらから作られたバターやチーズは、我が国の国民食の一つ。

 

それらと、小麦のマカロニから作られると言うのは、手軽だ。

 

どこの飲食店でもどこの家庭でも出る一般的な料理となるのは早かったな。

 

小麦の生産量が増えたことにより、小麦を使う料理が増えた。

 

代表的なものといえば、パスタとピザだな。

 

これらは非常に美味い。

 

パスタ。

 

小麦の麺というものは、貴族向けにあったが、これらは茹でて、蜂蜜やクリームなどで味付けしたものが殆どだった。

 

……我々は間違っていたな。

 

料理とは、贅を凝らせば良いというものではないのだ。

 

トマティア、いや、トマトと家畜の挽肉を炒めた、酸味の効いたソース、ミートソーストマトパスタ!

 

これを麺に絡めるとどうだ?

 

恐ろしい美味さだ!

 

それだけではない、卵とクリームを使ったカルボナーラ、挽肉のボロネーゼ、オリーブオイルのペペロンチーノとバリエーションも豊富だ。

 

ピザはまさに革命だった。

 

パン生地の上に何かを乗せて焼く。

 

簡単なことだが、誰も思いつかなかったことだ。

 

他にも菓子パンや惣菜パンと呼ばれる、パンの上や中身にソースや餡をかけたり詰めたりしたものが流行っている。

 

特に、ハーピィの卵とミノタウルスの牛乳で作ったカスタードクリームがたっぷり詰まったクリームパンは大人気で、パン屋には連日行列ができた。

 

 

 

……なんだか、食べ物のことばかり目が行くな。

 

まあ、それくらい美味い食べ物が流通し始めたのだということだな。

 

専門的な話は、あまりよく分からんのだ。

 

医療と祈祷は別だとか?公衆衛生だとか?

 

手術、といって民の腹を裂いたのは驚いたぞ。

 

何でも、薬で眠らせた後に病巣を切り取って捨てるだとか。

 

あれは怖いな。

 

しかし、腹を裂かれた者達は回復したので、結果的には正しかったのであろうな。

 

怖いがな。

 

そう、それと、この改革。

 

私にも分かったことはある。

 

新たな農法だとか、手術だとかは、私の専門ではないが故に分からぬが、政務については楽になったぞ。

 

活版印刷と呼ばれるもの、そして製紙工場によって、紙が安くなり、文書が作りやすくなったのだ。

 

また、書式、と呼ばれるテンプレートを用意され、それに沿って書き込めと命じられた。

 

複式簿記など、面白いが有用な考え方が導入され、アラビア数字……、いや、魔族数字と呼ばれる表記に統一され、仕事は格段に楽になった。

 

その分、学ぶことは多かったがな。

 

貴族には学が必要だと、様々な知識を覚え込まされた。

 

新たな言語、魔族語や、応用的な計算、基礎的な科学から、様々な分野の基礎知識を。

 

覚えたかどうかは試験を課されて確かめられ、何人もの貴族が猛勉強させられた。

 

かくいう私もな。

 

まあ、何とか合格点を出して切り抜けたが。

 

また、学校も設立され、貴族の子供達はそこで教育を受けることを義務付けられた。

 

私の息子もだ。

 

……このまま息子が勉学に励むと、私の立場がなくなるではないか!

 

子を賢くすることで親を追い立てるとは!何と酷いことを!

 

どの道私は勉強するしかないのか!!

 

ええい、息抜きに狩猟をやるぞ。

 

勉強ばかりしていられるか、貴族には武力も必要なのだ!

 

「ほう、稽古がしたいと。上等だな」

 

ヒッ、お、王……。

 

「クハハ、冗談だ。支配層に強度の訓練を課して死なれては面倒だからな」

 

は、はあ。

 

「そう、それで。お前は試験で上から三番目の出来栄えだったぞ」

 

そ、それは勉強した甲斐がありました。

 

「ふむ、それで、折角だから何か渡そうと思ってな」

 

それはそれは……。

 

「そして、お前は弓が得意だと聞いたから、弓をくれてやろうと思ったんだよ」

 

あ、ありがとうございます。

 

「と言っても、コンパウンドボウに試験的にエンチャントをかけたものだが」

 

そして、下賜されたのはおかしな形の弓と見たことのない素材の矢。

 

これは、弓なのですか?

 

「不壊、自動修復、絶対貫通、霊体破壊、風属性、永続化をかけた」

 

六つもエンチャントを……?!そんなもの、国宝級ではありませぬか?!

 

「その気になれば幾らでも用意できるんだ、大したことじゃない」

 

……流石は深淵王、と言ったところでございますか。

 

……しかし、この弓、どう扱うものなのでしょうか?

 

「ん、ああ、コンパウンドボウを見るのは初めてだろうしな。使い方はここを……」

 

ほう、これは……!!

 

素晴らしい!!

 

大きさの割に引き手は軽い。しかし威力と飛距離は同じ大きさの弓とは比べ物にならない程大きい!

 

その上、エンチャントにより、魔力を込めると暴風を纏い全てを貫く!

 

……この、弓の名は何と仰るのですか?

 

「名前?……あー、メーカーはイーストンだな」

 

風の魔弓イーストン……!!

 

家宝にします!!

 

「お、おう、そうか、好きにしろ」

 

 

 

……余談だが、私が、この弓で十年後のスロバリシア王国侵略戦において武勲を上げ、伯爵に陞爵されたのは、また別の話だ。




悪辣な殺戮シーンを書きたいぃ。

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