ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ストレス。


31話 いつわりのユートピア

トロと話し合い、建国の意思を皆に表明した後、シティ・ライコウからまたもや交渉人がやってきた。

 

三人の大男と、一人の美女……。

 

シティ・ライコウのドミナン(支配者)、マルルメ・ライコウとその護衛だ。

 

支配者が直接乗り込んでくるとは、この恐竜旅団も高く評価されているんだなと自覚できる。

 

早速俺は、スミに案内させ、ひみつきちの応接間に通した……。

 

「こんにちは、ハクア団長」

 

「こんにちは、マルルメさん」

 

お互いに笑顔を張り付けて、握手をひとつ。

 

ソファーに座って、さあ交渉開始だ……。

 

「モース、お茶を……」

 

と、隣に立つ護衛のモースに言おうとして、やめた。

 

多分この世界、お茶とかない。

 

「モース、普通の水を持ってきてくれ」

 

「はーい〜」

 

それと入れ替わりで、スミが俺の側に控えて、応接間の前には更に二人のジュラ娘がいつでも乱入できる体制。

 

俺自身も、懐に拳銃を持っている。

 

まあ、マルルメも日本刀らしきものを腰に下げているし、三人の大男も棍棒だのライフルだのを背負っている。

 

気を抜けない交渉になりそうだな……。

 

いや、無論、スミの戦闘能力と頑丈さなら、この四人を相手にしても即座に無力化できるし……、あとは実は、天井裏にジノーが隠れていていつでも相手を殺せる。

 

しかも俺の服装は、外に出る時と同じフル武装。これで即死することはない。

 

なので、こちらの方が実は圧倒的に有利なのだ。

 

さて、交渉といくか……。

 

モースが持ってきた水をそれぞれ出してやり、会話開始。

 

「まず、取引の件だが、こちらとしては満足できる結果が出ている。今後も同じ条件で継続としたい」

 

「ありがとうございます。こちらも、大変な利益を得ております。ですが、よろしければ取引の内容に少々変更を加えたいと思うのですが」

 

「ほう?変更とは?」

 

「『キカイ』の販売についてです」

 

あー、やっぱりそこが来たか。

 

前に来た交渉人が棚上げにした案件だもんな。

 

「キカイの販売、か……」

 

「可能ですか?」

 

「可能かどうかで言えば可能だが、そちらにキカイを維持するだけのインフラはないように思えるが」

 

「こちらにもある程度の『デンキ』はあります」

 

「だとしても、こちらのキカイとは規格が合わないのでは?」

 

「キカイの専門知識を持つノーブルもおりますので……」

 

ふむ。

 

まあ、そこまで言うのなら……。

 

「販売については問題ない。しかし、もしも買い取った後に、『やっぱり解析できませんでした、払ったものを返してください』と言われても一切受け入れない。ここに同意できないようなら、取引はできないな」

 

「ですが、それを言うのであれば、そちらが稼働するキカイを渡すという確証もないのでは?動かないキカイを渡されて返品不能だと言われれば、こちらが大損です」

 

「なるほど。では、こちらが用意できるキカイのサンプルを、こちらのデンキで動かして見せよう。それでどうだ?」

 

「……よろしいでしょう」

 

話が纏まったので、俺は、車内放送でトロに連絡を飛ばし、ひみつきちの外に様々な機械を用意させた。

 

その間、俺は、執務室でこの四人の客に応対する。

 

俺もかつては研究者として、学会に出たり、スポンサーや他の研究機関の先生と話したりなど、立場が高い人を接待する場合もそれなりにあった。

 

流石に、一国のトップとの会談はあまり経験がないが……、だがそれでも国の要人に接待の一つもしないのは拙いだろう。

 

茶菓子とコーヒーくらいは出さねばならん。

 

しかし、コーヒーは泥水と捉えられかねないし、この世界では「澄んだ水」が贅沢の証だとも調査結果が出ている。

 

なので、水と、軽い茶請けを出すこととする。

 

先ほど、モースに頼んだ水と茶菓子が届いたので、それを振る舞いつつ、仕事の話を続ける。

 

「先生ー、お水だよー」

 

「ああ、ありがとう。……水とお茶請けだ、食べてくれ」

 

出す。

 

で、説明。

 

「キカイの準備にしばらく時間がかかるので、お待ちいただきたい。その間、情報交換をお願いしたいと思うのだが?」

 

「「「「………………」」」」

 

ん?

 

黙ってしまった。

 

「失礼、マルルメさん?」

 

「……いえ、すみません。ありがたく頂戴いたします」

 

そう言って、若干震える手で水を飲むマルルメ達。

 

「『ユキ』ですか……、これは?初めて見ました」

 

ユキ?雪……ああ、氷か。

 

氷水に驚いたんだな。

 

「リョーショクも、甘いですね」

 

茶請けのバタークッキー。

 

「よろければ、同じものを土産に持って行くといいだろう。部下に用意させる」

 

有機素材は現状余り気味だからな、お土産くらいは渡してもバチは当たらんだろう。

 

というより、ここで豊かさのアピールをしておきたい。

 

一見、悪手のように思えるが、相手がこういう理性的な人間なら有効な手段だ。

 

理性的だから、こういう風に力を見せると過剰に警戒してくれる。

 

最大の防衛方法は、攻撃そのものを思い止まらせることだ。

 

それを、このマルルメも理解したようで、あちら側から「不戦協定」……つまりは、敵対しない、極力話し合いで問題解決するという協定を申し入れてきた。

 

非常に助かる……。

 

この調子で、この後のキカイ取引もうまくいくと良いものだ。

 




ホビアニ転生、もう12話。

一週間で12話とは中々に乗ってるね。

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